第四十三話-第一試合-
闘技場に続く、暗い廊下
その中を一人の青年が歩いていた
「リヒト。」
「どうしました?師匠。」
思わぬ師匠の出現に、少し驚いた
「絶対に、勝てよ。」
「…勿論です。師匠も倒して、優勝を狙いに行きますよ…!」
——————
廊下を抜けると、そこには水に囲まれた円形型のステージ。そして上方には、溢れんばかりの観客達が、開始の合図を待ち侘びながら此方を見ていた
『皆さんお待たせしました!!!開始する準備が整いましたので、ルール説明へと参りたいと思います!』
闘技場内に司会の声が響く
『と、その前に…初めて出会うという方もいると思いますので先ずは自己紹介から!
私、この闘技場内の司会を務めさせて頂いている、ティーラと申します!
どうぞ宜しくお願いします…』
そう言ってティーラがお辞儀をする
『という事でルールを説明します!基本的には、予選とあまり変わらないのですが、観客さん達は知りませんので再度説明させてもらいます!
その一!原則として、相手選手の殺害は禁止です!もしそんな事をしてしまった場合、すっかりと法で裁かれますのでご注意を。
そのニ!戦闘不能になる。もしくはリタイアをすると、そこで試合は終了となります!また、試合が終了しているのにも関わらず、故意に攻撃を加えてしまった場合、これも法で裁かれますので、ご注意を。
そして最後に…戦闘は誇りを持って行い、互いの闘争心を全力を持って体現する事を流儀とします。』
『それでは…………第一試合! [水鬼]ウェルサー・ウェイシステ VS [疾風]ニフタ・モンテリヒト………』
会場が静寂に包まれ、荘厳な雰囲気を保つ
『———試合開始です!!!』
「「ウォオオオオオオオオオオ!!!!」」
試合開始の合図と共に先程までの静けさが嘘かのように爆発的な歓声で会場が埋め尽くされる
そして……その歓声にかき消されていたが、一つの攻撃をリヒトは寸前で避けていた———
———
(っ!)
開始と同時に相手から放たれる何かを、リヒトは何とか避けていた
「容赦無いですね…」
「そりゃあ、当たり前さ。だってこれは試合。勝つためのことは何でも許されるところさ。」
ウェルサーが手をひらひらと見せながら言う
「それに、全力で戦わないと失礼ってやつさ!」
再び、謎の攻撃。
リヒトはその技の正体を探るために避けずにナイフで受ける
案外、その技は単純で、だからこそ使い勝手の良いものに思えた
(高速で発射された水の弾…当たったらどれ程のダメージになるかは分からないけど………ここまで勝ち残っている以上、危険なことには間違いないな。
それより問題は、何処までが技巧なのか……かな。)
相手の技巧を見極め、隙を見つけること。これこそがレオンから教わった、技巧持ちとの戦い方である
「やっぱり、ここまで残ってるんだから弾かれちゃうよね………まぁ、わかってたさ——————どんどん行くよ!」
水球が、複数。散弾銃の様に襲ってくる
自分に当たりそうな物を全て弾き、攻撃を加える準備をする
ナイフを構え、足に力を入れる
そして——————駆ける
今回の修行の成果は、かなり大きい。基礎体力の向上に加え、筋肉量の増加。既に生半可な者では太刀打ちは出来ないであろう
———だが、この大会の本戦に出ている以上、生半可な者であるはずが無いことはリヒトも理解している
(さぁ、どう対処する…?)
ウェルサーが手元から水の剣を生み出し、構える
(今の所、水を生み出し、操る…それが効果かな?)
そのまま、動きを緩めず、突進
リヒトの間合いが近付いた頃、ウェルサーも剣を構える
———びしゃっ
水の剣が散らばり、水の弾丸となる
「っ」
間合い直前まで惹きつけられたリヒトに少しばかりのダメージ、だが幸いな事に、そこまで攻撃力はない様であった
「成程…な。」
(剣で応戦しなかったとなると、技巧は水の弾丸の発射………いや、)
「水の圧縮…か?」
「当たり、さ。」
そう言ってウェルサーが金属製のただのナイフを取り出す
「詳しく言うと、操作できる少量の水を生み出し続けているだけなんだけど…さ。
これは、自分の近くにしか生み出せないのさ。」
まぁ、既に生み出した水の近くだと関係ないけどさ。
彼は、そう言った
咄嗟にリヒトが後ろを振り向く
先程、数発リヒトが弾いた水弾に加え、ウェルサーが敢えて外したであろう水弾
それが背後に———なかった
「嘘、さ。」
リヒトの背後では、圧縮された水が今にも発射されそうになっているのだろう
(あぁ、甘かった、な。)
リヒトは、騙されてしまった自分の甘さに恥じる
それに、
(そう、これは試合……神聖な試合。出し惜しみをする理由もないし、それは失礼………ですよね?)
ウェルサーは、勝った。と思った
流石に、此処から弾き返すことは無いだろう。
しかもこの水弾は、先程までの5倍程度圧縮されている
故に、速度も5倍、威力も5倍、到底弾くことはできない
だが、リヒトは一試合目にして、学んだ。学ばされた。
これは、決して生半可な気持ちで挑むべきものでは無い
シュッ———
確実に当たるはずだった水弾が、縦に両断
「なっ」
疾風、それは風の様に疾く、鋭く舞う姿を見た隠密部隊の情報から作られた称号
それが、襲ってくる
一瞬で、決着を付ける
ウェルサーの所まで最速で脚を運び、反応が遅れ、無防備なウェルサーをナイフで切り裂こうとする
「———参った、さ。」
その言葉で、ピタ。とナイフを止める
『第一試合勝者———[疾風]ニフタ・モンテリヒト!!!』
大歓声
そして、
「なかなか、いい試合だったと思うのさ。」
「えぇ、僕もそう思いますよ。」
観客の歓声を他所に二人は握手し、絆を深めていた
そうして、初戦はリヒトの勝利で幕を引いたのであった。
主人公さん結構技巧使ってたじゃん!って思うかもしれませんが、彼はあれを邪道だと考えていました。
ですが、これからは意識が変わり、全身全霊で挑むことこそを美だと感じる様になったので、ゴリゴリ技巧を使っていきます。
うん。扱いに困るね。
あと、この国では戦いこそを美とするため、うるさい司会は必要ないです
つまり仕事は審判のみ




