第22話 <王都>
王都は交易都市とは別格だった。
多くの人が行き交う。
街を囲む高い城壁。
入街待ちの人々の列。
石造りの巨大な門。
交易都市ですら大きいと思ったが、
王都はさらにその上だった。
三人は列に並ぶ。
クロウはリンの肩にとまったまま、
珍しく大人しい。
「静かにしてろよ」
「それでなくとも不気味なのに」
「捕まったら焼き鳥だぞ」
ハンスが言う。
クロウが薄く目を開く。
「南方にはゴリラという筋肉ザルが生息する」
「ヒグマと同じくらい、あるいはそれ以上の体格を持つ」
「警告」
「識別名ハンス」
「珍奇な動物―特にゴリラ―との類似性高し」
「捕獲の危険あり」
「注意、注意」
「うるせえっ!」
ハンスが睨む。
「誰が筋肉ザルだ!」
「誰がクマだ! それにゴリラぁ!?」
「静かにしてよ」
「本当に捕まるわよ」
ミリアがため息をつく。
幸い大きなトラブルもなく、
一行は無事、王都へ入ることができた。
街に入ると、先に入ったボロンが待っていた。
助けてもらったお礼がしたいから、一度うちに来て欲しいという。
丁寧に断りを入れたが、代わりにいい宿を紹介して欲しいと頼んだ。
それならばと、ボロンは自身の家に泊るよう言い出した。
客人を迎えることが多く、部屋は余っているらしい。
断り切れず、好意に甘えることにした。
「私の店はエース商会といいます」
「『不死身のハンス』様ともお知り合いになれました」
「困ったことがあったらいつでも来て下さい」
ハンスは、護衛代ももらったし気にするなと言った。
しかし、
「これももらって下さい」
ボロンは金属でできた家紋のようなものを手渡した。
「このマークのある店で見せて私の名前を言って下さい」
「私のところに連絡がきます。また私の商会のものがお手伝い致します」
三人はボロンに礼を言って一旦別れ、城の近くにあるという学術院に向かった。
石畳。
行き交う人々。
衛兵。
高い塔。
整然と並ぶ建物。
そして、目を輝かせるミリア。
「すごい……」
「あの建物も」
「こっちも」
「どうやって建てたのかしら」
「田舎者みたいな反応すんなよな」
「初めて来たの!」
「少しミリアノイズが多い」
クロウが言う。
だがミリアは気にもせず、
「クロちゃんも初めてでしょ」
「識別名クロウだ」
「その呼称は正確ではない」
「修正を要求する」
クロウは横を向いた。
リンは組合長から預かった紹介状を取り出す。
王立学術院
文化言語学研究室
室長 ニトロ・グリセリン
学術院へ向かう。
途中、小さな市場を通る。
雑貨店。
果物屋。
肉屋。
屋台。
昼時の賑わい。
ハンスは串焼きを買った。
「この肉うんめえ」
皆にそれぞれ手渡し、自身もガツガツと口に入れる。
「王都は肉まで違うのね」
頬を膨らませるミリア。
「形状的・成分的には高い確率で鳥類の肉だ」
クロウがリンの串焼きをつつく。
「お前、共食いか!?」
串焼きを食いながらハンスが笑う。
「これは九十五パーセント以上の確率で野鶏」
「同類ではない」
一行はやがて学術院へたどり着く。
守衛に紹介状を見せる。
応接用の小部屋へ通される。
しばらくして若い職員が現れた。
「申し訳ありません」
「室長は現在手が離せません」
「お会いになることはできますが、2時間ほどお待ちいただくことになります」
三人は顔を見合わせた。
「どうしようか」
すると職員が続ける。
「紹介状をお持ちですので学術院内の見学は可能です」
「資料室をご覧になりますか」
ミリアが即答した。
「行く!」
ハンス。
「帰りたい…」




