第39話 <山中の追撃>
馬車は走り続けていた。
昼。
夕方。
夜。
そしてまた朝。
「まだ追ってくると思うか」
ハンスが御者席で聞いた。
リンは荷台の地図を見る。
「分からない」
「だが」
「捕まえるつもりだったのは間違いない」
ミリアは奪った資料をめくる。
「これ見て」
「町の名前がいっぱい書いてある」
「補給地点?」
クロウがリンの肩で答える。
「高確率」
「リン捕捉後の輸送計画書と思われる」
「なら」
ハンスが笑う。
「そこを避けて進めばいいな」
「同意」
珍しくクロウが即答した。
その日の夕方。
北に折れて山道へ入る。
木々が増える。
岩場が増える。
見通しが悪い。
ハンスが眉をひそめる。
「こっちでいいんだよな」
「なんか嫌な感じだな」
クロウが答える。
「港への最短距離だ」
その直後だった。
矢。
ヒュッ。
一本。
二本。
三本。
「伏せろ!」
馬車の横へ突き刺さる。
兵士達が飛び出した。
「いたぞ!」
「逃がすな!」
「回収しろ!」
「やっぱり追ってきたか」
「港に向かうことを予測してやがったのか」
ハンスが飛び降りる。
大剣が唸る。
一撃。
二撃。
兵士が吹き飛ぶ。
リンも馬車を降り前へ出る。
黒剣を抜く。
一閃。
兵士達が崩れ落ちる。
ミリアが叫ぶ。
「弱いわね!」
ハンス。
「お前が言うな!」
しかし。
クロウだけは動いていない。
上空へと羽ばたく。
青い目が光る。
「警告」
「敵増加」
「多数接近」
そのとき森の奥から無数の赤い光。
低い唸り声。
「……魔犬か」
リンが呟く。
「ピューイ」
森の奥から聞こえる笛の音。
次の瞬間。
大量の魔犬が飛び出した。
十匹。
二十匹。
三十匹。
ハンスですら顔をしかめた。
「多すぎるだろ」
リンが前に出る。
斬る。
さらに斬る。
だが減らない。
「囲まれる!」
ミリアが叫ぶ。
魔犬がどんどん現れる。
クロウ。
「撤退を推奨」
「もっと早く言え!」
ハンス。
その時だった。
地面が揺れた。
ドン。
ドン。
ドン。
森の奥から現れた。
巨大な熊。
魔熊。
普通の熊の倍近い巨体。
腐敗した肉。
異常な爪。
ハンスが吐き捨てる。
「ふざけんな」
「災害級の魔物じゃねえか」
さらに。
人影。
森の向こうに複数。
普通ではない。
身体の所々が変異している。
武器を持っている。
「なんだあいつら」
「見たことがねえ」
「新型魔人を確認」
クロウが言った。
「脅威度上昇」
「大幅上昇」
「全員死亡確率上昇」
「今それ言う!?」
ミリアが叫ぶ。
魔熊が襲い掛かる。
馬車が横転する。
魔犬、魔熊、魔人、それに兵士たち。
それぞれが三方からリンたちに襲い掛かる。




