第101話 <報告会1>
第3章スタートです。
大陸に渡り敵の勢力圏内の大都市にまで来ました。
失われた仲間を探して皆が動き出します。
久しぶりに、仲間全員がそろった。
狭い宿の一室。
中央に置かれたテーブルには、焼いた肉や固いパン、それに野菜の煮込みが並んでいる。
決して豪華な食事ではない。
それでもリンには十分だった。
ハンスがいる。
ミリアがいる。
クロウも、フロムも、ヨウドもいる。
森で離ればなれになってから、何度も思い浮かべた顔が、今はすぐ目の前にあった。
「それでさ、あの魔鳥!」
ハンスが身振りを交えながら話している。
「ありゃ脅威だ」
「空から襲われちゃ普通は防ぎようがねえ」
片手に持った肉を魔鳥に見立てて空中を飛ばす。
「上からこう、急降下してくるだろ?」
もう一方の手で剣を振る真似をした。
「そこを、不死身のハンス様が華麗に――」
「こう、くる瞬間を狙ってズバッとな」
「死に損ないのハンス様が?」
ミリアが口を挟んだ。
「ミ~リ~ア~」
ハンスが低い声を出す。
「それは言うなって言っただろ!」
「いいじゃない。無事だったんだから」
ミリアは悪びれもせず笑った。
リンも、思わず吹き出す。
「リンまで笑うなよ!」
「ごめんなさい」
口では謝ったが、笑いは止まらなかった。
こんなふうに笑ったのは、いつ以来だろう。
離ればなれになっていた時間は、ほんの数日だった。
それなのに、ずいぶん長い間、皆の声を聞いていなかったような気がする。
部屋の隅では、クロウが骨付き肉を嘴でつついていた。
少し離れた場所ではフロムも大きな肉にかぶりついている。
二体の間には微妙な距離があった。
ヨウドは壁を背に座り、携帯缶をくわえている。
食卓を囲んでいるというよりアルコール補給中だった。
「それでな」
ハンスは新しい肉をつかむと話を続けた。
「川を下って草原を越えて」
「ようやく街道に戻ったんだ」
「それから近くの街にたどり着いてな」
「そこで大都へ向かう馬車の護衛を見つけて」
「それに雇ってもらったの?」
リンが尋ねる。
「ああ。護衛をしながらなら馬車に乗せてもらえるからな」
「こりゃ運が向いてきたと思ったぜ」
「あの街ね」
リンは思い当たった。
「私たちも、そこで一泊したわ」
「そうだったのか」
「もう少し早けりゃ、そこで会えてたかもしれねえな」
ハンスは残念そうに言う。
だが、すぐに肩をすくめた。
「まあ、無事に大都まで来られたんだから」
「結果は同じか」
「護衛の仕事は何もなかったの?」
ミリアが聞く。
「それが、あったんだよ」
ハンスは肉を皿へ戻した。
わずかに声の調子が変わる。
「大都の近くで魔物に襲われた」
リンの表情から笑みが消えた。
「怪我は?」
「俺を誰だと思ってんだ」
「傷なんざ寝りゃ治る」
ハンスは胸を叩いた。
クロウの青い眼が一度だけ点滅した。
だが、何も言わなかった。
「魔物は追い払った」
「馬車も無事だった」
「そこまではよかったんだが……」
ハンスは腕を組んだ。
「一緒に護衛していた奴らが消えた」
「消えた?」
リンが聞き返す。
「ああ」
ハンスが頷く。
「魔物にやられたわけじゃねえ」
「血の跡も、争った跡もない」
「死体も見つからなかった」
「荷物を持って逃げたんじゃないの?」
ミリアが尋ねる。
「装備まで全部消えてたから最初はそう思った」
「けど、雇い主が妙なことを言っていてな」
ハンスは皆の顔を見回した。
「最近、この辺りじゃ人や家畜が消えるらしい」
部屋が静かになった。
先ほどまで肉をつついていたクロウが顔を上げる。
青い眼が淡く明滅していた。
フロムも食事を止めた。
「人と家畜が?」
リンが呟く。
「ああ」
「村から牛がまとめて消えたり」
「街道を歩いていた旅人がいなくなったりしてるらしい」
「盗賊ではないのであるか?」
ヨウドが尋ねた。
「分からねえ」
「大都でも人さらいが出るって噂になってた」
ハンスはそこで、急に嫌そうな顔をした。
「それで大都へ入ってから怪しい人さらいがいるって聞いてな」
「まさか、捕まえに行ったの?」
リンが尋ねる。
「当然だろ」
ハンスは得意げに答えた。
「俺様は正義の味方だからな」
「で、公園でクッソ怪しい奴を見つけて」
「捕まえようとしたら――」
ハンスがヨウドを指さした。
「こいつだった」
全員の視線がヨウドへ向いた。
ヨウドが携帯缶をくわえるのをやめる。
抗議する。
「怪しくないである!」
「吾輩は、かっこいいのである!」
「飛行帽に眼鏡、迷彩柄のフェイスマスク」
「それに全身を隠すローブだぞ」
ハンスが呆れた顔をする。
「その格好で周りをうろついてたんだ」
「怪しくないわけねえだろうが!」
「潜伏行動に適した完璧な変装である」
「完璧に不審者だ」
「失礼である!」
再び笑いが起こった。
ヨウドだけは納得していないらしく、携帯缶を抱えたまま首を何度も横へ振っていた。
「まったく……」
ハンスは笑いながら、今度はミリアを見る。
「それで…」
「ミリア、お前たちはどうしてたんだ?」




