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崩壊世界の再生人類  作者: Beta
目覚め

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第6話 <遺物の町2>

 目が覚めたとき、外はすでに明るかった。

 体は、もう問題ない。

 女はすぐに立ち上がる。

「……行くか」

 迷いはない。外に出る。


 買取屋はすぐに見つかった。

 大作りの広間に台やらカウンターやらが並んでいて、その上に鉄の塊や見慣れない物体。それを囲んで、何人もの男が集まっている。

 叫び声。

 値段交渉。


「三だ!」

「ふざけんな、これは動くかもしれねぇぞ!」

 女は中に入る。

 視線を無視して。

 積まれた遺物を見る。

 黒い筒。

 箱。

 割れた板。

 そして——

 銃。

 女は手に取る。

 重さを確かめる。

 なぜか内部の構造が想像できる。


 ——使えるか。

 すぐに結論が出る。

(弾の品質が十分じゃない。……いざというときに反応しないかもな。命は預けられないか)

 戻す。


 別のものに手を伸ばす。

 卵のような形。

「……おい、触るな」

 横から声。

 振り向く。

 発掘屋の男が、苦い顔をしている。

「それは弾けるやつだ」

「弾ける?」

「運が悪けりゃ、手がなくなる」

 女は何も言わず、手を引いた。


 しばらく見て回る。

 だが——

 欲しいものはない。

 分かるものもない。


「……こういうの、どこで出る」

 男の一人が笑った。

「そこらの遺跡にいきゃあ、いくらでも出てくるぜ。」

「目ぼしいものは掘りつくされているがね。まだ見つかる場所? そりゃあ教えられねぇよ」


 別の男が口を挟む。

「ねえちゃん、金は持ってるのかい?」

「どうしてもいい場所知りたいなら、ジジイんとこ行けば教えてくれるんじゃねえか」

「ああ、あの変人か」

「遺物ばっかいじってる」

 下卑た笑い。

「いい場所知ってるって、前からあちこちで騒いでたな」

「だが、ジジイの言うこと信じて行ったやつ、誰一人帰ってこなかったぜ」

「ああ、ジジイの言う場所、多分あの魔人の巣窟のあたりだろ。あそこに行くにゃあ命が幾つあっても足りねえ」


 連中からジジイの場所を聞き出し、女は向かった。

 細い路地の奥。

 崩れかけた建物。

 カチ、カチ、と乾いたような不規則な音が聞こえる。

 扉を開け中に入る。


 異様だった。

 金属。線。割れた板。

 意味の分からないものが、床にも壁にも散乱している。

 その中心に——男がいた。


 年老いた男。

 何かをいじりながら、こちらを見ることもなく


「……客か」

 女は中へ入る。

「遺物について聞きたい」

「金は持ってるのか?」

 男は顔をあげ、ようやくこちらを見た。

 足元から頭まで。

 装備。動き。呼吸。

 計るように。


「何の用だ」

 女はわずかに考える。


「……遺物だ」

「武器か? どんなものが目当てだ」

 男の眉がわずかに動く。

「……何を考えている」

「探してる」

「何を」

 間。

「……鍵だ」


 一瞬、静かになった。

 男の目の奥が、ほんのわずかだけ変わる。

 だがすぐに戻る。

「……なんの鍵だ、遺物の鍵なんて欲しいのか」

 鼻で笑う。

「「戻る」について知りたい。それにその鍵だ。」

 女は言葉をつづけた。

「何かと思えば、まさかな、おとぎ話の「鍵」とはな。」

「お前、王都の学者か何かか? ここいら辺のやつとは違うようだが」


 女は何も言わない。

 ただ見ている。

 男はしばらく黙っていた。


 ——考えている。

(鍵、だと? どこぞのお嬢ちゃんか? 何も知らねぇ顔だな)

 視線をわずかに逸らす。

 自分の右足を見る。

 膝から下は動かない。


 再び女へ視線を戻す。

「まだみんなに荒らされてねえ、良い場所を知っているぜ」

「いろんなお宝が眠っているはずだ」

「教えてやってもいいが、もちろんタダという訳にゃいかねえ。払えるのかい」

 唐突に言った。


「金はない」

 女の目がほんのわずかに動く。

「ふざけてるのか。出すもんがねえなら帰りな」

「私が遺物を回収してお前にやる。金の代わりだ」

 女は言った。


「俺から場所だけ聞いて、そのままお前がドロンしねえ保証がどこにある」

「それに、お前が他のヤツに教えてお宝さらっていくかもしれねえ」

 男は話にならないと頭を振った

「自分で回収できるのか? それとも私以外でそこに行ってくれるやついるのか?」

 女は男に向かって無表情に話した。


「俺は行けねぇ」

 足を軽く叩く。

「昔、そこに行って魔犬にやられたんだ。魔人になりかけたんだが、幸い戻ってこれた。だがな、治ったあとも代わりにこいつが動かなくなっちまった」

 女はそれ以上聞かない。


「魔犬や魔人が少しばかり出る可能性がある。お前がそこに行くなら場所を教えてやってもいい。銃やら弾け玉、それに銃の弾は高く売れるからいい。遺物を持って帰ってこれたら、見返りに“それらしい話”を教えてやる。俺の知っていることを全てな。逃げたらそれは無しだ。もちろんお前が魔人にやられてもな」


 “鍵”とは言わない。

 わざとだ。

 女はそれに気づいているようで、気づいていない。

 数秒。

 考える。


「遺物は?」

「持てるだけ全部持ってこい。昔、行ったとき、この銃よりもっと大きなヤツもあった」

 男は、机のガラクタの下から、黄ばんだ紙束を引っ張りだす。

「これを見ろ」

「死にかけて拾ってきたもんだ。ここに「拳銃」って書いてある。普通、遺物で銃といえばこいつだ。」

 男は紙束の中から、さらに1枚を抜き出して女に見せる。

「もっとデカいのもある」


「自動小銃か」

 女は図の上に書かれた文字を見て答えた。

 男の目が見ひらかれる。

「お前…読めるのか?」

「…少しな」

 女が答える。

「俺は読むのに10年かかったのに」

 男の口が歪む。


「……半分だ」

「お前の言うやつを探して持ってこよう。ただし遺物の半分はよこせ。金でもいい。それから、鍵の話を聞かせろ。」

女は無表情に言い放った。

「分かった。これで決まりだ」

 短く答える。

(何も知らねぇが、深追いもしねぇ)

(こういうやつが一番使える。まあ最近は誰も引き受けなくなったがな)

(帰ってこなくても損はねえ。帰ってくるとは思ってねぇがな)

 男は笑って、計るようにしばらく女を見た。


 街を出て男の言った場所に向かう。

 クロウが上から滑るように飛んでくる。

「……遺跡を知ってるのか」

 女が聞く。

「別に」

 あっさりと答える。

 それ以上言わない。


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