第9話 風呂は重要です
扉を開くとそこは脱衣場だった。
左側は荷物を入れておくロッカーや脱いだ衣類を入れておくカゴがあり、隣の棚にはバスタオルやフェイスタオルが用意されていていた。
右側には大きな鏡が備え付けられており、その前にはブラシやドライヤー、使い捨てカミソリ、シェービングフォーム、化粧水、乳液、保湿クリーム、ヘアキャップ、綿棒、コットンパフなどが揃えられている。
体重計や冷水機まであるんだが。
ドライヤーもそうだけど電気は通っているのか?
ボタンを押すとドライヤーから強い温風が吹いたので普通に使えるようだ。
「なんだその魔導具は?」
魔導具、やっぱりそういう世界観なんだよなぁ。
電器屋はこっちの世界だと魔導具屋になるのかな?
「ああ、髪を乾かすのに使うんですよ。ほら、こうやって。」
カイルさんに向かってドライヤーを向けて温風を当てると「おお。」と感嘆していた。
女性陣は説明してもないのに化粧水や乳液に気付ききゃあきゃあと黄色い声を上げていた。
さすが美に対して女性は目聡い。
あとでナビさんに化粧品の使い方教えてもらっておこう。
俺日焼け止めくらいしか塗らないからよくわかんないんだよな。
「次はお待ちかねの浴室ですよー。」
脱衣場一番奥のガラス扉を開ける。
ナビさんに聞いていた通り大きめの浴槽が1つと洗い場が3つそれに掛け湯用のお湯だまりもあった。
お、これって檜風呂じゃないか?
各洗い場には鏡が付いており、備え付けのボディソープと洗顔石鹸、シャンプーとコンディショナーもある。
天井も高くて開放感があって良い浴場だ。
俺も今度こっちの風呂に入ろうかな〜。
今日はみんながいるから入らないけど。
間違って女性のいる時間に入ったら社会的にも物理的にも死ねるからね。
一通り説明が終わったところでジェイクさんが意を決したように声を絞り出した。
「それでこの施設の使用料は1人いくらになるんだ?」
ジェイクさんの声にカイルさん達はハッと息をのんだ。
まるで現実に無理矢理引き戻されたかのような顔に俺は少し笑いながら答えた。
「1人銅貨5枚でいいですよ。」
「嘘だろーー!!!」「「「やったーー!!」」」
『なんでぇ、もっと吹っ掛ければいいもんなのによー。』
『吹っ掛けるのはよくありませんが、適正とは言い難い金額ではあると思います。』
ゴルドもナビさんもわかってないなー!
風呂に入れないなんて人生の半分は損してると言っても過言ではないんだぞ!
沢山のお湯に浸かる心地よさを身を以て体験してもらいたいと思うのは何も悪いことじゃ無いだろう?
そこに損得勘定なんて無粋な真似できるかっての!
風呂好き民族日本人を舐めないでいただきたいもんだ。
「しかしいくらなんでも安すぎないか?」
「ジェイクさん。俺の国では風呂は命の洗濯とも言われるくらい重要なものなんです。そんな素晴らしいものに今まで触れて来なかったというのは余りにも不憫!!」
「不憫…。」
「是非ともお風呂を満喫していただきたいので料金についてはお気になさらないでください。」
まあ解毒剤のお金多めに貰ってるし、そのおかげで開店できたところもあるしね!
サービス、サービスぅ!
「そこまで言ってくれるんなら入るしかないよね!」
「そうですね。私もはやく入ってみたいです。」
「それでは先に女性陣から入ってもらいます?」
男性陣に意見を聞くより先に俺達は女性陣につまみ出されてしまった。
はっっや!!!力つっっよ!!




