第11話 この国の常識
そんな話が出たのが30分前の話。
俺が答えあぐねているとちょうど女性陣が風呂からあがってきたので話は中断。
今度は女性陣たちとの風呂トークに話が変わった。
彼女達曰く、お風呂は大変満足だったらしく風呂無しの生活は考えられないとの事。
ふふふ、そうでしょうとも!そうでしょうとも!
今は未知の体験にご満悦の女性陣に冷たい牛乳を振る舞っている。
男性陣は入れ替わりで入浴中である。
カイルさんとジェイクさんも気に入ってくれるといいな!
「ぷはー!!冷たいミルクってこんなに美味しいんだー!」
「本当に。初めて知りました。」
「喜んでいただけて良かったですよ。」
風呂上がりと言えばやっぱり牛乳だよね!
コーヒー牛乳やフルーツ牛乳ももちろんいいんだが、はじめての風呂上がりのドリンクと言ったら是非牛乳そのものを堪能してほしかったんだよ。
「でも、そっかー。カイルがコウを誘うとはねー。」
「そうなんですよ。俺戦う方は全くダメなんだけどね…。」
そりゃあ俺が居ればいつでもこの空間に逃げられるし薬も買えるから保険にはなるんだが如何せん戦力にはならないんだよなぁ。
「コウさんは薬師ですから。先程私が使わさていただいた解毒剤など素晴らしいものでしたよ?」
風呂上がりで血色も良くなったんだろう、フランソワさんの顔色はすっかり良くなっていた。
「あー、どうも。他の薬も多分よく効きますよ。あ、良かったらあとで買ってください。」
「ふふ、助かります。」
「そうだよね、あたしら冒険者は怪我がつきものだからね。ポーションなんかいくらあってもいいくらいだよ。」
「そう言えば皆さんのパーティーに回復魔法を使える方はいないんですか?僧侶とか神官とか。」
そう聞くとフィアさんが「マジで?」と顔と声に出しながら俺を見た。
「コウってこの辺の人じゃない?」
「え、うん。すごく遠いところから来たんだ。」
多分だけど。
日本っていっても通じないであろうことはわかるから言わない。
「それならば知らないのも仕方ないかもしれないですね。」
「だねー。この国《アバランス神聖国》では僧侶や神官、回復魔法が使える人っていうのは国が監視管理してる人材なんだよ。」
「教会に帰属する全ての者は国のためにしか働いてはならないと法で定められているのですよ。」
マジで!?
それって例えるなら医者がみんな国家公務員で患者も国から指名された人しか診ないくらい酷いんじゃないか?
「だから回復魔法が使える冒険者なんて皆無なんだよ。おかげでこの国ではポーション代も他の国より高くてさー。」
そうだよな。
医者が駄目なら薬剤師に頼むようなもんだろうな。
「高いだけならまだしも粗悪品を売る店も後を経ちません。無いよりはましと粗悪品を買うか、普通の効能の物を高く買うかの2択になってしまっているのが現状です。」
なるほど。
つまり俺の売った解毒剤はカイルさん達にとっては本当に正当な金額だったわけだ。
「あたしらだってCランクの冒険者である以上薬の類は切らさないようにはしてたんだけどねー。ここに来て解毒剤が効かないくらいの毒を使う魔物に襲われるのは想定外だったんだよ。」
「その節はお世話をかけました。」
しかしこれでカイルさんが戦えない俺をパーティーに入れたいと言い出したのは納得がいくな。
ゲームじゃ必須の回復役が居ないなんて無理ゲーすぎるだろ、この国の冒険者。
アコギな商売が横行してるっていうのは国やギルドみたいな存在が抑止力になってないんだろう。
それに魔物が異常に強くなったり出現率の増加ときたかー。
思ったよりこの世界は大変そうだぞ。
「それで?コウ君どうかな?せめてこの森の中でも一緒に行かないか?」
「カイルさん。お風呂もうあがったんです?」
「気持ち良すぎてこれ以上は危険だよ。ジェイクはまだ入ってるけどね。」
俺はカイルさんの分の冷たい牛乳も用意する。
カイルさんは教えてもないのに腰に手を当てて牛乳を豪快に一気飲み、うまい!とこれまたいい笑顔である。
むむ、カイルさん牛乳の飲み方が上手だ!やりおるな!
「頼むよ、コウ君。まだこの森は最奥の湖付近の調査が手つかずでね。本来ならこの時期は狩人や釣り人が立ち入る時期なんだがこのままじゃそうもいかないんだ。」
「狩人の方達が入れないと近くの村の人々の食料事情も悪くなりますし。」
「ギルドがあたしらに指名依頼までするくらいだから相当困ってると思うんだ。」
それは確かに可哀想だし困るだろうな。
霧だけでも迷子の危険があるのに魔物まで出るなら命がいくつあっても足りないだろう。
『コウ様のスキルは戦闘向きではないので推奨致しかねます。』
『こっちのスキルも金が無いと全く使い物にならないからなー、やめとけやめとけ。』
「そうだ!コウ君、キミはお金が欲しいと言っていたしとりあえず前金で金貨20枚はどうだろうか?」
『よし行け。』『行きましょう。』
変わり身はっっや!!
「金貨20枚って本気ですか?」
「ああ。元々ギルドから指名依頼の事前報酬でパーティーに金貨100枚が支払われているんだ。成功報酬は実績に応じて追加で支払われるからコウ君がいてくれれば間違いなくプラスになる!どうかな?」
カイルさん、だけじゃなくフランソワさんとフィアさんも純粋でキラキラした目を俺に向けている。
ナビさんとゴルドも報酬があるとわかったら手のひら返すし。
まあ、こんな大金積んでまで言われちゃあ断れないよね。
「わかりました!じゃあこの迷いの森攻略の為にパーティーに加入します!」




