03.迷宮入りする信長
「おい、ギョニソ。お前、まだこの事件やってんのか?」
珍しく室長に声をかけられた。
特別調査室コードネーム:ギョニソ。
それが、ここでの私だ。
このコードネームとも、後少しでお別れだ。
そう思うと、名残惜しい気もしてくる。
「はあ、また迷宮入りの予感しかしませんが」
「うーん……。さすがに今回ばかりは、社長が相手だからなあ……」
「調査続けていいって事ですかね?」
「あー……。圧力かかるのも一番って事だよ。だから、やめとけって」
「老害が消える間際の、勝負所ってやつです」
「そんな事言ってないでさあ、延長したらどうなの?」
「いえ、一度決めた期限は変更出来ません」
「辞めた後どうすんだ? なんか決まってんのか」
「第二の人生ってやつが私を待ってます」
「ソバ屋でもやる気か?」
ソバ屋か。
そんな発想は無かったが、そういうのもいいかも知れんな。
ろくろを回す自分を想像してみる。
……それはソバじゃなねえな。
ソバの打ち方すら知らない。
どれだけ、仕事ばかりの人生だったっていうんだ。
「うちたいのは、この事件だけです」
「……分かった、湿気たコーヒーなんか飲んでないで行くぞ」
「どこへ?」
「そりゃあ決まってるっしょ!」
「もう定時っす!」
おいおい。
酒飲んでる場合か?
しかし。
ブラインドの向こうでオレンジ色に染まる夕暮れの街が、呼んでいる……。




