第77話 <乱戦2>
ハンスの前に一人の黒い兵士が立ちはだかる。
H兵ケイ。
ハンスもケイを見る。
「なんだお前かよ」
「また会ったな」
「よく見たらなかなか美人じゃねえか」
「だが今は忙しいから」
「遊びたいならまた今度な」
ケイはハンスを睨む。
「ふざけるなっ」
「現生人が!」
切りかかる。
剣がぶつかる。
火花。
重い衝撃。
一撃。
二撃。
互いに一歩も引かない。
だが。
一方で周囲の状況は最悪だった。
迫撃砲。
機関銃。
魔物。
爆炎。
乱戦の真っ只中。
「どけ!」
ハンスが叫ぶ。
クレイモアを全力で振り抜く。
ケイの身体が吹き飛んだ。
その時。
横合いから魔熊が飛び出した。
巨大な前足。
ケイは反応できない。
ドゴォッ!!
再び吹き飛ばされる。
地面を転がる。
立ち上がれない。
魔熊が迫る。
とどめを刺そうとしていた。
遠くからリードの声。
「ケイ! またやられたのか」
「仕方がない」
「戦闘不能個体は捨てろ!」
「任務優先だ」
ケイの瞳が揺れる。
誰も来ない。
誰も助けない。
だが驚きはなかった。
それが当たり前だったからだ。
魔熊が迫る。
牙が見える。
巨大な腕が振り上がる。
ハンスは舌打ちした。
「チッ!」
身体が先に動いていた。
クレイモアが唸る。
魔熊の右肩を斬り裂く。
魔熊が咆哮した。
だが反撃は速かった。
巨大な腕が振り抜かれる。
避け切れない。
ハンスの身体が浮く。
吹き飛ばされた。
転がるハンス。
「ぐぅぅ」
木にぶち当たって止まる。
大剣を支えに何とか立ち上がる。
魔熊を見る。
ケイも立ち上がる。
だが魔熊は残された左腕でケイに襲い掛かろうとしていた。
「うおいりゃあぁぁ!」
ハンスは大剣を持ち上げ切りかかる。
魔熊とケイの間に入る。
その瞬間。
魔熊はハンスもろともケイを殴り飛ばした。
崖の方へ飛ばされる。
ハンスは咄嗟にケイを抱きかかえる。
ケイ。
「離せ!」
だがハンスは離さない。
落ちる。
二人の身体が闇へ投げ出される。
谷底へ。
どこまでも。
遠く。
馬車へ辿り着いたリンが振り返る。
ハンスが崖から落ちていく。
「ハンス!!」
手を伸ばす。
届くはずもない。
落ちていく二つの影。
闇の中へ消えていった。
ヨウドが叫んだ。
「駄目である!」
「戻れば全滅である!」
馬車は走り出す。
一方、フロムも敵に阻まれ馬車に向かえない。
リンらに叫ぶ。
「大丈夫!」
「ハンスなら生きてるわ!」
「今はここから離脱する!」
ミリアを乗せて走る。
「後で合流よ」
「もし会えなかったらエース商会に行くわ」
10/25 この後<谷底>から<別れ>までの話を<離散>から<交信>までの話と入れ替えました。
リンの話を先行させた方が流れがいい気がしたからです。
少し話の順序が変わっています。




