第72話 <極光>
シユウ帝国よりさらに北。
この地でもリンら巡る企てが動いていた。
ここはシユウ帝国が生まれる前にあったとされる
とある国の首都の跡。
古い地下鉄跡地。
かつての大都市を支えた巨大な地下空間。
今は誰も使わない。
だが。
暗い通路。
コンクリートの壁。
錆びた配管。
その奥。
巨大な空洞。
照明が赤く点灯する。
機械音。
低い唸り声。
獣の咆哮。
まだ稼働していた。
大陸に残る同盟軍の主要基地のひとつ。
中央会議室。
数名の新型魔人が集まっている。
壁面の表示装置が起動した。
現地政府からの報告。
対象確認
EX―Unit-10一行に類似する入国者を確認
映像。
テンの街。
河港。
停泊する船。
そして。
港を通過する馬車。
男一名
女二名
獣一体
手配対象との一致率
八十六パーセント
別映像。
ハン王国商人を名乗る。
提示書類
ヤマシロ王国商人登録証
目的地
大都
沈黙。
一人の新型魔人が立ち上がる。
痩せた男。
リン達を襲った男だった。
「見つけたか」
別の魔人が笑う。
「長かったな」
「今度こそEXを手に入れる」
表示装置が赤く光った。
指令発令
EX捕獲
新型魔人部隊出撃
魔犬群投入
魔熊群投入
魔虎群投入
わずかに間。
さらに表示が切り替わる。
支援強化のため感染性生物兵器のうち飛行型投入。
地下格納庫。
巨大な檻。
檻の鉄格子には深い爪痕が無数に残っていた。
中で何かが動く。
バサバサと羽の音。
茶色い体。
羽を広げると二メートルを超える。
数羽の巨大な魔鳥。
頭部には羽毛がなく灰色の皮膚が露出している。
嘴は太く、鉤状になり先端部は黒い。
瞳だけが赤黒く発光していた。
低いうなり声。
グルルルル……
新型魔人が笑う。
「この魔鳥も出すのか」
「本気だな」
別の魔人。
「地上からならまだ逃げられる」
「だが空から来られたら終わりだ」
「EXであってもな」
モニターが続ける。
目標地点
テンの街-大都街道
対象を捕獲せよ
捕獲後
大都感染性生物兵器製造基地へ移送
生死は問わない
静寂。
そして。
ゆっくりと。
巨大な扉が開く。
魔犬。
魔熊。
魔虎。
そして巨大な魔鳥。
飛行型の生物兵器が一斉に羽を広げた。
地下基地の空気が震える。
極光配下の軍もまた。
大都へ向けて動き始めていた。




