第28話 上客からの紹介
全くカイルのやつめ。
何処に店があるっていうんだ。
ホラ吹きやがったな。
俺達《夜の一撃》は迷いの森で名付きボスを《森の守護者》が討伐したという報告を受けてその後の様子を見に来たわけだが。
森は前のように魔物が少ない比較的危険の少ない狩り場に戻っていた。
〈《森の守護者》、《血吸いのアルラウネ》討伐〉
Cランクで歯が立つ相手じゃないっていうのは同じランクである俺達が誰よりも理解してるんだ。
かと言ってギルドカードに記載された討伐項目は偽造出来ない。
しかも?
この迷いの森に店を構えている賢者のガキに助けて貰っただと?
カイルのやつにギルドカードの履歴を見せるように言ったら確かに知らないやつの名前が確認出来た。
〈《森の守護者》にコウが加入しました〉
《グリーフォの町》にこんな名前のやつは居ねえ。
それにポッと出のやつがCランクの討伐に加われるはずもない。
まったく、何者なんだ?
このコウってやつは。
―――
「ようこそ!いらっしゃいませ!」
……は?
いつの間にか俺達は見知らぬ店の中にいた。
突然別の空間に移動したような。
この感覚は昔ダンジョンのワープトラップにやられた時と同じだ。
あの時は散々だった。
なにせ気が付いたら魔物たちの巣の中だったんだからな!
「ここは、何処だ?」
俺は目の前の黒髪黒目のガキに聞く。
敵意は無さそうだが、何事も用心だ。
いざという時のために仕込んだナイフに手を掛ける。
「あのカイルさん達に紹介された方々、ですよね?」
「は?じゃあお前がコウか?」
こんな人畜無害そうなガキが、賢者!?
あの馬鹿カイル俺を舐めるのもいい加減にしろってんだ!
このちんちくりんの何処が賢者だよ!!
「あーよかった!やっぱりそうだ!お客さんが来なくて暇してたんですよ。あ、良かったらそっちに食堂とバーカウンターがあるのでどうぞ。」
「こんなところで酒が飲めるのか?」
おいおいラーシュ!
何食い付いてるんだ!
「あたい腹減ったよ。なんか食わせてくれる?」
ミーシャ!てめえはさっき飯を3人前も食っただろうが!!
「………のど、渇いた…。」
シリカ…お前だからさっき水飲んでおけっつっただろうが…。
「せっかく来ていただいたんで好きな物食べてください。あ!サービスはしますけどお金はちゃんといただきますからねー!」
鼻歌でも歌いそうなくらいの上機嫌さだな。
ずいぶんと脳天気なやつだ。
「ほらほら、スヴェンも行くよ!」
―――
スヴェンと呼ばれていたこの男の人。
この人がカルマ12の悪人か。
確かに目つきが鋭くて間違いなく日本にいた頃の俺ならお近付きにならないタイプの人種なんだよな。
カイルさんとはタイプが真反対のイケメンだ。
カイルさんが金髪の王子様ルックスならスヴェンさんは悪の幹部タイプなルックスだからね。
仮面ラ◯ダーの悪い方にいそうな。
ただこの世界にも黒髪の人が居たのはちょっと親近感だな。
「いらっしゃいませ。お客様、どのようなお酒をお作り致しましょうか?」
キール、久しぶりにお酒を飲む人が来たから張り切ってるな。
なんかウキウキして見えるもん。
「おう!とりあえず強いやつがいいな!カーっと熱くなるやつな!」
ガハハと豪快に笑ってるゴツい鎧を着てる人は騎士みたいな格好だけどなんだか物語の中に出てくるようなタイプじゃないな。
ジェイクさんよりなんかムサイし。
「あたい肉がいいー!肉もってこーい!」
こっちの金髪黒ギャルはフィアさんより更に小柄(150センチないと思う)なのにすごいワイルドな注文してるよ。
「飲み物、ください。」
こっちの子は小柄というよかまず年齢が幼そうだ。
12、3歳?中学生、いや小学生くらいか?
目つきの悪い男、ゴツい騎士、黒ギャル、幼女のパーティー…犯罪の匂いしかしない。
カイルさんたちがRPGの王道みたいな編成だから落差がエグいなー。
同じ男2女2のパーティーなのにね。
とりあえず肉料理と飲み物ね。
はいはい。
今行きますよー。
俺は厨房に行くとみんなには見えないところでステータス画面を開き《人員配置》をこの《食堂兼酒場》に指名する。
今回はMP200ちゃんとあるぞ。
すると厨房の片隅から女性の自動人形が現れた。
「オーナー。仕事でしょうか。」
「うん。料理を運んだり注文を取ってくれるかな?」
「承りました。」
金髪ショートカットのクールなウェイトレスさん人形だな…。
名前は…うん、リリーで。
さっさと手際よく大皿のローストチキンとレモネードを運んでいくリリー。
「お待たせ致しました。こちらローストチキンの大皿とレモネードでございます。」
「あはー!!きたきた!!」
「おいしそう…。」
女の子二人組は喜んで食べたり飲んだりしてるな。
「かー!!!うめぇ!!なんだ、あんたの出す酒は美味いな!!もう1杯頼む!」
「畏まりました。」
あっちも酒が進んでるな。
そんでもって問題はこっちの、スヴェンさんだよな。
さっきから俺のことじっと見てるだけで注文もしないんだよな。
「あの、スヴェンさんも何か飲まれます?」
「ああ。そうだな。あとでいい。」
そう言ってまた俺をじっと見る。
うぅ…なんかあの目で見られると寒気がするなぁ。
『コウ様、この男は貴方のステータス画面を【鑑定】しようとしています。』
【鑑定】!?
え、これ俺がユニークスキル持ちなのバレちゃうんじゃないか!
『いや、出来ねえだろうな。』
『はい。ユニークスキルは神より与えられたものですので【鑑定】でも見破ることは出来ません。』
『格上の神からユニークスキルを貰ってるんなら【鑑定】で正しい情報が見れるがな。そうじゃなければステータスによくわからない文字が出てくるかそもそも見えないんだよ。』
それだとカイルさんにあの呪いのユニークスキルを持たせた神様が俺にスキルくれた2人の神様より格上ってことに…いいや考えるのはよそう。
それより今はスヴェンさんだよな。
そうだ!俺もスヴェンさんを【鑑定】しちゃおう!
ふっふっふ、勝手に見られる事がどんなに嫌か身を以て知ってもらおう!
銀貨1枚でスヴェンさんを【鑑定】!
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スヴェン=ローラン
職業 (盗賊)→剣士
年齢 28
レベル 25
HP 690/720
MP 195/225
ユニークスキル【魔弾の射手】
スキル【鑑定】、【短剣術】、【鍵開け】、【忍び足】、【危険察知】、【夜目】
カルマ 12[殺人未遂、誘拐、不法侵入、窃盗、暴行、器物損壊]
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「えっぐい!!」
俺は思わず立ち上がってしまった。
目の前で座っていたスヴェンさんは突然の事に目を丸めている。
「なんだ、急に?どうかしたのか?」
どうかしたかじゃないよ!
なにこのステータスは!
言いたいことが多過ぎる!
ユニークスキル持ちってアンタもかよ!!
この世界の神様ポンポンとユニークスキルあげすぎじゃない?
元盗賊だからかスキルはローグ系で優秀、でも殺人未遂や誘拐はヤバイよ!!
っていうか前科もみれるのか!これ!!
もー!
ナビさん【魔弾の射手】ってなに?
『はい。狩人の神から与えられるユニークスキルで投擲、弓での攻撃が《必中》となります。』
『《必中》は【絶対回避】でも当たるんだ。つまりメタスキルだな。』
【絶対回避】なのに絶対回避できるわけじゃないの!?
『そんなもんだ。対策スキルがあるから効果が強い割に安かったんだよ。』
はぁーなるほどね。
でもスヴェンさんの武器って腰に下げてる片手剣だよな。
「あのスヴェンさんって武器はその片手剣ですか?」
「ん?ああ、そうだが。」
「他の武器とかは?」
「ナイフは使うかな。」
「投げて使ったり?」
「勿体ないからそんな事はしねぇな。」
あーー!!
これ本人がスキルの存在に気付いてない!
死にスキルになってる!!!




