第58話 <縄張り争い>
黒い兵士。
魔物軍団。
互いに動かない。
雨上がりの遺跡。
重苦しい空気だけが流れていた。
左。
魔犬。
魔熊。
魔虎。
そして最後尾。
痩せた男。
右。
黒い兵士五名。
全員同じ姿。
黒い外套。
黒い剣。
黒い仮面。
ハンスが小さく呟く。
「何なんだよあいつら」
ヨウドの瞳が光る。
「敵新型兵と思われる」
「これまで確認例はないのである」
ミリア。
「味方?」
「多分違うのである」
その時、痩せた男が前に出てきた。
黒い兵士達に向かって口を開く。
「我らが先に確保に来た」
「退かないか」
黒い兵士達は答えない。
代わりに。
静かに剣を構えた。
ヨウド。
「交渉決裂のようである」
次の瞬間。
魔犬が飛び出した。
同時に黒い兵士も動く。
激突。
ガァァァァン!!
金属音。
咆哮。
血飛沫。
乱戦が始まった。
魔犬が飛び掛かる。
黒い兵士が剣で切り払う。
魔熊が突進する。
兵士は避けもせず正面から受け止める。
まるで恐怖という概念が存在しないかのように。
リン達は動けなかった。
魔犬。
魔熊
魔虎。
黒い兵士。
全てが入り乱れている。
ハンス。
「どうする」
リン。
「分からない」
「でも今は動けないわ」
ヨウドだけが首を傾げた。
「何故待つ」
ハンス。
「普通そうだろ」
ヨウド。
「普通ではない」
銃を持ち上げる。
「突撃である」
ハンス。
「待て」
「吾輩は支援機である」
走り出した。
タタタタタッ!!
小銃掃射。
魔犬一体撃破。
さらに前進。
腰から手榴弾。
口でピンを抜く。
走りながら投擲をする。
すぐさまま伏せる。
ドォォォォォン!!
爆炎
魔犬が吹き飛ぶ。
魔熊も転がる。
黒い兵士も転がる。
ハンス。
「お前どこを支援してるんだ!」
ヨウド。
「全方面である!」
その時だった。
黒い兵士の一人が口を開いた。
痩せた男に向かっていう。
「ここでのこれ以上の戦闘は許さないと言っている」
「極光に伝えよ」
「ここは麒麟管理区域である」
痩せた男が目を細める。
「一旦戦闘停止だ」
魔物の動きが止まる。
黒い兵士も剣をおさめる。
痩せた男が苦々しげに言う。
「覚えておこう」
「今は戦闘を停止してやる」
「引き上げる」
男は手を上げた。
魔物が退く。
痩せた男とともに遺跡の外へ消えて行った。
静寂。
残されたのはリン達と黒い兵士。
リンとハンスは剣を構える。
クロウ、フロムもいつでも飛びかかれるように構える。
ヨウドも銃を構えた。
ミリアも馬車の窓から狙っている。
黒い兵士がリンらに近づく。
「攻撃するな」
「現時点において敵対行動は行わない」
黒い兵士はそう言いながら小さな板をリンの前に差し出した。




