第44話 <未発掘遺跡>
エース商会フサール支店。
応接室での話はまだ続いていた。
リンが聞く。
「話は少しか変わりますが」
「百年前にも同じような剣士がいた話はないですか」
「百年前…」
「私はよく知りませんが歴史に詳しい者なら知っているかもしれません」
支店長は続ける。
「この辺りを治めている地方領主なら何か記録を持っている可能性があります」
「四年前の騒動も」
ハンス。
「会わせてくれるのか」
「紹介状は書けます」
「ただ…」
少し言い淀む。
「お話を出しておいて恐縮なのですが」
「やはり直接会うのはお勧めしません」
クロウの青い瞳が一瞬光る。
フロムも顔を上げた。
「理由を要求する」
クロウ。
支店長が目を丸くして驚く。
「ボロンさんの手紙にありましたが」
「本当に言語を解するのですね」
クロウは何も答えない。
支店長は言葉を選び続ける。
「最近の領主、妙に警戒心が強くなりまして」
「旅人の素性まで詮索されることがあります」
ハンスが顔をしかめる。
「面倒臭そうだな」
「そうですね」
「こちらで問い合わせだけしておきましょうか」
支店長は苦笑した。
クロウの瞳が青く光る。
「過度の関与を避ける」
「優先順位:西進」
フロム。
「同意」
「接触は不要」
リンはしばらく考えた。
「問い合わせだけお願いできませんか」
「西行きを優先させましょう」
「それで…」
「西に向かうにせよ歩いていく訳にゃあいかんだろう」
「急いだほうが良いって言うし何か移動手段が欲しいな」
「馬車とか扱ってないのか」
ハンスが支店長に聞く。
「探しましょう」
「三人乗ればいいでしょうからそれほど大きくなくてよいですね」
支店長は商会の男に言う。
「適当な物がないか聞いてみてくれ」
「助かります」
リンは礼を言う。
「要請許諾、物品供与について記録する」
「対価算定、ボロンへの謝礼に加える」
クロウが声を発した。
「有難うございます」
支店長は席を立つと別の資料を持ってきた。
「ところで馬車はお渡ししても良いのですが、会長からの手紙によるとお二人はたいそう腕が立つとか」
「ご相談ですが西北の山岳地帯に未発掘遺跡があります」
ミリアの目が光る。
「遺跡?」
「ええ」
支店長は地図の西北方向を指した。
「山岳地帯です」
「以前から何かあると言われていたのですが」
「魔物が増えた影響で百年以上ほとんど手が付けられていませんでした」
「ただ、以前探索した発掘屋が銃器や弾薬らしきものを持ち帰ったという話があります」
ミリア。
「行く」
即答だった。
ハンスが頭を抱える。
「だからお前は」
そしてクロウ。
「推奨しない」
さらにフロム。
「飛行型と同意見なのは不本意だが同意」
ミリア。
「却下」
ハンス。
「お前が却下する側なのか」
支店長は笑いながら。
「この国を移動するにも幾ばくかの資金が必要でしょう」
「お渡しすることも出来ますが領主からの返事が来るまでの間、如何ですか」
遺跡の場所に印を付ける。
「遺物を持ってきて頂いたら買い取ります」
「その後はこの国の王都セオルへ来てください」
「手配をしておきます」
「それに王都の方が情報を集めることができるでしょう」
さらに。
「この国に来たばかりならまだ宿泊先も決まっていないですよね」
「使いやすい所をご紹介します」
リンは礼を言ってエース商会を後にし、宿へと向かった。
宿はすぐに見つかった。
フサール市の中心街。
宿屋の部屋でリン達は次の行動を考えていた。
◇ ◇
翌朝、エース商会が手配した馬車が到着する。
食料。
水。
予備の武器。
そしてミリア用の工具箱。
「重い」
ハンスが呟く。
「研究に必要なの!」
ミリアが反論した。
「爆発物の間違いだろ」
「違う!」
クロウ
「過去の統計ではハンスの発言が正しい」
「クロちゃん!」
フロム。
「データ連携の結果、私も同意する」
「二人とも嫌い!」
一行を乗せ馬車はフサール市を離れた。




