第8話 オプション
扉を開けるとそこは食堂兼酒場だった。
4人がけテーブルが4つとバーカウンターに椅子が5脚。
中央には2階に続く階段があり上の階が客室になっているということだろう。
こじんまりとしているがウッド調のテーブルや椅子は真新しいし雰囲気はいいと思う。
壁に花も飾ってあるし!
「凄いな。」
「えー、普通にその辺の町の宿屋より綺麗なんじゃない?」
え!そうなの?
いやー我ながら凄いスキルじゃないか?
だってこれ外出たらダンジョンなわけでしょ?
これはスキルレベルが上がったらもっと豪華なお店や施設が作れるってことだよなぁー。
お金、貯めたくなってきたかも!
「お部屋にご案内しますね、どうぞこちらへ。」
『コウ様、階段を上がって右側の2部屋を男性へ左側を2部屋を女性へと割り振ってください。部屋の作りはどの部屋も一緒になります。部屋の鍵はバーカウンター横、階段を上がる前のキーボックス内にあります。』
了解。
俺は各々に鍵を渡して部屋を充てがう。
「え!個室なのか?」
「問題ありましたか?」
「いやてっきり男女1部屋ずつだと思ったんだ。」
「そうだよねー!ダンジョンのど真ん中の宿なのに12000リルでごはん付きで更に個室は至れり尽くせりだよ!」
フィアさんが言うには近くの町の宿屋なら銀貨8枚から泊まれるが個室なんてものは無く相部屋が当たり前、他の町の宿屋でも個室があったとしても納屋のように粗末であることが多いらしい。
はぁー冒険者って大変なんだな。
プライバシーとか無いんだな。
その点、うちの《宿屋》は部屋数こそ少ないけど全部個室だし備え付けのベッドは大きめで190センチ近くありそうなジェイクさんでも足が出てしまうことは無いだろう。
各部屋にはベッド、鏡台、チェスト、クローゼット、手洗い鉢、ランプがある。
トイレは各階1箇所ずつあるし設備としては特に足りないことはないんじゃないかと思う。
一通り案内し終わって階段を降りようとしたときだ。
「すまない。」
ジェイクさんに呼び止められた。
「湯ももらえるだろうか?全員分でいくらだ?」
お湯?
お湯なんてどうするんだ?
『この世界では一般的には湯船に浸かる文化はなく水浴びや湯で身体を拭くのが主流です。貴族や王族、豪商はその限りではありません。清拭の為の湯は一般の宿では銅貨3枚程度です。』
えー、お風呂入れないの可哀想じゃないか?
せめてシャワーとかさー、女性もいるっていのに…。
いや、決して風呂を覗こうとかそんなことは思ってはないぞ?
カイルさんたち戦闘のあとだからあちこち土汚れとか血の痕があるんだよな。
なんとなくみんな埃っぽいし。
そのままで寝るのは嫌だよね。
ねぇ、ナビさん。お客さん用のお風呂って作れないの?
『《宿屋》のオプションから《共同浴場》を選択出来ます。6人ほどが同時に入れる湯船と洗い場が3つついております。男女兼用の浴場ですので入浴時間帯を調整することを強くオススメ致します。』
あ、そっか男女は別れてないからそのままだと混浴になっちゃうのか。
時間をわけて入ってもらえばいいよな。
消費MPっていくつ?
『200になります。また維持管理MP80は100に上昇します。』
『さっきアイツらに売った解毒剤の金があっただろう?足りるじゃねーか!買っちまえよ!』
あ、そう言えば金貨2枚まだあったんだ。
うわー、ギリギリ足りるんだー!
えぇい!!元はといえば貰いすぎのお金だしカイルさん達ははじめてのお客さんだから奮発しちゃおう!!
「ジェイクさんお湯ならもっと良いものがあるんでちょっと待ってて貰えます?」
「ああ。」
俺はそそくさと階段を降りるとバーカウンターにあるデカい酒樽に背を預けた。
多分風呂が出来るとしたらちょうど対面にある調理場の隣の壁だと思うんだよねー。
ここからなら何かがあったときその変化がよく見える。
金貨2枚でMPを買って、っと!
〈MP122→MP322〉
今度は【ダンジョンショップ】から《宿屋》、オプション、あった!《共同浴場》!
そぉれ、ポチッとな!
〈MP322→MP122〉
ボブン!!!
謎の白い煙が古いアニメみたいな効果音をたてて急に現れた。
煙がゆっくり霧散するとそこには先程までは無かった横開きの木の扉がまた現れた。
「うぉ!今度は何の音だ!?」
「コウ君また何かしたのか!?」
2階から全員がドタドタと降りてきた。
またとは何だか失礼な言い方だが事実だから仕方がない。
「いえ、皆さんに入ってもらうお風呂を用意してました。」
「「風呂!?」」「「お風呂!?」」
風呂という言葉に4人の冒険者の目が光った。
あっという間に彼らに囲まれた俺は身動きが取れなくなる。
「お風呂と言いましたか?この宿にはまさかお風呂があるというのですか!?」
「マジかよ!ここは貴族の家か何かか!」
「あたしら入っていいの!?」
「待て待て!湯ならともかく湯船に浸かるなど一体いくらかかると思っているんだ!」
ナイスなグイグイぷりー。
風呂に入るのが一般的では無いだけでやっぱりみんな風呂には入りたいんだよな!
俺も風呂はシャワーで済ませないで毎日湯船に入りたい派だからわかるよー!
「はいはい、皆さん落ち着いてー。」
コホン、とわざとらしい咳を1つ。
ふふふ、では皆さんの期待に応えて差し上げようかな!
俺は横開きの扉をゆっくりと開いた。




