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スキル【ダンジョンショップ】で一獲千金! 〜地獄の沙汰も金次第で元の世界への帰還を目指す〜  作者: 瞬間移動


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第42話 敵愾心が上がる行為


「さて、コウくんが戻るまで頑張ろうか。」


俺は剣を構えて目の前のゴーレムと対峙する。

ゴーレムはただでさえ物理的な耐性が強い。

その上《不壊》の名を冠していると言う事は俺との相性は壊滅的に悪いだろう。


それにもう一体の魔物、スノークイーン。

こいつについてはこの周辺での出現が確認されていない魔物故に何をしてくるかわからない。

フランソワの火の魔法を嫌がったので火が弱点だとは思うんだが。

はじめて戦う魔物が名付きとは俺達はほとほと運がない。


まあそんな泣き言も言ってられないんだが。


「カイル!だめ、結界みたいなやつで退路が断たれてる!」

「わかった!フィア、ジェイクと一緒にフランソワを守りつつ援護しろ。」

「おいおい、カイル!ゴーレムをお前1人で相手にするってのか!」

「はは、そんなわけないだろう。」


一対一で交戦する相手では無い。

無謀な事など百も承知だ。


「コウくんが戻るまでなんとか持ち堪えるだけだよ。」


ゴーレムが再び俺に向かって腕を振り下ろす。

力は強いが動きは単調だ。

動きを追える限りは問題無い。


2回、3回と剛腕を振るっても攻撃がかすりもしないことに苛立ったのかゴーレムが声高に叫んだ。


煩い奴だ。


俺はゴーレムの腕の関節辺りに【ハイブースト】を掛けた状態の剣を振り下ろす。


ガキンっ!と金属の擦れる音がして攻撃が弾かれてしまう。

くそ、これでも駄目か。

いよいよ俺ではゴーレムを倒すことが出来ないようだ。


しかし目的は時間稼ぎだ。

それならばここからは回避に徹すれば問題無い。


何度も何度もしつこく攻撃をしてくるが、ここは我慢比べだ。

一撃でも喰らえばただではすまない、神経が擦り減る。


しばらく不毛な攻撃が続いていたが、今度はゴーレムが横から俺を攻撃しようとしているようだ。

相変わらずの単調な攻撃だ。


俺が後ろに回避しようとした。


だが、


急に足に力が入らなくなった。


見ると俺の右足は氷に覆われ石のように動かなくなってしまっていた。

見ればジェイクもフランソワもフィアも氷に足を取られて身動きが取れなくなっている。


ケタケタと耳障りな甲高い女の笑い声。

スノークイーン!

あいつ、部屋一帯に氷の魔術を張ったのか!



「まずい…!!」


ゴーレムの攻撃が直撃する。

くそ、なんとか一撃くらい耐えてみせる!



「音声認識!金貨2枚でカイルさんに【ハイプロテクション】!!」


ガンッ!!と岩を殴ったかのような鈍い殴打音がした。

痛みは全く感じなかった。

何故なら巨大な魔力の盾が俺の前に立ちはだかったからだ。

それをしてくれた人物はすまなそうに頭を下げた。


「す、すいません!遅くなりました!」

「いいや、時間ぴったりだよ。」


こんな時なのに俺は笑ってしまった。


「待ってくださいね。――金貨3枚で部屋の床に【魔法解除】!」


【魔法解除】の効果で魔力で出来た氷が一瞬で消え失せた。

身体の自由が戻る。


「ところで戦況を変える1手はあったかい?」


「もちろん!ここからですよ!ねえ?」


コウくんが後ろにあるドアに向かって声を掛ける。


そこにいたのは、



―――


「《夜の一撃》!何故ここに?」


カイルさんは驚いたようだった。

そりゃあ驚くよね。


俺は《フォロワーブック》の情報からダンジョンにいると分かった《夜の一撃》のメンバーの元にダンジョンワープし、そのあと新スキルであるバックドアで再び戻ってきたのだ。

増援って敵にやられるとめちゃくちゃムカつくよねー。

てへ、俺やっちゃった!


ただ、ごめん。

《夜の一撃》には《森の守護者》を助けるために名付きを一緒に討伐してほしいとしか言ってないんだよ。

あとで絶対に俺のこととか説明するからね。


「話は後だ。てめぇら名付きだ。死ぬ気で狩るぞ!」


スヴェンさんがゴーサインを出すとミーシャさんがスノークイーンに殴りかかり、シリカさんが彼女の援護に魔術を放ち、ラーシュさんがゴーレムの矢面に立つ。


「このゴーレムは普通より物理攻撃が効かない。関節を狙ったんだが【ハイブースト】を掛けての攻撃でも歯が立たなかった。」


マミーを一撃で切断出来る威力で全く歯が立たないとは防御力エグすぎるだろ。


「ああ。だが動きは鈍そうだ。名付きを同時に相手に出来るほどこっちの戦力に余裕はねえぞ。」


「ならば妾に任せてもらおう。」


バン!と勢いよくドアが開いて現れたのはなんとマリさんだった。


「マリさん!今戦闘中で危ないですよ!」

「なんの、友のピンチじゃ。助太刀致すぞ。」


マリさんは何かぶつぶつ唱えたかと思うとゴーレムが巨大な水泡に包まれた。

ゴーレムは何が起きたのか理解できないのか水の中で藻掻いている。


「ホホホ、無駄じゃ。石人形よ、しばらく水遊びを楽しむと良いぞ?」

「すげぇ。」


スヴェンさんの呟きにマリさんはドヤっと胸を張った。


「しかしコウよ。これは一時凌ぎに過ぎぬ。はよう向こうの魔物を倒すとよい。」

「ありがとうマリさん!」


―――


「あら?あらあらあら?ニンゲンが増えた?増えたの?」


スノークイーンは宙を優雅に浮きながらこちらを見下ろした。

陶磁器のように白い肌、氷のように透き通った長い髪、宝石のように光り輝く瞳、全てが美しく芸術作品のようだった。


「気をつけてください。スノークイーンは【魅了】の力を持っているようです。」


危なっ!!

俺今スノークイーン見てちょっとメロついてた!


「金貨2枚を消費して全員に【魅了耐性】!」


スキルを発動すると部屋全体に薄いベールのようなものがかかった。

あ、全員っていったからスノークイーンにもゴーレムにも判定あるのか。


まあこれで魅了対策は大丈夫だろう。

この世界の【魅了】がどこまでのバッドステータスなのかわからないけど同士討ちとかはじまったらまずいもんな。


「あらあら?つまらないことをするのね?まあいいけれども…。」


ニヤニヤと厭らしく笑う顔はヤバいやつの気配がめっちゃする。

なんか虫とか潰して喜んでそうだもん。


「でも良かったわぁ。男の子が増えたのね。私男の子を相手にするの大好きなの。」


これ俺もカウントに入ってる感じ?

アルラウネもそうだったけど女型魔物って顔だけは美人なんだよなぁ。


「ジェイク、スノークイーンを引きつけろ!フランソワは魔力を回復!フィアはフランソワを守れ!」

「ラーシュ、シリカを守れ。ミーシャ遊撃。シリカてめぇも遊撃でいい。」


各リーダーの指示がとぶ。

おー、なんかカッコいいな。


あ、俺はどうしよう。


「コウくん、」「コウ」

「「俺と来てくれ。」」


全く同じタイミングで同じことを言ったもんだからカイルさんとスヴェンさんが顔を見合わせた。


俺のモテ期きたかな?


「カイルさん、スヴェンさん。俺は補助に回りますから好きに戦ってください。」


オンラインRPGならそこそこやってきたからバフやデバフをかけるタイミングなら任せてくれ。

冷静にいられれば大丈夫、なはず。


「頼りにしてる。」

「ヘマするなよ。」


カイルさんが剣を、スヴェンさんが弓を構えた。

二人が同時にスノークイーンへの襲いかかる。

ジェイクさんを攻撃していたスノークイーンが2人に気付き攻撃を捌くが盾役1と攻撃役2は名付きとは言ってもしんどいはずだ。

遊撃手でミーシャさんとシリカさんが不規則なタイミングで攻撃してるしね!


『マスター、スノークイーン相手に【分析】使ってみろ。行動パターンとかあれば弱点もわかる。』


おお!それはいいね!

【鑑定】の戦闘用みたいなやつかな?

では早速!


「音声認識!金貨1枚でスノークイーンを【分析】!」


❈❈❈


《諦念のスノークイーン》


無効属性 水・氷

耐性属性 風・闇

弱点属性 火


氷の魔術で自由を奪い、相手の生命力や魔力を吸い取る攻撃を得意とする

精神に異常をきたす攻撃をすることもある


❈❈❈


うわ、エグい。

精神異常系って【魅了】の事か。


「みんな!スノークイーンの弱点は火!水、氷は効かない!風と闇も通りづらい!ドレイン系の攻撃もしてくるから気をつけて!」

「了解。シリカ、お前は下がれ!ゴーレム戦に向けて温存!ラーシュ!シリカを引き続き守れ!」

そう言えばシリカさんは風属性と闇属性の魔法を使うのか。

両方共耐性有りだもんな。


「フランソワ、すまないが頑張ってくれ!援護に回る!」

「大丈夫ですわ!カイル!私に任せてください!」


フランソワさんが高速で呪文を詠唱している。

火属性の魔法は3連続で唱えないといけないから

舌が攣りそうだな。


炎の槍がまっすぐスノークイーンへ放たれる。

スノークイーンはジェイクさんに対抗するのに気をとられたのか魔法が直撃した。


「やった!フランソワさんすごい!」


弱点属性が直撃ってこれはだいぶ体力削れたんじゃないか?

うまくすれば倒してるかも?


「フランソワ大丈夫?」

「ええ、フィア。大丈夫です。魔力をほとんど使ってしまって、疲れただけですから。」


そう言っているがフランソワさんの顔色は真っ白だ。

魔力切れを起こしてるんだろう。


「フィア、フランソワを連れて後退してくれ。フランソワ、休んでいてくれ。」

「ラーシュ!女共がそっち行くから全員守っておけ!」

「フィアさん、あとでこれをフランソワさんに。」


俺はフィアさんにマジックポーションを渡しておいた。

少しでも回復しておいたほうがいいだろう。


「スノークイーンはまだ生きてるよ!男共手を貸して!」


ミーシャさんが叫ぶ。

うわ、まだ生きてるのかよ!


スノークイーンは身体中のあちこちから黒煙をあげているが目は炯々と光りその顔には怒りが浮かんでいた。


「痛いわぁ…。じゃあ次はこっちの番、ね?」


スノークイーンが何か仕掛けてくる!

防御系のスキルを発動して捌いてやる!


スノークイーンの攻撃対象は……ミーシャさん?

なんで敵愾心を無視した?

いや、それより今は!


「金貨2枚でミーシャさんに【ハイプロテクション】!」


スノークイーンとミーシャさんの間に巨大な盾が展開された。


だが、


スノークイーンは何事も無いようにミーシャさんの身体に手を触れた。


「【生命力奪取】」

「!!!」


ガクンとミーシャさんが膝から崩れ落ちそのまま床に倒れた。


「ミーシャ!!」


な、なんで…

今確かに【ハイプロテクション】が発動していたはずなのに


『《諦念のスノークイーン》の【生命力奪取】及び【魔力奪取】には防御系スキルを無視する《貫通》効果が付与されているようです。また体力低下時に行動パターンが変わり、敵愾心を無視した行動を取るようです。』


くっそ!

そんなのありかよ!

【絶対回避】の方が確実だった。

俺の判断ミスのせいでミーシャさんが!


「俺が回復に回ります!スノークイーンは敵愾心を無視した行動をとっています!《貫通》効果も持ってるから回避重視で!」


ミーシャさんは青い顔して瀕死状態だった。

外傷はないけど生命力が激しく低下しているみたいだ。

俺はマジックバッグの中から気付け薬を取り出すとミーシャさんの鼻に近付けた。


「うっ、く…。」

「気が付きましたか?ポーション飲めますか?」

「う、ん…。」


ゆっくりとポーションを飲めてるから大丈夫そうだけどすぐには回復しなそうだ。


「ミーシャさんもなるべく後退してください。あとは俺たちが、」

「コウ!下がれ!」


スヴェンさんの鋭い声が飛ぶ。

振り返るとスノークイーンが俺とミーシャさんに追撃しようと爪を振り下ろそうとしていた。



え、2人同時に守るスキルって…?



「ちっ!…コウ、ミーシャ!…伏せろぉ!!」


スヴェンさんが光の矢を放った。

そのレーザーのようなビームは迷いの森で見た時とは比べ物にならない巨大な光だった。

放射された熱のあまりの熱さに近くにいるだけの俺ですら恐怖を感じる。


光の矢に穿たれたスノークイーンの身体は一瞬で赤い光となり消失し、金貨の雨を降らせた。


「すごい!やったよ、スヴェンさん!」


「ぅ、…が、…かはっ……!」


膝を着いてスヴェンさんが口から血を吐いた。

口の端から顎につたい流れた血が床へと落ちる。


え!嘘でしょ!なんで!?

スヴェンさんは攻撃されてないじゃないか!


「大丈夫ですか!スヴェンさん!」


スヴェンさんの様子がおかしい。

汗が凄いし、目の焦点があっていない。

吐血もしてるし絶対ヤバい状態だ。


『強い魔力を使ったことでの反動です!脳と身体にダメージが跳ね返って危険な状況です!早く回復を!』

『回復魔法を使え!あー、これだとコストが高いが仕方がねえ!金貨20枚で【リヴェレットキュア】だ!』

「金貨20枚でスヴェンさんに【リヴェレットキュア】!」


俺の手から淡い白い光が現れスヴェンさんの身体を包んでいく。


『【リヴェレットキュア】は対象者の受けた肉体精神ダメージを一定の時間まで巻き戻す回復魔法です。』


応急処置の中では最上位ってことだよね?

オッケー任せて!


「うぐ、コウ!すまぬが妾ももう限界なのじゃ…。」


そうだ!マリさん!

ゴーレムを封じていたマリさんの身体が透明になっている。

人間の姿の身体を維持してられないレベルまで頑張ってくれていたんだ。


マリさんは目の前で水溜まりの姿になってしまった。


『コウ、すまぬ。一度戻る。健闘を祈るぞ。』


そしてそのまま姿を消してしまった。


ゴーレムは水泡の中から解放されると号砲の雄叫びをあげた。


これは、…ヤバいな。


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