第102話 <報告会2>
ハンスは笑いながらミリアとフロムを見る。
「それで…お前たちはどうしてたんだ?」
「リンとはぐれちまったって聞いたけど」
「すぐに後を追ったんだろ?」
「そう!」
ミリアが勢いよく立ち上がった。
椅子が音を立てて後ろへ下がる。
「相談したいことがあるの!」
「フロムと一緒に街道を走ってリンたちを追いかけたの」
「でも…途中で違う街道に入っちゃったみたいで……」
「あなたが地図を確認しなかったからよ」
フロムが静かに言う。
「フロムだって何も言わなかったじゃない」
「言ったわ」
「聞こえなかった!」
「あなたが走れ走れというから…」
「あ――つまり道を間違えたんだな」
ハンスがまとめた。
「間違えたんじゃないの!」
「別の道を選んだのよ」
「それを普通は間違えたって言うんだよ」
ミリアは頬を膨らます。
だが、反論は諦めたらしい。
「それで、大都の南側をずっと西へ行ってから、北へ向かったの」
リンは宿へ来る途中で見た地図を思い出す。
「私たちとは、かなり違う道を通ったのね」
「そう」
「それでね、途中に面白そうな遺跡があったの!」
急にミリアの眼が輝く。
「嫌な予感しかしねえな」
ハンスが呟いた。
「ほんの少し寄っただけよ」
「少しではなかったわ」
フロムが突っ込む。
「遺物を見つけたから、ちょっと調べてみたの」
「分解して部品を持ち出すことを調べるとは言わないわ」
「元に戻そうとしたでしょ!」
「戻っていなかったじゃないの…」
リンは額へ手を当てた。
ミリアが見つけた遺物に何が起きたのか聞かない方がいいような気がした。
「その話は後にして…」
「相談したいことって何?」
リンが仕切り直す。
「そうだった!」
ミリアは再びテーブルへ身を乗り出した。
「その遺跡に、あの黒い兵士たちが来たの」
笑い声が止まった。
「黒い兵士?」
リンが聞き返す。
「森で私たちを襲った五人よ」
ミリアは大きく頷いた。
「全員、同じ馬車に乗ってきた」
「二頭立ての」
「そして遺跡の地下へ入っていったの」
「奴らの後を追ったのか?」
ハンスが尋ねる。
「途中までね」
フロムが補足する。
「地下へ続く階段の奥に金属製の扉があったの」
「黒い兵士が壁の装置へ番号を入力したら」
「扉が勝手に開いたわ」
クロウが翼をわずかに持ち上げた。
「番号は確認したのか」
「もちろん」
「全部覚えてるわ」
ミリアは眼鏡の位置を直し、得意げに胸を張った。
「本当に全部か?」
「何よ。信じてないの?」
「お前の記憶能力を疑っているのではない」
「注意力を疑っている」
「どういう意味よ。失礼ね!」
ミリアがまた頬を膨らます。
そこへフロムが割って入る。
「番号は合っているわ」
「私も確認したもの」
クロウはしばらく彼女らを見比べた。
少し首を傾ける。
「了解した」
「私の言葉じゃ信じないの!」
ミリアが不満そうに言う。
だがクロウは横を向く。
嘴で翼を整え始めた。
聞こえないふりをしているつもりのようだ。
「それで、その遺跡だけれど…」
フロムが話を戻した。
「旧文明の構造物よ」
「似たものはデータベースに幾つもある」
「シユウ帝国成立以前にあった都市の跡」
「でも、今は単なる廃墟じゃない」
「地下から振動音」
「いえ、機械の作動音が聞こえていたの」
フロムは耳をわずかに動かした。
「複数の動力装置が今も動いている」
ヨウドが顔を上げる。
「地下施設が稼働中ということであるか?」
「おそらくね」
「黒い兵士たちは迷う様子もなくそこへ入っていったわ」
「あの遺跡を拠点として使っていると考えるのが自然よ」
ミリアは握った拳をテーブルへ置く。
「あれは、きっと麒麟の基地よ」
「黒い兵士は先生を捕まえた麒麟の仲間なんでしょ?」
誰も否定しなかった。
「だったら、あの基地に先生がいるかもしれない」
ミリアの声から、先ほどまでの明るさが消えていた。
「ねえ」
リンを見る。
「行けないかしら」
「先生を助けに」




