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崩壊世界の再生人類  作者: Beta
目覚め

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第37話 <救出>

薄暗い馬車の中。

木の匂い。

ひどく揺れる。

土埃。

車輪の軋む音。


両手は後ろで縛られている。

足も自由にならない。

向かいにハンス。

その隣にミリア。

全員拘束されていた。


「やられたな……」

ハンスが舌打ちする。


「なにこれ!」

ミリアが暴れる。


「宰相……」

リンは小さく呟いた。


誰も答えない。

馬車は止まらない。


男が一人入ってきた。

三人が目覚めたことに気づく。


しばらくして食べ物を持ってきた。

食事。

拘束されたまま。


見張り三人。

食事中も。

排泄の時も。

常に監視が付く。

逃げられる状況ではなかった。


夜。

馬車が止まる。

夜営だ。


見張り一人。

魔物警戒一人。

休息二人。

一定時間ごとに交代している。


「真面目だな」

ハンスが小声で言った。


「逃がす気はないみたいね」

ミリアも小声で答える。


リンは黙っていた。


その時。

馬車の屋根で何かが動いた。


小さな羽音。

バサッ。

誰にも聞こえないほど小さく。

馬車の隅から黒い影が現れた。

青い目。

クロウだった。


「クロちゃん!」

ミリアが思わず声を上げそうになる。


「静粛を要求する」

クロウが即座に言った。


「救出行動を開始する」

「遅ぇ」

ハンスが言う。


「救出の準備には時間を要する」

クロウは反論した。


そして。

「解放優先順位」

「第一位 識別名リン」

「第二位 識別名ハンス」

「第三位 識別名ミリア」


少し沈黙。


修正

識別名ミリア 解放非推奨

沈黙。


「はぁっ!?」

思わずミリアが声を漏らした。

「静粛を要請する」


クロウを睨むミリア。

声を殺しながらも

「なんでよっ!」


クロウはミリアのそばに行き小声で答える。

「爆発率が高い」

「周囲への被害が予想される」

「危険人物」

「統計上不利益」


こんな状況にもかかわらず思わずハンスが同意する。

「正論だな」


「どっちの味方よ!」

ミリアがハンスを睨む。


クロウは無視する。

「リンを解放する」

「ハンス――解放が有益と判断する」

「識別名ミリアは――」


「クロちゃぁん」

ミリアが小声で呼びかける。


クロウ停止。

青い瞳が点滅する。


「識別名クロウだ」


「クロちゃーーん」


「修正を要求する」


「お願い」

「クロちゃん」


沈黙。

何秒か停止。

内部エラー。

応答処理異常。

対人応答アルゴリズム競合。

クロちゃん≠正式名称

だが不快ではない

エラー。

エラー。


クロウは再起動するように首を振った。

そして。


「仕方がない」


リン達が固まる。

クロウ自身も固まる。

青い目が不規則に点滅する。

「今、識別名クロウが発言したか?」


ミリアが不思議にクロウを見つめる。


クロウの目が再度、点滅する。

「ログ破損」

「発言記録を削除する」


「クロちゃん!」

「削除失敗」

「……」

「識別名ミリアも解放する」

「やった!」


問題は拘束具だった。

鍵はない。

クロウが辺りを調べる。


「解放に適した工具が必要」


その時、ミリアが言う。

「私のポケット!」

「ヤスリ!」


クロウ停止。

記録検索。

王都遺跡。

爆発。

危険人物。

ヤスリ回収。

確認。


クロウはミリアのポケットから器用にヤスリを抜き取った。

「有効」


少しずつ手枷を削る。

リン。

ハンス。

ミリア。

順番に解放。


そして。

ハンスが笑った。

「やっと俺の番だ」


数分後。

見張りが交代で近付いてくる。


背後。

ハンス。

大剣こそ無い。

だが拳はある。


「おやすみ」

ドガッ!!


一人。

二人。

三人。

四人。

全員気絶。

縛り上げて馬車の横に転がす。


「あんた本当に人間?」

ミリアが引く。


「人間だ」

「多分な」


馬車を確保。

地図。

書類。

輸送予定表。

どこに運ぶつもりだったのか、幸運なことに三人の荷物も積んでいる。

ハンスの大剣、リンの剣、ミリアの道具。


リンが地図を広げる。

「西へ向かっている」


クロウが確認する。

瞳が光る。

「王都方面への帰還は非推奨」

「現地政権敵対の可能性が高い」


ハンス。

「つまり?」


クロウ。

少し沈黙。


「東進プランは却下された」

「従って新計画を提示する」


さらに沈黙。

「やむを得ない」

「西進に同意する」


ハンス。

「今さらかよ!!」


ミリア。

「もっと早く言いなさいよ!」


クロウ。

「結果論だ」

「西および西北への移動を提案する」

「港街がある」

「西方大陸への航路を有する」

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