第36話 <王宮の晩餐>
王城での生活は驚くほど快適だった。
柔らかな寝台。
豪華な食事。
広い部屋。
発掘都市では考えられない待遇である。
その夜。
三人は宰相カーボに招かれた。
晩餐だった。
長いテーブル。
並べられた料理。
香りの良い肉料理。
焼きたてのパン。
スープ。
そして酒。
ハンスは目を輝かせた。
「すげぇな」
「全部食っていいのか?」
宰相は笑う。
「もちろんです」
「今日は客人ですからな」
ハンスは遠慮なく肉へ飛びついた。
ミリアはワインを少し口にする。
リンも勧められた酒を飲んだ。
ふとミリアが周囲を見回した。
「そういえばクロちゃんは?」
「ほっとけ」
ハンスが肉を頬張る。
「そのうち出てくるさ」
宰相が首を傾げた。
「クロちゃんとは?」
ミリアが答える。
「ペットです」
「ちょっと変な鳥」
「よく喋るの」
宰相は眼を細め少し怪訝な表情を浮かべた。
が、すぐに表情を戻し穏やかに笑った。
「それは面白い」
和やかな空気だった。
宰相は百年前の話を続ける。
「七人いました」
「三人は男性」
「四人が女性」
「いずれも常人離れした強さを持っていたと言います」
「魔犬」
「魔熊」
「魔人」
「当時猛威を振るっていた魔物達を次々と討伐したそうです」
リンは静かに聞いていた。
宰相は続ける。
「彼らは言いました」
「我らは十人で一組」
「仲間のいる場所へ向かう」
「魔物のおおもとを壊す」
「二度と魔物が生まれない世界を作る」
「そう言って西へ向かったそうです」
「ここは仲間の国から外れた東の飛び地」
「西のさらに西」
「そこに仲間の国があるとも」
部屋が静かになる。
リンは考える。
百年前。
自分と同じ人々。
西。
仲間。
そこに答えがあるのだろうか。
やがて食事が終わる。
その頃には。
少し身体が重かった。
リンは目を瞬く。
妙に眠い。
ミリアも欠伸をした。
「なんか……眠い」
ハンスも酒瓶を置く。
「今日は歩き回ったからな」
宰相は穏やかに微笑んだ。
「皆さんお疲れなのでしょう」
「どうぞお休みください」
三人は礼を言う。
客室へ戻る。
部屋へ入った瞬間。
ハンスが寝台へ倒れ込んだ。
「もうダメだ」
ミリアもそのまま座り込む。
「おやすみ……」
リンは窓へ近付く。
西の空を見る。
何かおかしい。
そう思った時には。
視界が揺れていた。
「……」
床が近付く。
そこで意識が途切れた。
静かな部屋。
窓が開く。
黒い影が入り込む。
クロウだった。
リンの肩へ降り立つ。
反応はない。
ハンスも。
ミリアも。
全員眠っていた。
クロウの瞳が青く光る。
解析開始。
薬物反応検出。
異常睡眠。
拘束要員接近。
数秒後。
扉の向こうに人影。
クロウは沈黙した。
そして結論を出す。
現地政権
敵対判定
救出行動を開始する
青い瞳が点滅する。
第一支援要請対象
商人ボロン
通信開始。
◇ ◇
どれほど時間が経ったのか。
目を開く。
揺れていた。
薄暗い。
木の壁。
狭い空間。
馬車だった。
リンは身を起こそうとする。
動かない。
両手を縛られていた。
向かいにはハンス。
さらにミリア。
全員拘束されている。
ハンスも目を覚ます。
やがて状況を理解する。
歯を食いしばった。
「やられた……」
同じく目を覚ましたミリア。
「なにこれ!?」
リンは静かに呟いた。
「宰相……」
答えはなかった。
馬車だけが揺れている。
そして三人はようやく理解した。
騙されたのだと。
[日間] 空想科学〔SF〕で最高17位になりました!
有難うございます。
ミリアが元気です。
ちょっとリンがおとなしいけど。
頑張って書いていきます。




