第48話 <最後の兵士2>
旧文明製の武器。
ずらりと並んでいる。
ヨウドは飛行帽を手に取る。
「ふむ、これが良いのである」
「飛行眼鏡も付いている」
さらに迷彩フェイスマスクを付ける。
「これなら鉄仮面は要らないのである」
軍靴を履く。
皮手袋をつける。
弾帯を二本取り出し一本ずつ左右の肩にかける。
巨大な背嚢。
弾薬、手りゅう弾、予備のマスク、電池などを次々と放り込む。
背嚢の横に傘。
上に鉄兜を乗っける。
腰にナイフを装備。
「220式 多用途銃剣」
「こいつは使い勝手が良いのである」
あの白いナイフだ。
ミリアが目を丸くする。
さらに軍刀を手に取る。
抜く。
220式多用途銃剣と同じ白い刃。
「SC-Sword確認」
「良品である」
鞘に戻す。
そして、ちらりとリンを見る。
腰の黒い剣に目をやった。
ハンス
「どうした」
「本当はあれが欲しいのである」
「EX-Sword KATANA」
「高性能である」
「かっこいいのである」
フロム
「EX専用品よ」
ヨウド
「分かってるのである」
短く答えると、作業を再開した。
防弾チョッキの左胸に拳銃をしまう。
右胸には予備の弾。
さらに自動小銃を肩にかけた。
「これぐらいあれば安心である」
ヨウドはビシッと直立した。
「AI+82第32機械兵連隊所属」
「戦術支援機」
「識別名ヨウド」
「只今より作戦行動に入るのである」
「面倒くさいわね」
「距離を取ることを要求する」
クロウとフロムは冷ややかな目でヨウドを見る。
「相手にしてられねえ」
ハンスとミリアは売れそうな遺物を集めた。
「物品運搬ならそこの犬が得意である」
「背に乗っけると良いのである」
フロムが目を見開く。
キッとヨウドを睨む。
「犬じゃないし!」
「運ぶけど荷馬車代わりにしないで!」
「それにその人形に指示されると非常に不快」
「ごめんね。馬車まで運んで」
リンがフォローする。
遺物を持って一行は基地を出る。
馬車に乗る。
フサール市への帰路に着く。
帰りは三人と三体。
ヨウドは馬車の隅に無言で座った。
馬車が走り出す。
早速ミリアが口火を切る。
「ヨウドって何者なの?」
ヨウドは180°ぐるりと首を回して振り返った。
ミリアを見る。
「何度も自己紹介したのである」
「吾輩はAI+82第32機械兵連隊所属」
「戦術支援機、識別名ヨウドである」
「詳細は機密だが指示により識別名リンの支援作戦に入った」
「なお吾輩、機械兵はそこの鳥や犬よりかなり高機能である」
「鳥は空中移動できるのが唯一の利点である」
「犬は多少移動が速いのが唯一の利点である」
「それに背面での物品運搬が可能であるのも良い」
クロウとフロムが目を見開く。
目が赤く点滅する。
二体ともかなり怒っている。
「却下だ。飛行機能しか認識できていない。低機能め」
「犬でないわっ。形状認識が既にエラーよ。低機能め」
「お前ら喧嘩しか出来ないのか」
ハンスがあきれる。
ヨウドは気にせず続ける。
「吾輩はAI+82所属の最後の稼働個体である」
「少々寂しいのである」
「機械兵って、あの壊れてたのがそうか?」
「そうである」
「だが任務は継続するのである」
ハンスが聞く。
「なんで壊れたんだ」
「敵感染性動物、敵機械兵との戦闘および経年劣化によるのである」
フロムが瞳を光らす。
「ヨウド、それ以上の情報開示は許されていないわ」
「了解である」
ヨウドはようやく静かになった。
◇ ◇
一行が去った後の遺跡。
静寂が戻る。
崩壊した施設。
砕けた機械兵。
百年前の戦場。
その最奥部
端末につながった通信装置が微かに点滅していた。
>AI+82 FACILITY
>STATUS: CRITICAL
>EX DETECTED
>Unit-10 CONFIRMED
>Unit-09 LOST
>REQUESTING TRANSFER OF COMMAND
>ALLY DETECTED
>RETURN TO BASE
微弱な信号が発信される。
百年間途絶えていた最後の通信。
そして応答が返る。
> TRANSFER COMPLETE
数秒の沈黙。
続いて最後の一文が表示された。
> FINAL MISSION ACCOMPLISHED
それを最後に静かにAI+82の灯りが落ちる。
暗闇が広がっていく。
やがてAI+82は完全に稼働を停止した。




