第40話 上々の稼ぎ
エルフの古代遺跡3日目
昨日は第7階層奥まで進んだので今日は更に奥に行くことになった。
ん?
ステータスの日報画面?
昨日はほとんど変わってないから今度でいいよね。
「今日はコウモリ以外の魔物が出てくれるといいですね。」
「同感だ。さすがにコウモリだけのダンジョンでは無いと思いたいな。」
はは、と乾いた笑いをあげるジェイクさん。
俺に何かあった時の為に前方に居てくれているのだが昨日と何かが違う気がする。
「あれ?ジェイクさんなんか腰が昨日より真っ直ぐじゃないですか?」
「おお、そうなんだ。昨日1日戦闘もなく背中に大盾を担いでいたからか【リジェネーション】の効果で腰痛が良くなったようでな。」
【リジェネーション】にそんな効果が!
ってジェイクさん腰痛持ちだったんだ。
あのデカい盾持って走り回ればどこか痛くなるのも仕方がないのか。
「コウと出会ってからはポーションで古傷は消えるし、ほぼ毎日風呂に入れるようになってから身体の調子もいいしまさにコウ様々だな。」
バシバシと背中を叩かれた。
風呂はとにかくポーションやら回復魔法の効果は本来なら俺が居なくても冒険者なら受けられて当然の恩恵だと思うんだが。
やっぱり《アバランス神聖国》の法律は悪法だよな。
何とかしてこの法律の効力を無くさないと他の冒険者がどんどんしわ寄せを食らうよ。
そんなことを思いながら第8階層に到達したときだった。
「止まって。」
最前を歩いていたフィアさんが俺たちに向かって振り向くと唇の前に指を置いた。
何かいるようだ。
全員ランプの灯りを消す。
うわ、一気に暗い!
ぼんやりとした明かりでいいから欲しいな。
『お呼びですか、コウ様。』
おおナビさん!隣にいてくれるとほんのり明るい!
ただゴルドもだけど俺以外には見えないし声も聞こえないから明かりの恩恵があるのは俺だけなんだよな。
前にナビさんとゴルドと話してるところをフィアさんに見られてびっくりされたんだよね。
驚くよね、なにもないところで喋ってたら…。
フィアさんは俺の目の前からシュッと姿を消す。
凄いまるで忍者だ。
女性だからくのいちか。
少ししてミ゛ッ!と謎の声が聞こえびしゃっと何かが飛び散る音が聞こえた。
「もういいよー。」
フィアさんの声が暗闇からしたので再び明かりを灯す。
すると、部屋の中央にいたフィアさんの足元に黄金色のねばねばした液体が飛び散っていた。
「ゴールドスライムか。フィアお手柄だな。」
ナビさんゴールドスライムって?
『はい。ゴールドスライムはスライムの変異種で力こそ弱く経験値も余り得られませんが沢山の金貨や宝飾品を持つことから冒険者に人気のある魔物です。素早さが高く隠密スキルが高いので見つけにくいのが難点です。』
めっちゃラッキーじゃん!
もう何匹がいないのかな?
「コウに貰ったダガーのおかげで一撃で仕留められたよ!」
やはりフィアさんと【影打】のスキルは相性が良かったね。
「ほら、金貨!100枚くらいありそうだよ!あとほら魔石もあった!」
ポイッと魔石を投げて寄越された。
光の魔石だ。
へぇーこうやって落とすんだな。
なんかベタベタするからあとで拭いておこう。
「どうやらここの階層からコウモリ以外も出るようだな。気を引き締めていこう。」
「一応俺だけLEDランプ付けてコウモリ避けしますよ。」
「頼んだよ。」
―――
ゴールドスライムを倒してから約2時間が経った。
俺達は第8階層で集中的に魔物狩りをしていた。
今までが嘘のようにコウモリが出なくなり代わりにマミーやらスカラベと言った魔物が出るようになった。
ゴールドスライムは残念ながらあれから出現しなかったがスカラベがよく光の魔石を落とすので俺としては万々歳だ。
マミーも動きが遅く火の魔法が通りやすくて狩りに向いてる上にそこそこ経験値がいいというのでみんな喜んでいた。
特に戦果を上げていたのはカイルさんだ。
【ハイブースト】をかけるとマミーが一撃で屠れるとバンバン斬っていった。
魔力の込め方が上手いのか魔力が高いのかガス欠もしないでよくまあ倒すこと。
俺は足元に転がってきたマミーの包帯と銀貨をヒョイと拾ってバッグに入れた。
最初こそ魔物との戦闘はビビったがこれだけ圧倒的に狩ってるとそこまで恐怖を感じなくなるんだよな。
今じゃ邪魔にならないように戦利品を掻き集めながら歩き回ってるよ。
「コウ君、マジックポーションをもらえるかい?」
「はい!」
おっと補給の仕事もしないとね。
俺はカイルさんにマジックポーションを手渡す。
カイルはマジックポーションの蓋を外すと一気に飲み干した。
「うっく、…げふっ…。…痛ぁ…。」
やっぱりコーラ飲むとゲップ出るよね。
イケメンでもゲップは出るんだな。
でも美女は出なかったんだよな、おかしいな?
「魔物の湧き方が緩くなって来たな。そろそろ移動しよう。」
「そうですね。それでしたら今日はもう切り上げてもいいかもしれません。」
今カイルさんマジックポーション飲んだのに、無駄になったね。
―――
「今日は探索結果良かったですねー!」
「ああ上々だ。」
俺は戦闘に参加もしてないし戦いでの経験でレベルが上がらないけどみんなは1つ2つ上がっているらしい。
それになんと言ってもお金と魔石、そして魔物の素材!
お金は全員で均等に分けて魔石は俺の総取り、魔物の素材も持っていって良いとのこと。
適正レベルでの狩りはいいね。
迷いの森では結構怖い思いしたから儲けとか考えて無かったけど。
❈❈❈
本日の稼ぎ
金貨 22枚 銀貨3枚
光の魔石 31個
マミーの包帯 5本
スカラベの羽 4枚
ゴールドスライムの粘液 1本
❈❈❈
魔物の素材は全部《雑貨屋》でいいかな。
何かできれば儲けだ。
「ねえ、コウの店ではブーツは売ってる?」
「もちろんありますよ!あ、買ってくれるんですか?」
「そうだね、ちょっといまのが草臥れちゃって踏ん張りが利きづらいんだ。」
なるほど臨時収入もあることだし俺のところで買ってくれるってわけだ。
「今履いてるのは皮のブーツですか?」
「そう。結構気に入ってたんだけどね。」
なら早速《防具屋》だな。
あ、そうだ。
忘れてたけど《武器屋》と《防具屋》にも人員配置しないとな。
やっぱり専門のスタッフがいるほうが俺も困らないし。
俺はマジックポーションを取り出すと1本を一気に飲み干した。
「げっふー!よしこれでMP足りるな!音声認識。MP400を消費して《武器屋》と《防具屋》に人員配置!」
〈MP412→12〉
―――
「いらっしゃいませオーナー!」
「ようこそお客様!」
《武器屋》と《防具屋》が隣だからか新しく増えた自動人形は揃って出迎えてくれた。
今度は若い男性の人形で外見がそっくりだ。
同時に召喚したから双子設定なのか?
赤い髪の《武器屋》スタッフをテッド、青い髪の《防具屋》スタッフをラインと名付けた。
早く名前を付けないと誰かに持っていかれちゃうからね!
「今日はフィアさんのブーツを新調しに来たんだ。良いものを用意して上げて。」
「畏まりました!ではフィアさん先に採寸してもよろしいでしょうか?あとは素材や質感などご要望がありましたら何なりとお申し付けください。」
ラインに任せておけばフィアさんのブーツは大丈夫だろう。
さて俺はどうしようかな。
「オーナー!せっかくですから《武器屋》も見ていってください!」
「そうだね。ちょっと覗いてみるよ。」
テッドは現在ある武器を色々と紹介してくれた。
剣、槍、斧、槌、弓、手甲、鞭、杖…色々とあるけれど。
でもどれも俺に使いこなせそうに無いんだよな。
残念に思っているとテッドが何かを察したのか店の片隅から何かを持ってきた。
「オーナー、こちらの品はどうでしょうか?」
そう言ってテッドが差し出したのはY字型の枠にゴムが付いているスリングショットだった。
「確かにこれなら非力な俺でも扱える!でもさすがに弓みたいな殺傷力はないよね。」
それでも無いよりいいか。
上手く敵に当たったら少ないながらもダメージははいるもんね。
「恐れながらオーナー。武器は相手を殺傷させるだけのものではありません。武器は大切なものを守るためのものでもあるのです。けっしてお忘れなきないよう。」
「守るためか。」
それこそ今日のカイルさんみたいに俺が前衛で敵バンバンを倒せるんだったら良いけど、残念ながらそれは出来ない。
俺に出来る立ち回り。
求められてる立ち回りといえば。
「うん、そうだね。わかったよ。ああ、このスリングショット貰っていくね。」
テッドは恭しく頭を下げた。
「コウ!良いブーツ買えたよー!」
フィアさんが新しいブーツを履いてルンルンとはしゃいでいる。
金貨15枚でこれは安いよ!と嬉しそうだった。
鱗柄の茶色いブーツは少し重厚に見えたがフィアさん曰くとても軽くて良い感じ!なのだとか。
「それでね、コウ!付呪もお願いしたいんだけど頼める?」
「もちろん!何にします?」
「えっとね、【隠密】か【消音】が良いんだけど。」
おー、斥候が持っていると特に輝くスキルだな。
これどっちも付けるって言うのは出来ないのかな?
『片足ずつ別のスキルを付けることはできますが、両方に複数スキルを付けるのは難しいと思われます。』
そっか、じゃあ無難にどちらかのスキルのほうがいいか。
片方の足だけ音が消えても意味無いだろうし。
「【影打】とも相性良いですし今回は【隠密】でどうですか?」
「うん、いいよ!それでいくらくらいになるかな?」
『【隠密】を付呪するなら金貨2枚だな。あとは魔石は闇がいいだろうな。』
「金貨2枚でいいですよ。」
「え!安すぎない?大丈夫?無理しなくてもいいんだよ。」
ちゃんとうちの店でブーツ買ってくれてるからその辺はサービス価格だな。
ほら、裾上げサービスするようなもんだよ。
早速《衣料店》にある布・皮製品用の付呪台を使いに行く。
マジックバッグから輝きの良い闇の魔石を1つ取り出す。
「音声認識。金貨2枚で【隠密】を鱗のブーツに付呪。魔力定着コストは闇の魔石。」
俺が宣言すると闇の魔石にピキッとヒビが入り中から出た魔力の煙がシュルシュルとブーツ全体を包み込んだ。
そして見る見る間に煙が消え、割れた魔石の一部は踵に埋め込まれていた。
「はい!出来ましたー!」
【隠密】スキルが付いた鱗のブーツ。
我ながら素晴らしい出来だ。
何回か付呪をしたから何となくコツが掴めて気がするんだよな。
「ありがとうコウ!やったー!明日が楽しみだなー!」
そんなに喜んでくれると俺も付呪した甲斐があるよ。
俺も明日の準備をして来ようかな。
せっかくのスリングショットを手に入れたのに弾を補充してなかったからね。




