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本能寺炎上事件簿 ~多恵子は風の中~  作者: へるきち


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06.桶狭間の戦い

「おい、俺を探してるのは、お前さんかい」


 黒田の方から、やって来てくれた。

 今のこいつは、役員のひとりだ。

 どうやってアポをとろうかと思っていたところなのだ。

 本能寺の件では、事情聴取が出来なかったが、思わぬ形で活路は繋がった。

 きっと、情シスが口をきいてくれたのだろう。

 もっとも、情シスのトップである明智こそがあやしいのだが。

 これも、社内政治ってやつだろうか。

 派遣の私には、よく分からんが。


「SNSの炎上なんて、ほっとけばいいんだよ。広報課が掻き回すな」

「気になっているのは、本能寺だけじゃないんですよ」

「だいたい、あれは多恵子がだな……、なんだって?」

「長篠の戦い、憶えてらっしゃいますよね?」

「ラゾーナ川崎のイベントの事言ってんのか? 広告代理店の担当は長篠ってヤツだったが」

「そうそれです。ところで、多恵子って誰ですか?」

 私が、3年間追い続けている事件には、いつだって多恵子が見え隠れしている。

 比叡山事件でも、犯人は信長かと思いきや、多恵子が捜査線上に浮かび上がった。

 本能寺事件では、信長が被害者になったのかと思いきや、それは多恵子だと言う。

 寺を焼いたのが信長なら、寺で焼かれたのも信長。

 そうじゃないのか?

「多恵子か。それは、どこにでも居るし、どこにも居ない」

「答えになってませんが」

「そうか? お前さん、もうすぐ契約期間終了なんだろ? うちに来ないか?」

「……考えておきます」


 ここ、株式会社らくいちらくざは、20年前に親の個人商店を継いだ信長が始めた。

 美濃攻略で、ライバル企業を合併し。

 桶狭間のコンペで大手ライバルに勝ち、一躍世に打って出た。

 会長の足利家の資金を得て、事業を拡大。

 長篠の戦いでは、派手なイベントが世間に注目された。


「なあ? お前さんが聞きたかったのは、桶狭間だろう? なんだって長篠の話なんだ?」


 私の中では、全ての事件が繋がっているからだ。

 だが、それを説明出来るだけの証拠が何も無い。


 しかし、もしそれが多恵子ならば?

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