第36話 割に合わない
「ところで今いるダンジョンへは依頼か何かですか?」
「いいや、力試しと金策だな。《グリーフォの町》から一番近い人工ダンジョンはここだったから来てみたんだ。」
前に来た時は2階層までしか行けなかったからなぁ。と遠い目をするカイルさん。
このダンジョン、多分だけど広いばっかりで実入りなさそう。
さっき《ダンジョンマップ》で確認した時広い部屋と通路ばかりでお宝のありそうな部屋とか隠し部屋っぽいのが無かったんだよね。
まあ俺のスキルで分かるのはあくまでもダンジョンの構造だけわかる白地図状態だからもしかしたら何かはあるかもしれないけど。
コウモリ系の魔物ばかり出るらしいしレベル上げの狩り場としてもどうなんだろう?
効率良いのかな?
ここはエルフの古代遺跡なんて名前だから何かしらお宝、アーティファクト的な物があってもいいと思うけど。
たまにあるよね、はずれダンジョンとか行かなくても問題のないスルーされるダンジョン。
「そうだ、コウくん。キミのスキルでこのダンジョンのマップを作ってもらえるかな?」
「ああ、良いですよ。銀貨1枚でダンジョンマップを転写!」
すると10枚の地図がテーブルの上に現れた。
「ほう、こうやって地図が出せるのか。」
ジェイクさんがよっこいしょと言いながらカイルさんの隣に座る。
なんか当たり前のようにジョッキ片手なんですけど。
「このダンジョン10階層もあるんですね。踏破するまで時間かかりそう。」
「まあダンジョンだからな。10階層ならまだマシだろうな。」
へー、そんなもんか。
ゲームならこの手のダンジョンで10階層もあったら飽きる。
ぱっと見てギミックもなさそうだし、景色も変わらないのがねー。
「わたしたちがさっきまで戦闘をしていたのがこの辺だったな。」
ジェイクさんが指差したのは2階層の終盤辺り、もう1つの大部屋を通ったら下へと降りる階段があったようだ。
「じゃあ明日はここから冒険を再開します?俺のスキル《自由移動》でピュンって行けますよ。」
「コウくんといると楽を覚えてしまいそうだ…。」
「え、じゃあ歩いて元の場所にいきます?現在地第1階層の中盤ですけど?」
「う、いや…もうコウモリ相手は……。正直、うまみが無いんだ…。」
素直でよろしい。
っていうかコウモリは経験値もお金もいまいちなのね。
俺はテーブル前の第2階層地図に指を滑らせる。
《自由移動》はマップ上の指名した場所に移動出来るスキルだから頭の中に浮かんだマップでもこうやって紙に転写したマップでも大丈夫なんだよねー、と。
この辺かな?
一度タップしてマーキングしておこう。
❈❈❈
このダンジョンにはボスがいる為
《自由移動》が出来ません
❈❈❈
「……あの、このダンジョン…ボスがいます。」
「ん?ああ周期的に復活するからまあいるだろうな?」
「俺のスキルでマップ上自由に移動出来るのはボスが居ない時に限るんです。」
「あー…。やり直し…か…。」
カイルさんとジェイクさんがガクッと音がしそうな勢いで肩を落とした。
「す、すいません!まさかボスが居るとは知らなくて!またコウモリゾーン通らないといけなくなるとは!」
「いや、構わないだろう。わたしたちもあの時点でやる気が無くなって撤退する寸前だったしな。」
「ジェイクの言う通りだ。キミが気に病むことはないよ。」
とはいえ絶対テンションだだ下がりだよな。
うまみのない雑魚しか居ない階層のやり直しは勘弁したいよね、わかるよ。
んー、なんとかしたいな。
簡単に倒せる方法、それか襲われない方法何かないかな…。
…そう言えばさっき俺がダンジョンにいた時はコウモリたちに襲われなかったな。
「あのもしかしてあのコウモリの魔物って光に弱かったりします?」
「光か。確かにこのダンジョンは暗いから光源が強ければ嫌がるかも知れないな。」
「さっき俺LEDランプ…ああ、凄く眩しいランプを持って歩いてた時は遠巻きにコウモリはいたんですけど一切襲われなかったんです。なのでもしかしたら、ですけど。」
「試してみる価値はありそうだね。コウ君、そのランプを貸してもらっても良いだろうか?」
「もちろん構わないですよ。今持っています。」
―――
よし、とりあえず部屋にあったランプを持ってきてみたぞ。
10個もあれば充分だろう。
「俺ちょっと襲われないか実験してみます。」
「それなら俺も行こう。」
ジェイクさんはお酒を飲んでしまっているし、女性陣はお風呂に入りにいってしまったので俺とカイルさんだけでダンジョンに戻ってみることになった。
「第1階層でもコウモリ共は群れで襲ってくるから何かあったらすぐに戻れるようにするんだ。いいね?」
「了解です。」
カチッと手持ちのLEDランプとバッグにぶら下げたLEDランプを点灯させる。
「これは明るいな!そう言えば迷いの森でも同じものを使っていたね。」
「そうですね。あー、今思い出しましたけどあの時の1個置いてきたままだな。」
俺はカイルさんの分のランプも明かりを点けてあげた。
2人分のランプが点いたので相当明るくなる。
コウモリがギャーギャーと騒ぎ何処かにいなくなるのがわかった。
「コウくん、これは正解だったかもしれない。」
「俺もそう思います。なんなら今のうちに第2階層まで行っちゃいます?魔物が出ないならただの広い廊下ですよ。」
「うん、いいね。それじゃあ付き合って貰おうかな。」
カイルさんはニコッと笑うと金髪を靡かせ風のように駆け出した。
あ、イケメン爽やか走りやめてもらえます?
なんか生き物としての差を感じるので!
あと俺そんなに早く走れないんですけどぉ!?




