第7話 《宿屋》オープン
『コウ様、ゴルドの言うことを肯定するのは本当に、本当に癪なのですがこちらの冒険者様方はこのままご滞在いただくのがよろしいかと思われます。』
確かにフランソワさんの解毒は出来たけど体力はまだ戻ってないだろうし、他の人達もどこかしら怪我もしている。
ここに居れば魔物にも襲われないようだし少し休んでいってもらった方が良さそうだな。
『【ダンジョンショップ】のスキルレベルが上がったことにより《宿屋》のオープンが可能になりました。』
宿屋までつくれるのか!
それは好都合だけども…
『なお、《宿屋》オープンに必要なMPは500です。』
全然足りないじゃん!
俺もうお金も持ってないし!
あ、さっき貰った金貨2枚はあるのか…。
『マスターさ、この世界では大抵の宿屋は前金制なんだぜ?俺の言いたいことわかるよな?』
つまりカイルさん達に先にお金を払って貰ってから【地獄の沙汰も金次第】でMPに変換して《宿屋》をオープンすればいいってことか。
うん、その意見採用!
カイルさん達をこのまま霧深い森の中に帰すのも可哀想だしね!
「あの、カイルさん。」
「ん、なんだい?えぇと…そう言えばまだ名前を聞いてなかったな。」
「あ、すいません。俺はコウって言います。ここでお店?をやってるんですが…。」
俺の言葉に4人は全員ギョッとした顔をした。
「ここでって、この迷いの森でか!?」
「そりゃあ以前は霧も魔物もほとんど出なかったがここ最近ではCランクの冒険者でも手を焼く危険な魔物が出るダンジョンになったんだぞ!?」
そ、そうなんだ…。
言われてみれば霧がずっと広がってる森なんか普通に迷子になりそうなのにさらに魔物まででちゃあなー。
「コウさん。この空間に張られた強力な結界を見るにもしや高名な神官様か賢者様でしょうか?」
「確かに魔物避けの強力な結界が張ってあるのが俺でも分かる。王都の神殿のような静謐な空気を感じると言おうか…。」
俺のスキルの話をそのまま正直にすると面倒なことになるかもしれない。
ここは適当にふんわりと誤魔化しておこう。
「いやいや違いますよ。ただちょっと変わったスキルを持ってて人目につくのも厄介だったんです。でもお金が欲しいものだからこういうダンジョンで冒険者相手にお店を開けば普通に物が売るより高く売れるし競合相手もいないしで一石二鳥かな?って感じでして。」
口から出たでまかせだったのが…そうか、ダンジョンの方が儲かるのかも。
ちらっと隣を見るとナビさんがピカピカと発光し、ゴルドもピッチャピッチャ音立てて床で跳ねていた。
何?キミたちのそれ喜んでるの??
「そうなのか?まあ金の為とは言え危険なダンジョン内で生計をたてるとは畏れ入るな。」
「冒険者のあたしらがそれを言う?それだけの実力があるってことよねー!羨ましい!」
「あはは…ところで皆さん、お疲れのようですし良かったら一泊していきませんか?俺《宿屋》も経営してるんですよ。」
「宿屋ってここでか!?いやもうキミはなんでもありなのか…。」
カイルさんはふむと顎に手を当てて俯いたがそれもほんの少しの間ですぐに顔を上げ、仲間の方に振り向いた。
「俺は泊まることに賛成だ。イレギュラーなことが多過ぎて色々とギリギリだしな。」
「あたしも賛成かなー。帰るのも骨が折れそうだし休憩くらいはしたいもん。ジェイクもフランソワも賛成だよねー?」
「わたしは依存ない。こらフィア、床に寝転がるんじゃない。」
「ではお世話になりましょうか。」
フランソワさんが代表して俺のいるカウンター前に立った。
近くで見ると本当に綺麗な人だなー。
まだ顔色はあまり良くは無いけど、お淑やかなおっとり美人って感じ。
ちくしょー、カイルさんいいなぁ。
俺も彼女ほしいなー。
「4人宿泊をお願いできますか?」
「はい、それではえぇと…、」
『カウンターの棚に帳面とペンが入っております。台帳代わりにお使いください。宿泊ですので夕食と朝食が付いて1人金貨1枚と銀貨2枚になります。』
へぇー、ごはんもちゃんと出るんだ?
まさか俺が作るってことはないよな?
ナビさんに言われた通りの料金を伝えるとフランソワさんは全員の名前と職業を台帳に書き、俺にお金を手渡した。
ふむふむ、金髪イケメンの細マッチョなカイルさん(21歳)は剣士、ふわふわ金髪グラマラス美女のフランソワさん(22歳)は魔術師、髭と左眼近くの古傷がワイルドなジェイクさん(35歳)は盾使い、ショートカットの白髪スポーティー美少女のフィアさん(16歳)は斥候なのか。
あれ?ゲームだと回復魔法の使える僧侶や神官がパーティーに居そうなもんだけど。
フランソワさんが兼任してるのかな?
『マスター!はやくその金使えよー!MPに変えろー!』
はいはい、わかってますよー。
「少々お待ち下さいね、今お部屋の準備を致しますから。」
カイルさん達にペコリと頭を下げ、俺は一度オーナールームへと引っ込む。
ステータス画面を開き今度は自分でお金を入れてみる。
❈❈❈
48000リルで480MPになります
よろしいですか?
❈❈❈
あれ?
4800MPじゃないの?
あとこの世界のお金の単位はリルっていうんだな。
なんか響きが可愛いな。
『あー、それはこっちの世界の金よりマスターの元いた世界の金のほうが魔素としての価値があったから仕方ねぇよ。とりあえずこれで合計500以上のMPあるんだしいいじゃねぇの。』
金貨2枚だけだと結局足りなかったのか。
前金制でお金貰っておいて良かったよ。
『はい、それに《宿屋》を開店させることで【ダンジョンショップ】のスキルレベルが上がります。維持管理のMP消費は80に増えますが毎日のMP回復量も100から200に増えます。』
そうかそれなら勿体なくないよな。
っていうかもうお金貰ってるからカイルさん達を《宿屋》に泊めないといけないし。
宿賃全てをMPへと変換。
〈MP142→MP622〉
では《宿屋》をオープン!
ポチッとな!!
〈MP622→MP122〉
たららたったーたー!
あー!なんか惜しい感じのファンファーレがまた聞こえた。
なんかドラク◯と半音違うんだよな!
「うわぁ!!!」「きゃあ!!」
カイルさん達の驚いたような声がこっちにまで聞こえた。
あちゃー、これもしかして向こうで急に部屋増えたってことか?
俺が恐る恐るドアの向こう側を覗くと《雑貨屋》のカウンター横、戸棚と樽の置いてあった場所に大きな木枠の扉が出現していた。
あれが《宿屋》に続く扉のようだ。
「あ、えっとお待たせしましたー。」
ヘラヘラと現れた俺にカイルさんが口をパクパクさせながら扉を指差す。
すいません、驚かせるつもりは無かったんです。
「ご案内しますね〜。どうぞ~。」
ごめんね、さっさと行こう。
俺も新施設が気になってるからさ!




