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3/3

(3/5)はち合わせ

大藤久美子と桜井佳奈は定時後に会社近くの居酒屋風イタリアンにいた。


「今日の会議って、めちゃくちゃでしたね」と桜井佳奈がワインを傾けながら笑う。

「石神課長は髪の毛が半分くらい抜けたかもね」と大藤久美子も言う。


今日の会議は何だったんだ。会議室で社長が挨拶した直後、奴、立花光太郎は言った。

「本質を理解できないのにAIを使え、とだけ言うトップは無能です」

その後の会議は荒れに荒れた。無能と言われた社長は怒りまくり、周りのメンバーがあたふたする中、奴だけは淡々と正論を述べていく。


「でも、面白かったです」

「本当にあいつは空気を読むと言う事が出来ない奴だから」

「大藤主任って、あの人とどういう関係なんですか?」

「他人よ。他人」

「でも、あの人、少しかっこよくないですか?」


その時、2人の若い男性が店にやって来た。2人は大藤たちのテーブルの隣に案内された。その内の1人が立花光太郎だった。


大藤久美子は思わず顔を隠したが、立花光太郎は全く気づいていない。桜井佳奈は直ぐに気づき驚いた表情を見せる。


「なあ、光太郎。今日、あのデザイン会社にAIシステムのプレゼンに行ったんだろう。どうだった?」

「別に普通だよ」

二人は大藤たちを気にせず会話しているが、隣なので会話は丸聞こえだ。


「かわいい子と仲良くなったりしないのかよ」

「ないよ」

「いや、せっかくの機会だから、素敵な出会いとかないかなって」


斜めを向いて顔を隠していた大藤久美子は、目の前の桜井佳奈がウズウズしているのに気づいた。ヤバい、止めないと。そう思い手を伸ばすより先に佳奈が隣に声をかける。


「あれ、もしかしたら、メデューシステムの立花さんじゃないですか。今日はありがとうございました」

立花光太郎が驚いた顔をしてこちらを見る。


それを聞いた立花の連れが嬉しそうに言う。

「今日、光太郎が行った港南デザインの方ですか?」

「はい、今日は立花さんに講師をしてもらい本当に勉強になりました」

大藤久美子は佳奈を止めようと袖を引いていたが、佳奈は久美子を無視して続ける。

「今日の立花さんはとてもすごかったです」

空気の読めなさ具合がね、と久美子は思ったが口にはしない。


「よかったら、一緒に飲みませんか」と立花の連れが爽やかに言う。

「え〜、いいんですか」と言いつつテーブルを寄せる桜井佳奈。止める間もない。


大藤久美子は立花光太郎と隣り合わせになってしまう。

「どうも」と立花光太郎が大藤久美子に言う。

「お疲れ様」と返す。

会話が続かない。


逆に、立花の連れと佳奈は昔からの知り合いのように楽しそうに会話している。


「光太郎。こんな素敵な人達がいるのに、何で直ぐに気付かないんだよ」

「どうせ周りが見えてないんでしょ」と思わず久美子は言ってしまう。

それを聞いた立花の連れ、川上史郎というらしい、は大笑いする。

「でしょう、こいつって、いつも目の前1メートルしか見えてないんですよ」

佳奈にも受けている。


「この前、部長が横に立っているのに、部長の資料ってセンス無いと言い切ってフロアが凍りついたな、光太郎」と川上史郎が言う。容易に情景が目に浮かんだ大藤久美子も大笑いする。


むちゃくちゃな1日だったけど、最後に皆んなで笑えるのは良い1日だ。

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