第69話 <テンの街>
一行は街へ入った。
馬車はゆっくりと進む。
人が多い。
テンの街は活気に満ちていた。
荷車が行き交う。
商人達の呼び声。
魚の匂い。
香辛料の匂い。
ハンスが周囲を見回す。
「賑やかだな」
リン。
「フサール市よりずっと大きいわ」
ヨウドも荷台から顔を出す。
「文明活動は良好である」
「ずっと隠れてたくせに」
ミリアが笑う。
確かに大きい。
この街は商売で成り立っている。
そんな印象だった。
その時。
フロムが低い声で言う。
「宿を探しなさい」
ハンス。
「そうだな」
「今日は流石に休みたい」
ヨウド。
「同意である」
「燃料補給も必要である」
「酒飲みたいだけだろ」
「否定しないのである」
しばらく進む。
やがて大通り沿いに宿屋を見つけた。
二階建て。
それなりに大きい。
馬車置き場もある。
看板には、河水亭と書かれていた。
ハンス。
「ここでいいか」
リン。
「ええ」
ミリア。
「お風呂あるかな」
フロム。
「まず部屋よ」
宿の主人が出てくる。
「何名だ」
ハンス。
「えーと」
リン。
ミリア。
自分。
主人の目がフロムへ移る。
沈黙。
フロムも主人を見る。
沈黙。
主人。
「犬は外だ」
フロム。
「犬じゃないわよ」
主人。
「しゃべった!」
ハンスが慌てる。
「芸が得意な犬なんです!」
「犬じゃない!」
「ワン!」
全員が振り返る。
発言者。
ミリア。
フロムが睨んでいる。
(あとで覚えてなさい)
宿泊手続きは無事終了した。
二階。
部屋に入る。
簡素だが清潔だった。
主人の目を盗んでフロムが部屋に入ってくる。
全員が座り込む。
久しぶりの安全な場所。
しばらく誰も喋らなかった。
やがてハンスが口を開く。
「で」
「これからどうする」
部屋の空気が変わった。
リンが地図を広げる。
シユウ帝国。
テンの街は帝国中部。
東海岸近くに位置する。
一方、この国の首都は大都。
テンの街より少し内陸。
馬車で北西方向に三-四日進んだ先にある。
クロウが降りてくる。
「ゼノンの回収」
「情報収集を推奨」
フロムも頷いた。
「そうね」
「西行きが優先だけどUnit-09の回収も必要だわ」
ヨウドが皆を見る。
「敵陣営は魔物を使用しているである」
「この国の魔物事情を探れば敵基地を発見できる可能性がある」
リンが言う。
「話を聞くにしても頼れるのはエース商会くらいかしら」
「大都にはエース商会の支店があるわよね」
ミリアは拳を握る。
「先生を見つける」
誰も反対しなかった。
窓の外。
夕暮れのテンの街。
ハンスは大きく伸びをする。
「じゃあ決まりだな」
翌朝。
馬車は再び動き出した。
テンの街を離れ北へ向かう。
目指すは大都。
シユウ帝国最大の都市。




