第六話-騎士団団長-
-------------------------------------------------------------
会議は終わり、人々が部屋から出ていく頃、リヒトたちに近づいてくる人物がいた。
「お久しぶりです、レオンさん。」
「久しぶりだな、フォート…だいぶ強くなったみたいだな?」
「いえいえ…レオンさんにはまだまだ敵いませんよ。」
「あの…師匠とフォート団長ってお知り合いなんですか?」
「あぁ…こいつはあたしの元後輩なんだよ。」
「へぇ…そうなんですね…」
今まで知らなかった、師匠の過去を少しずつ知れて、リヒトは少し嬉しい気持ちになった。
「あの…レオンさん、一つお願いがあるのですが。」
「ん?どうした?」
「レオンさんの弟子…リヒト君と、手合わせをお願いできませんでしょうか」
「どうしてだ?」
「リヒト君が、この調査での危険を排除できるほどの強さがあるのかどうか、確かめてみたいんです。」
「なるほどな…あたしは構わんが…リヒトはどうだ?」
「えぇ、良い機会ですし、自分の力を試したいと思います。」
「そうか…、今ここでやるのか?」
「いえ、騎士団に修練場があるので、明日の朝、そこでやりましょう。」
「あぁ、わかった。
明日の朝頃に向かえばいいか?」
「わかりました、それではお待ちしております。」
フォートが会議室から出ていく。
「それじゃあ、あたしたちは宿に行くか。」
「はい!」
-------------------------------------------------------------
宿は、それほど豪華ではないものの、静かな雰囲気に包まれ、安心感を感じるようであった。
「おいリヒト、作戦会議をするぞ」
「はい!」
「それじゃあまずはあいつの…」
作戦会議は長く続き、気がつけばすでに深夜であった。
「まぁ、これぐらいだろう。」
「なる…ほど、」
リヒトは師匠から与えられた作戦を咀嚼し、記憶する。
「あぁ…それと最後に、」
「あいつ…実は戦闘狂だから、本気でやれよ。」
「…それ結構大事な情報じゃないですか?」
-------------------------------------------------------------
時は流れ、勝負の時となる…
騎士団の修練場には、少数ではあるが、観客がいるらしい。
「準備はできたかい?リヒト君。」
自分の目の前に団長が立ち、聞いてくる
「えぇ、ばっちりです。」
「そうか…それでは、本気でかかって来なさい。」
団長の雰囲気が変わり、戦士へと変化する
「それではルールを説明します、今回は模擬試合のため、技巧、防具の使用は禁止、武器の使用は、団長は木刀のみ可、リヒトさんは、全て可、とします。そして、降参、または戦闘続行不可能となった場合、敗北となります。
両者、準備は宜しいでしょうか?」
審判役の団員が問いかけてくる。
「あぁ…問題ない」
「えぇ、大丈夫です」
「わかりました…それでは、」
「戦闘…開始です!」
開始の合図が鳴り響いた瞬間、リヒトは作戦通り、瞬時にナイフを投げると同時に、素早くフォートの懐に入り込む。
(フォートさんは、脅威を一つずつ対処してくる!だから…!)
フォートは投げられたナイフを木刀で弾き返し、目の前から向かって来ているはずのリヒトに目を向ける…が、
(いない…!となると…)
「後ろか!」
フォートはすぐさま後ろに振り向き、リヒトに木刀を力一杯振り下ろす…
が、リヒトは振り下ろされるフォートの木刀に、側面から攻撃を仕掛けた、
-------------------------------------------------------------
「優先するのは、武器破壊…だ」
「武器破壊?」
宿で出された食事を頬張りながら、作戦会議は続けられる、
「恐らく、明日の戦闘で、あいつはハンデとして木刀を使うだろう。」
「だが、あいつは力がとんでもなく強い。」
「どれくらい…強いんですか?」
「岩を叩き潰すことができるぐらいだ。」
「えっ」
「その力に加えて、木刀なんて使われたら終わりだ。」
「だから、早いうちにあいつの武器は壊しておけ、そうしたら勝率が見えてくる。」
-------------------------------------------------------------
(あと一、二回叩けば壊せるか…?)
フォートの木刀に向けて視線を送る、
「なるほどな…まずは武器破壊、というわけだ。」
(さすがに気づかれたか…)
二人の間に緊張が走る…
二人は同時に動き出し、フォートは腹を、リヒトは腹に狙いが定まっている木刀に向かってナイフを向ける。
『ガキッ!!』
刃同士があたり、力の弱いリヒトの方が弾かれる。
(側面じゃないと無理か!)
後ろに飛び退き、迫る木刀は空を切る、そして、リヒトは次の攻撃に注視する。
「これで終わりだ!」
団長が叫び、先ほどよりも素早い木刀がリヒトの右顔先に迫る。
ナイフで受けるが、ナイフはリヒトの手から弾き飛ばされる
そして木刀は振り直され…
かろうじて身を躱すも、頬が切り裂かれる。が、
(ここだ!!)
振り切られた木刀に向けて、懐から取り出した二本目のナイフで側面から連続で攻撃を加える…
『バキッ』
限界を迎えた木刀はひび割れ、折れる
(よしっ!!これなら行ける!)
リヒトは素早く近づき、ナイフでフォートを狙う……
その時、声が聞こえた
「油断、したな?」
「なっ!?」
確実に当たるはずだったナイフは、フォートにより、刃の部分を掴まれていた。
そして奪われたナイフはリヒトに向かって投げられる。
「ぐっ!」
何とかナイフを弾き返すも…
「いないっ!?」
「後ろだ…」
「ぅぐっ」
自らの後方から炸裂した拳は、リヒトの意識を揺らす。
そしてそのままフォートの二つ目の拳がリヒトを殴り飛ばし…
意識が朦朧とし…
-------------------------------------------------------------
「お、リヒト、起きたか。」
「師…匠?ここ、どこですか?」
「ここは、修練場の中の休憩室だよ」
「そう…ですか…」
意識がまだはっきりとしないまま、リヒトは模擬試合のことを思い返す
「それにしても…フォートさん、とっても強かったですね…
手も足も出せないまま、負けちゃいましたよ…」
「あ〜……そのことなんだが…」
-------------------------------------------------------------
「ふぅ…」
目の前で気絶しているリヒトを眺め、ため息を吐く
「なかなか、強いじゃないか…」
この若さでこの強さだと、及第点といったところだろう、と評価を付けていると、審判をしていた男が近づいて来た…
「あの〜…団長…」
「どうした?」
「実は…ですね…」
男は気まずそうな顔をしながら言う
「団長ってさっきリヒト君に向けてナイフを投げてたじゃないですか」
「ん? あぁ、投げたぞ。」
「団長って木刀以外の武具は使用禁止ですよね?」
「あ…」
「なので…この試合は団長の反則負け…ということになりますね…」
「………」
-------------------------------------------------------------
「え?ということは…」
「あぁ…リヒトの勝ち、ということになるな。」
「だが、リヒト、今回はルールがある模擬試合だったから勝てたというだけにすぎない。実際の戦闘では、戦闘に、ルール違反も終わりの合図はない。」
「はい…。」
「だが…良くやったな。」
そうして話していると、休憩室の中にフォートが入って来た。
「リヒト君、今日はいい試合をありがとう。」
「こちらこそ…ありがとうございます」
「そして今回立ち合った感想を伝えよう…」
「結論から言うと、君の実力は、きっと今回の調査でも通用するものだろう。しかし、油断は禁物だ。まだまだ弱点も多い。
だから、次は技巧を使うことを考えてみてはどうだろうか。」
「技巧…ですか、」
「君の素早さは、強くはあるが、少し力が足りない、だから、攻撃を補助するような技巧を持った武器を使うと、より良くなるだろう。」
「なる…ほど…ありがとうございます!フォートさん!」
「あぁ、こちらこそ、今日はありがとう」
二人は握手を交わす。
「なぁ…フォート」
「どうかしましたか?レオンさん」
「あんた…あたしの師匠の立場、奪ってないか?」
「え?いや…そんなことは…」
「おい、修練場で模擬試合やりに行くぞ」
「え、ちょ」
「さっさと行くぞ」
どうやら団長はボコボコにされたそうだ。
-------------------------------------------------------------
じつは、レオンって強いんですよ




