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崩壊世界の再生人類  作者: Beta
奪還

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112/117

第108話 <監視2>

「補給行動と判断する」


三日目の夜。

宿に戻ったクロウが報告する。


テーブルの上には、ミリアが描いた遺跡周辺の地図が広げられていた。

地図と言っても、紙の中央に四角い遺跡があり、その横に街道が描かれただけのものだった。

中央に卵型の遺物がやけに細かく描かれている。


「何だこの卵は。それでなんでこれだけこんなに大きいんだ?」

ハンスが尋ねる。


「重要な遺物だからよ」

「基地の入り口より大きく描いてあるぞ」

「縮尺なんて細かいことはいいの」

「よくねえだろ」


リンは二人の会話を聞き流し、クロウを見る。


「基地から出てきたのは二人だけ?」

「そうだ」

「一人はリード」

「もう一人は未確定だが、会話から『スタン』と呼ばれる個体と考えられる」

「他の三人は?」

「二人への同行は確認できなかった」


クロウは嘴で地図の東側を示す。


「二人は馬車で大都へ移動」

「大都で食料、燃料、弾薬を補給していた」


「大都の商人と取引しているのね」

フロムが言う。


「そう考えられる」


「麒麟の兵士だと知られているのであるか?」

ヨウドが尋ねる。


「不明だ。商人は通常の取引相手として接していた」


ハンスが頭をかく。

「よく分からねえな」

「俺たちを襲った連中が、普通に街で買い物をしているのか」


「軍や組織とは、そのようなものである」

「武器があっても、燃料や食料がなければ活動できないのである」

ヨウドが答えた。


「機械兵なら食料は不要だが」

「黒い兵士は機械ではない」

クロウが答える。


「外見、体温、呼吸、行動から、生体である可能性が高い」


リンは森で戦ったケイを思い出した。

剣が身体を貫いたはずなのに、致命傷にはならなかった。

驚異的な身体能力。

だが、あの兵士は確かに血を流していた。


クロウが続ける。

「引き続き兵士の行動を監視する」

「同様の行動が繰り返されるなら、補給には一定の周期がある」


「二人が抜ければ、基地の兵士は三人になるわね」

ミリアが地図を見つめた。


「まだ侵入すると決まったわけではないわ」

リンが釘を刺す。


「分かってる」

そう言いながらも、ミリアの視線は地下施設の入り口から離れなかった。


◇ ◇


四日目。


変化はなかった。

扉は一度も開かなかった。

クロウは上空から遺跡を旋回した後、近くにある岩山のように崩れた建物跡に降りた。

遺跡の周囲に、別の出入り口らしきものは見つからない。

だが、崩れた壁に隠れるように通風口を三か所見つけた。

そのうち一か所から、温かい空気が排出されている。

地下の規模は、地上から見える遺跡よりも大きい可能性が高い。


クロウは監視を続けた。


その時。

地下の扉が開いた。

現れたのは黒髪の人物だった。

細身の女性。

迫撃砲を肩に担いでいる。

ミズカネ。


ミズカネは階段を上がり、遺跡の広場へ出た。

後ろからスタンが続く。

スタンは大きな箱を両手で抱えていた。

地面へ箱を置き、蓋を開ける。

中には砲弾が並んでいる。


「訓練は一発だけだ」

スタンが言った。

「どうして?」

ミズカネは迫撃砲を地面へ設置しながら、首を傾げる。

「弾薬には限りがある」

「昨日、たくさん持って帰ってきたじゃない」

「お前が撃たなければ、あれで一か月は持つ」

「そんなに?」


ミズカネは感心したように言った。


次の瞬間。

迫撃砲弾を砲口へ落とす。

ドン!

発射音が遺跡に響く。

数秒後。

遠くの平原で、土煙が上がった。


「命中」


スタンが言う。

ミズカネはすぐに次の砲弾をつかんだ。


「待て」


ドン!


「一発だけだと言っただろう!」

ミズカネは三発目を手に取る。

「今ので終わりよ」

「さっきもそう言った」


ドン!


遠くで再び爆発が起きる。

スタンが額を押さえた。


「ミズカネ」

「何?」

「砲弾を置け」

「どうして?」

「置け」

「あと一発だけ」

「駄目だ」

「けち」


ミズカネは不満そうに砲弾を箱へ戻した。

スタンが箱を閉じる。

その背後から、白い髪の男が現れた。

重機関銃を抱えている。

カドメイア。


「ヒヒヒヒ」


カドメイアは、箱を見て笑った。


「弾」


「お前も駄目だ」

スタンが即座に言う。


「まだ何も言ってない」

「言わなくても分かる」

「撃つ」

「駄目だ」

「少し」

「駄目だ」

「一発」

「重機関銃で一発だけ撃てるのか?」


カドメイアは少し考えた。


「無理」

「なら駄目だ」


カドメイアは重機関銃を抱えたまま、スタンを見つめた。

やがて。


「ヒヒヒヒ」

再び笑った。


「スタン、けち」

「お前ら二人に言われたくない」

スタンは箱を抱える。


「戻るぞ」

「もう終わり?」

ミズカネが尋ねる。


「終わりだ」

「つまらない」

「昨日の補給分が、お前の遊びだけでなくなる前に戻るぞ」

三人は言い合いながら、地下へ戻っていった。


扉が閉まる。

再び静寂が訪れた。

岩山の上から見ていたクロウの青い眼が点滅する。

敵戦力。

迫撃砲。

重機関銃。

危険度は高い。

だが、その会話は、クロウの想定していたものとは少し違っていた。


命令だけを実行する兵士ではない。

互いの名前を呼び、言い争い、補給した弾薬の数を気にしている。

クロウは、その情報も記録した。

黒い兵士たちは、高性能な生体兵器である。

だが、それだけではない。

その結論をどう表現すべきか。

クロウの内部には、該当する言葉がまだ見つからなかった。

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