第51話 <砦の記録2>
隊長は砦に泊っていくこと勧めた。
夜には一行を食事に招待した。
「旅人をもてなすくらいはさせてくれ」
料理が並ぶ。
肉。
スープ。
酒。
ミリアが席につく。
リンも腰を下ろした。
クロウは窓際にいる。
フロウは壁際にうずくまった。
ヨウドはリンの後ろに控える。
そして。
リンがスープを口に運ぼうとした時だった。
クロウの目が光る。
「警告」
リンの手が止まる。
「薬物反応検出」
「飲食を推奨しない」
沈黙。
ハンスが頭を抱える。
「またかよ!」
隊長の顔が引きつった。
フロム。
「高濃度鎮静剤を確認」
ヨウド。
「睡眠誘導目的である」
隊長は立ち上がった。
だが。
その瞬間。
リンが動いた。
一歩。
隊長の背後へ回る。
黒剣の切っ先が首筋へ向けられる。
「動かないで」
隊長の顔から血の気が引いた。
◇ ◇
数分後。
みの虫のように縄でぐるぐる巻きにされた隊長が床に転がっていた。
「離せ!」
「私は砦の隊長だぞ!」
ハンスが鼻で笑う。
「薬盛っておいてよく言うぜ」
隊長は顔を真っ赤にした。
「だ、だからと言って縛る必要はないだろう!」
「必要だった」
リンが冷静に答える。
クロウ。
「同意だ」
フロム。
「同意よ」
ヨウド
「同意である」
「お前ら鳥と狼と…それに…何だ」
「その怪しい男」
「何でそんなに息が合ってるんだ」
ハンスが腕を組む。
「さて」
「全部話してもらおうか」
隊長は唾を飲み込む。
リンが静かに聞いた。
「四年前」
「何があった」
隊長は観念したように答えた。
「お前みたいな奴を捕まえた」
沈黙。
「普通じゃなかった」
「何十人で囲んでも勝てなかった」
「黒い剣の男だ」
ミリアの呼吸が止まる。
隊長は続けた。
「ようやく捕まえることができて」
「どこかの軍へ引き渡された」
ミリアがしゃがみ込む。
「どこへ連れて行かれたの!?」
隊長は観念したようにため息をつく。
「シユウ帝国だ」
沈黙。
「それ以上は知らん」
「本当か?」
ハンスが睨む。
「本当だ!」
「知っていたら最初から話している!」
ミリアは唇を噛む。
先生は生きていた。
だが自由ではない。
どこかで囚われている。
それだけは確かだった。
隊長がぼそりと呟く。
「しかしなぁ……」
「まさか本当に仲間が来るとは思わなかった」
「それまでずっと一人だったからな」
「何か言った?」
ミリアが睨む。
「いや、何でもない」
隊長は慌てて首を振った。
縄がぎしぎしと音を立てる。
ハンスが立ち上がる。
「どうする」
リンは答えた。
「シユウ帝国へ向かう」
ミリアが握り拳を作る。
「待ってなさいよ先生」
「絶対見つけるんだから」
砦の外では夜風が吹いていた。




