第33話 帰還方法と与えられた使命
《夜の一撃》一行のおもてなしは自動人形たちに任せて俺はオーナールームに戻っていた。
ナビさんとゴルドが話があるんだと。
「それで?話ってなに?」
『お前まだ現代に帰りたいって思ってるか?』
お!その話にようやくなったか!
後でって先送りにされて以降全く出なかったから忘れられてるのかと思ったよ!
「もちろんだよ!ただまあまだやりたいこともあるしすぐにとは思わないけどね。」
カイルさんのユニークスキルとかシリカさんの呪いとか放置して帰るには後味が悪いしせめて打開策くらいは提示しておきたいところだ。
『ああ。どうせすぐには帰れねえよ。まだ現代に帰るための条件を満たしてないからな。』
「その条件って?」
俺は冷蔵庫から取り出したばかりの牛乳をゴクリと飲んだ。
あー美味い。
瓶の牛乳って余計に美味しく感じるよね。
『まず1つ目金を貯めること。結論から言うと【地獄の沙汰も金次第】のスキルで現代に帰れるからな。』
「薄々思ってはいたんだけどやっぱりチートだよね、ユニークスキルって。ちなみにいくら?」
『10兆リルだ。』
ぶーっ!!
思わず俺は口の中の牛乳を吹き出してしまった。
ちょびちょび飲んでた分少なくて済んだのは不幸中の幸いだった。
「そんな大金無理だろ!国でも作るのか?」
『勘違いするな。今のスキルレベルでならってことだ。スキルレベルが上がれば金額も適正になる。』
「もしかしてこのスキルってレベル低いうちに高レベルの魔法とか使おうとするととんでもない金額取られるってこと?」
『そうだ。今のレベルだと高レベルの魔法や難易度の高い奇跡だと相当の金が必要になるな。』
「例えばシリカさんの呪いを消すとかは?」
『あー…10億リルくらいかな…。』
前に猛毒状態で死にそうだったフランソワさんを【地獄の沙汰も金次第】のスキルで助けたら100万円(こっちでいうと1000万リル)はかかると聞かされていたが、シリカさんにかかった呪いはそれより遥かにヤバいものなんだな。
「レベルはどうしたら上がるの?」
『どんどん金を使えばいいんだよ。今までも上がってただろ?』
なるほどねー。
今まで何となくふわふわした知識で使ってたけどわかってきたぞ!
今できることはどんどんスキルを使う!強くなる!
そんなとこだよね。
『帰還するための2つ目以降の条件ですが、こちらはコウ様がこちらに召喚された理由にも関係があります。』
おお!ついにその理由がわかる時がきたか!
ドキドキ、俺ちゃんと理由があって召喚されたんだな!
『2つ目、この世界の冒険者の力になること。主に【ダンジョンショップ】のスキルで力になることを推奨しています。』
「ああ、俺のスキルさえあれば高難度ダンジョンでも探索が行き詰まることは少なくなりそうだもんな。でもそれが俺が異世界に呼ばれたのと関係あるのか?」
『少し話が長くなりますが、よろしいですか?』
「うん、いいよ。むしろここで話切り上げられても気になっちゃうからさ。」
ナビさんは少しずつこの世界について話始めた。
まずこの世界は光と闇のバランスが崩れているそうだ。
闇の勢力、つまり人間や精霊、神に害を為す魔物や魔族の方が圧倒的に強くて数も多いんだって。
人間側も抵抗してるみたいだけど政治的にも一枚岩じゃなくてぶっちゃけ上手くいっていないらしい。
《アバランス神聖国》の法律、神官や僧侶など回復魔法を使う人材の召し上げとかね。
この悪法なんとかならないのかな?
それもあって各国にいる冒険者の質が悪い、もしくは足りなくて悪意に染まった魔物が野放しになってるのが現状らしい。
《森の守護者》や《夜の一撃》なんかのCランクパーティーは貴重とは聞いてたけどまともな戦力になるこの辺りのランクの冒険者は故障率、死亡率が高いらしい。
だから金は余計に稼げるらしいけど。
正直今の冒険者は死んでもいい人がなるっていうくらいブラック環境らしい。
冒険者が足りない地域なんかだと戦争奴隷や犯罪奴隷を無理矢理駆り出すこともあるんだと。
そんなに殺伐としてるのかこの世界の冒険者事情…。
そりゃあ俺のスキルが火を吹くわけだ。
死亡率が格段に改善できるとは思うよ、うん。
その故障率、死亡率が高いせいで上位冒険者が育ってないのも問題だそう。
ファンタジー世界物によくある伝説の冒険者、Sランクの存在はこの世界には残念ながら居ないらしい。
最高ランクはAランク止まりでレベルは70くらいだとか。
強いは強いけど色々なゲームをやってきた身としてはちょっと物足りないよな。
「あのさ、英雄とか勇者っていないの?」
俺の言葉にナビさんとゴルドが深い溜息をついた。
え?え?どうしたの?なにその反応。
『元々闇の勢力に対抗する為に神々がそれぞれの力を人間にユニークスキルとして付与しはじめたのは英雄や勇者を生み出すためでした。』
え!その流れだと俺も英雄?勇者?
『マスターはちょっとイレギュラーな存在だから置いておく。』
置いておかれちゃったよ。
『ですが人間側がその力に気付かなかったり、神々の力が人間側にデメリットを与えてしまったり…上手くいかなかったのです。』
あー…今カイルさんとスヴェンさんが思い浮かんだ。
あの2人も神様たちに選ばれた英雄や勇者候補なわけね。
『特にカイル様にユニークスキルを与えた神は高位に位置する運命の神メビウス様、勇者となるに相応しい力を持つはずなのですが。』
神様の名前珍しくカッコいいじゃん。
そんでもってなによ。
不穏…。
『あろうことか運命の神は力を与えた人間に執着し自らのものにするために魂に呪縛をかけようとしています。このままでは勇者の生誕は絶望的、カイル様は死にその魂は神に永遠に囚われることになりましょう。』
神様病んでるー!?
なんでそんなことになってるんだよ!
カイルさん知らない間にヤンデレに執着されてるよ!!
『それでますます光の勢力が弱くなっちまって仕方がないからって最高神様が異世界の人間を引っ張ってきてまだ人間に力を与えていなかった俺たちの神がお前にユニークスキルを与えたんだ。俺達の神のスキルは片方だけだと扱いが難しいが異世界人にはユニークスキルを複数持たせることもできるからな。』
「え、つまり俺ってヤンデレ拗らせた神の尻拭いするためにこっちに喚ばれたってわけ!?」
『申し訳ありません。』『ごめんなー。』
召喚理由よ…。
俺の初期配置が迷いの森だったのもカイルさん一行が居たからなんだろう。
「大体なんで運命の神はカイルさんに執着するんだよ?そりゃあカイルさんイケメンだけど他にもいい男はいるんじゃないか?」
『運命の神は500年に1回、地上に人として生を受け人間というものを知るという仕事があります。』
『他の高位の神もたまにやるな。』
『前回はその…カイル様の妹として生を受けまして…。』
『神は仕事で人間になってるからいつでも神として天界に戻れるようにその命は短命なんだ。たしかカイルの妹として生まれた時は10年生きなかったな。』
『魔物の襲撃を受けて落命したそうです。その時
一緒にいたカイル様は酷く傷付き絶望したようです。その時の表情が大変好みでゾクゾクしたと…。』
運命の神意地が悪過ぎる!!
ヤンデレ妹に死ぬほど愛される兄!!
かわいそうなカイルさん、次あったら少し優しくしてあげよう…。
あ、でもフランソワさんいるしやっぱり優しくしなくてもいいか。
『そして3つ目の条件ですが魔王を討伐することです。』
「え!俺がやるの!?」
『そんな訳ねーだろ。英雄とか勇者にやらせろ。』
そんなこといっても一番の勇者候補はヤンデレ神に呪われてるし、スヴェンさんやまだ見ぬユニークスキル保持者は自分のスキルを知らなくて英雄になれていない。
下手をすれば冒険者にもなっていないかも…。
結局俺が動くしか無いんじゃないのか?
「せめて英雄候補の人達が自分のユニークスキルを理解できたら…。」
『スキル【神託】で神に与えられた使命やユニークスキルを正しく理解できます。』
『使えるのは神官や高レベルの僧侶、巫女のような神に使える役職だな。』
「《アバランス神聖国》のせいじゃねーか!!」
もー!!どうなってんだよ、この世界は!!




