第41話 《不壊》と《諦念》
エルフの古代遺跡4日目
昨日は8階層を狩り場に魔物と戦っていたせいか今日は魔物の数が少ない。
「カイル、魔物の数が余り多くありません。少し移動しませんか?」
「そうだな。フィア、第9階層に向かう。先行してくれ。ジェイク、フランソワとコウくんを頼む。」
うーん、このダンジョンは10階層まであってダンジョンボスもいるということは実質このダンジョンの狩り場で一番割が良いのは第9階層である可能性が高いよな。
またあのゴールドスライムみたいなおいしい魔物が出てくれるといいなー。
念の為にいつでもスリングショットを使えるようにしておこう。
弾も腰に皮のホルダーを装備してるからすぐに装填できるようにしておいた。
【軽量化】のスキルでほぼ重みを感じないんだが腰にこんなにゴツいもの巻くのははじめてなのでなんだかこそばゆい。
「次の階層は何がいますかね?あと宝箱みたいなやつは無いのかなー。」
「そうだな。ゴールドスライムはよかったがお宝らしいものは何も得てないからそろそろ何かがあっても良い頃だな。」
「ふふ、期待してしまいますね。」
と和やかに進んでいたのだが、
先行していたフィアさんが偵察から帰ってきて話が変わってしまった。
「ちょっと!第9階層、魔物が全然いないんだけど!」
―――
フィアさんの言う通り第9階層は全く魔物の気配がなかった。
下の階層ではあれだけコウモリがいたというのに不気味だ。
それになんだか寒い。
足元から冷気が立ち込めてるような。
「ね?なんにもいないでしょ?」
「確かにな。最終回層間近で魔物の気配が無くなるというのは…。」
こういうのって嫌な予感するよな…。
「あの一度ショップに戻りませんか?なんだか嫌な予感が…、」
ゾワッ!
全身が怖気立つ。
ビィビー!!
ナビさんから警告音が鳴った。
さっきまで何も居なかったはずなのに急にどうして?
「…残念ながらもう遅いようです。」
突然フランソワさんが火の魔法を前方に放った。
無詠唱で放つ魔法は威力が下がるらしいが【火属性魔法威力アップ】のスキルがあるからかその威力は抜群だ。
奥の部屋から炎が直撃した何者かがこちらにむかってくる。
そいつは炎にまかれているというのに平然とこちら側に向かってくる。
「…!コウくん、キミはショップ内に退避してくれ!」
カイルさんに突き飛ばされる勢いで背中を押され俺はショップ内に転がり込んだ。
痛ぁい。
っと、そんなことを言ってる場合じゃないな。
ひとまず状況確認だ!
一体何がいるんだ?
❈❈❈
《森の守護者》が《不壊のゴーレム》及び《諦念のスノークイーン》と交戦中
❈❈❈
名付きが2体同時!?
嘘だろ!?
「カイルさん!みんな!無事ですか!?」
「参ったね。無事は無事だが時間の問題だろうな。」
はは、と乾いた笑いをあげるカイルさんの額には大粒の汗が浮かび上がっていた。
剣を持つ手が震えているのがわかった。
「ジェイク!フランソワを守りつつ後退!
フィア!退路の確保!フランソワ、そのまま火の魔法をスノークイーンに!」
カイルさんが叫びながら目の前のゴーレムの攻撃を避ける。
岩で出来た大きな腕から繰り出される攻撃など当たったらひと溜まりもない。
無理だ!
名付きが1体でも死ぬほど苦労したのに同時に2体だなんて!
くそ、考えろ、考えろ。
前回よりピンチだけどでも前回に比べたら今の俺に出来ることは多いはずなんだ。
「ナビさん、一度ここから離脱してまたここに戻ってくるスキルはある?」
『はい、《バックドア》がそれにあたるかと思います。前回にいた地点に戻ることが出来ます。今使うと迷いの森に出ます。その後またスキルを使うとこちらに戻ってこれますが…。』
よし、それだ!
俺は外で交戦中のカイルさんに向かって声を張り上げる。
「カイルさん!10分だけ耐えてください!絶対に戦況を覆してみせます!」
カイルさんは少しだけ俺に目線を向け微笑を浮かべた。
「うん。信じているよ。」




