第46話 <AI+82>
通路は封じられていた。
金属製の扉。
圧倒的な質量で侵入を拒んでいる。
普通なら開けることも動かすことも出来ないだろう。
だが老朽化のせいか破壊によるものか一部が崩落していた。
ミリアが工具やら何やら取り出す。
「任せて!」
「大丈夫かよ…」
「心配ね」
二人と二匹は後ずさり。
数分後。
「バスン」
小規模な爆発。
今回はきちんと制御されていたようだ。
隔壁がわずかに動く。
「やった!」
「開いた!」
「成功!」
ハンスが笑う。
「ちとビビッていたが」
「お前、今日は頼りになったな」
「『今日は』って何よ!」
クロウ。
「ミリア周辺での爆発回数に追加カウント」
「記録更新中」
「これは違うでしょ!」
あとはハンスのターム。
近くにあった金属棒を押し込み力任せに広げる。
ひと一人が通れるくらいの隙間ができた。
一行は内部に足を踏み入れる。
部屋の中央。
巨大な装置。
完全に停止している。
周囲には配線。
砕けたディスプレー。
崩れた制御盤
フロムが近付く。
クロウも近付く。
二匹の瞳が同時に青く光った。
LINK
AI+82
STATUS
OFFLINE
数秒。
停止期間
100 YEARS
ハンス。
「なんだって?」
クロウ。
「百年前の戦闘で機能喪失」
フロム。
「デバイス破損」
「再起動不可」
「施設機能喪失」
ミリアが見回す。
「ここって戦場だったの?」
誰も答えない。
その時だった。
壁際の一角から微かな光が放たれた。
「クロちゃん!」
壊れかけた端末。
だがまだ生きている。
リンが近付く。
指で表面の埃を払う。
文字が浮かび上がる。「
> WESTERN FRONT
> EX RECORD
クロウが停止する。
フロムも黙る。
二匹の目が再び光る。
RECONNECT
ORDER:AI+82 STATUS DISCLOSURE
RECORD TRANSFER
端末のディスプレーに記録が流れる。
> MAJOR FUNCTIONAL FAILURE
> EX UNIT REPORT
> 7 ACTIVE PERSONNEL
> WESTWARD OPERATION
> EASTERN FRONT COLLAPSED
> LOSS OF AUTONOMOUS COMBAT UNITS
リンは思わず画面を掴んだ。
手が震える。
「七人……」
宰相の話。
七人の剣士。
本当だった。
ほぼ同時にミリアが声を上げた。
「これ!」
床の隅。
一本の剣。
黒い鞘。
リンが持ち上げる。
奇妙な感覚。
手に馴染む。
鞘に刻印。
ミリアが読み取る。
「番号?」
クロウの目が光った。
「シリアル番号確認」
そして答える。
Match
EX Unit-09
Xenon
沈黙。
ミリアの手が震える。
「クロちゃん…」
「どういうこと…」
クロウは再度静かに答える。
「登録情報一致」
「EX Unit-09」
「識別名Xenon」
「現生人ミリアに理解できるよう翻訳すると」
「当該個体 識別名Xenonに登録のEXソードだ」
ミリアが言葉を失った。
これはゼノンが持っていた剣。
先生はいた。
間違いない。
さらにディスプレーに文字が流れる。
画面に出る最後の行。
> EX UNIT-09 XENON CHECK-IN
> REBOOT SUCCESSFUL
> PARTIAL RECOVERY
> 4 YEARS ELAPSED
崩れた施設。
終わった戦い。
残された剣。
ミリアはそっと剣を抱きしめた。
「先生……」
一方、その頃。
施設のさらに奥。
装置の小さな点が光った。




