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旧・夢幻のアルデモース  作者: KANAR1024
第二章-狂気は夢に沈みゆく虚星なり-
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第四十五話-第三試合・陽炎-

『第三試合、開始です!!!』




どちらも、動かない


パイロが口を開く


()()()()()()()、レオンさん。」


「あ…?」

予想外の言葉にレオンが記憶を巡らせる

そして、


「あぁ、リンダの弟か!確かに、久しぶりだな。」


炎嬰のパイロ———パイロ・エンシールは、名前から分かる通り、ライル・エンシールの息子であり、リンダ・エンシールの姉弟(きょうだい)である


だが、パイロはその好戦的な性格から、卒業後はアルディエストに移住し、武術を学んでいた


「それじゃあ挨拶は此処(ここ)までにして…」


「ああ、やるか。」


レオンは刀を、パイロは拳を構える


パイロの戦闘スタイルは接近戦(インファイト)、一見するとリーチの長い刀に分がある様に思える。

だがそれは、一定レベル以下の者の話である。


拳法の使い手の上位の者達は、リーチなどものともしない。

それは、パイロも同じである



パイロが、レオンの刀を軽やかに避ける


レオンが、パイロの拳や脚を刀で受ける


脛、頭部、腹部、腕、首

クリーンヒットしたならば怪我は免れない様な攻撃が次々と迫ってくる


(だが……)

「まだまだ、だな。」


レオンが刀を左手へと持ち替え、右手でパイロの拳を掴み、止め、左手の刀で斬ろうとする


「こうなったら、どうするんだ?」

「こう……するんですよ!!」


パイロが後方転回(バク転)をしながらレオンの右腕を蹴り、刀から逃れる

だが、右腕はただの義手なので、ダメージは少ない


「随分と、機動力を上げたじゃねぇか。」


「機動力は戦闘において最も重要だと考えてますから………ね!!!」


パイロがレオンの顔目掛けて後ろ回し蹴りを仕掛ける。

(まぁ、避けるが。)


避ける


パイロは笑っていた

「良いですね…良い強さです。気持ちが昂ってきましたよ…!!」


彼も大概、戦闘狂(バトルジャンキー)である

勝ち負けではなく、戦いの過程を楽しむ


「そろそろ本気でやりましょう………レオンさん!!!」

そう。まだ何方とも、技巧は使用していない。

つまり、此処からが本当の勝負だと言えるだろう



まずは、様子見

レオンは技巧を使わず、パイロの技巧を見極める

一体何をしてくるのか


「—ぅらぁ!!!」

普通に、ごく単純に殴ってきた


(何だ?今更そんなただの拳、当たるはずがないだろう。)

レオンが刀で縦に斬る



()()()


(あ?)


そのまま、殴られる


後ろに下がりながら受けたので、そこまでのダメージはないが、それでも、

(いて)ぇ」

レオンの中には鈍い痛みが残った


(何だ?あいつの拳が透けた……だが、あたしにダメージがあるから、唯の透過ではないだろうな……幻の類か?)

だがすぐにレオンは痛みの思考から、パイロの技巧攻略へと思考をシフトする


「どうしました?レオンさん。動きが鈍ってますよっ!」

「チッ」


またもやパイロが突撃してくる

そして、蹴られる


「ッてぇ」

先程よりも鋭い痛みがレオンを襲う

だが、


(少し、理解したぞ。今、見た目とは()()()()から痛みが来た。つまり、仕組みはわからないが……ともかく、幻の類だな。だがどうやって……)


その時、レオンの頬に汗が滲み出る

それに、何か蒸し暑いし、パイロが少し歪んでいる様にも見える


(あぁ、何だそんな事か………)

遂にレオンがパイロの技巧のからくりに気付く


「”陽炎(かげろう)”だな?」

「何だ……気付いちゃったんですね…でも!!!」


陽炎によって生み出された虚像がこちらへと向かってくる


「何処から攻撃が来るか、分からないでしょう!!!」


結局、レオンはその攻撃を防げず、くらってしまった。





否、()()()()()



// //


攻撃が当たった瞬間、レオンが技巧を発動し、行動を短縮する。

それは、パイロを掴むという行動。


勿論、短縮された行動にパイロは反応をすることが出来ない


「捕まえた。」


鋭い一太刀がパイロの腕を襲う



「チィィッ!!」


パイロが後ろに飛び退こうとするも、もう遅い


飛び退いた時、レオンの手には切断された腕が残っていた





———(痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!)

痛みに悶えながらも、パイロは声を上げず、直ぐに止血をする。


「一時間以内なら、切断された腕も治せる………だったよな?」

レオンが腕を放り投げ、そう言う。


この国の医術レベルは高く、切断された部位すらも、ごく最近のものであれば治療することが出来る。

だが、結局はそれ止まりである。



「良い試合にする為に、一時間以内に終わらせてやるよ。」

久方ぶりに聞く、レオンの本気の声を聞いたパイロは、この暑い中でも冷や汗をかく

だがしかし


(怖い、でも———楽しい!!!)

一番この状況を楽しんでいるのは、観客どもや、レオンではなく……パイロであった。


止血を終わらせたパイロが、ゆっくりとレオンの方へと向かう


「もうバレてしまったので……技巧の説明をさせてもらいますね?」

パイロが語りかけてくる


「僕の技巧……エスタ・カノールは、熱を操る技巧なんです。それで僕は、辺りの空気を熱し層を作り、陽炎を発生させていました。」

陽炎とは、熱せられた空気と、冷たい空気の間で光が屈折し、像が歪んで見えたりする現象である。


「それをコントロールして、巧みに虚像を生み出していたんです。ですが———勿論、熱に関しても操れる限界があり、それに近づくにつれ、消耗が多くなります。」


その時、途端に会場内が蒸し暑くなる。


「そしてこれが………僕の全力です。さぁレオンさん、最後の打つかり合いとしましょう!」



パイロの技巧によって熱せられ、無数に出来た空気の層が光を混沌に屈折させ、パイロの像を()()


(この攻撃は、()()に避けれない………避けさせない!それに………もうあなたにこの攻撃を受ける余力はないでしょう………!)

最大限の力を込めて拳を握り締め、レオンがいる方向へと向かってゆく


パイロ、現在、空気の層を操作出来ている。

だが、それは一分と持たない


(だから、これで最後です!!!)


層の隙間から見えたレオンに最後の一撃をくらわせにいく




その時、レオンが(まぶた)を閉じた








此処(ここ)、だ。」




突然パイロの目の前に現れたレオンが、一閃


右肩から左腰までを、斬りつける


「なっ…………」

想定外の反撃に、パイロが眼を開く


「一体、どうやって………」


「そりゃあ、こうなったら視力は当てにならない。それなら目を閉じて、他の感覚に全集中するのが最適解だろ。」

レオンがあっけらかんと答える


「成程……ですがそれを成功させるセンス———やはり戦闘面でも、天才だったんですね………」


パイロが倒れ、陽炎群が晴れた





『———えっ終わってる!!!あっ、という事で!第三試合の勝者は———レオン・ヘルツ選手です!!!』

客たちの歓声が湧き上がる



「勝つって事は………中々に気持ちがいいな。」

レオンはそう、小さく呟いた。




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