第四十一話-前途多難-
「流極拳か…!」
攻撃を受け流されたリヒトがそう予想する
「ほう、知って、いるんだな?」
男が再び拳を構える
(流極拳…厄介だなぁ…)
リヒトが顔を顰める
流極拳は、ある一定以上の使い手となると、正面からでは受け流されてしまうだけとなるらしい
男がどの程度の使い手かは分からないが、ナイフを防いだ以上、上澄ではあるのだろう
やはり、厄介であった
(でも上等!)
拳技の起点となる腕からなるべく離れた、足や頭部に狙いを定め、切り掛かって行く
だがやはり、防がれ、受け流されてしまう
更にその間を縫ってくる拳をギリギリの所で避け続け、膠着状態となる
(やっぱり…かなりの使い手だな、消耗もなさそうだし、早めに決着をつけた方がいいか…!)
リヒトがスピードを上げて行く
「ふむ、速く、なったな。」
男が単調な口調のまま、リヒトの攻撃をいなす
「あなたは随分と、強いみたいですからね…少し本気を出させて貰いますよ…!」
リヒトのギアが更に上がり、技巧を発動せんとする
「お前も、随分と、強いじゃないか。」
男の拳を握る力が少し強くなる
———だが、
ッパァァァァァァァン!!!!
「「!?」」
突然の巨大な破裂音に二人の手が止まる
遠くを見ると、土煙が上がっている
一体何があったのだろうか…
そして、横を見ると、男が構え直している
「ふっ、邪魔が、入ったな、仕切り直しだ。」
そう、彼は武闘家である
目の前の敵と、力をぶつけ合うことこそが、礼儀なのだ
「そうですね…よろしくお願いします———!」
森で、二人の選手が激突する
そして、その少し前…
——————
◆ナリア
「森も、かなり静かになりましたね…」
ナリアの毒によって蹂躙された森は、静けさを保っている
「このまま、予選終了まで戦わずに残れたら良いんですけど………」
修行によって体力がついたナリアは、微弱な毒程度では疲れない身体を持っている
「合流する事は禁止されていますし…待機するしかないですかね。」
そう、悩んでいた時———背筋に悪寒が走る
それは、天性の才故の本能、それに従い、ナリアはその場を離れようとする
———一筋の閃光が森を覆った
ッパァァァァァァァン!!!
直後、巨大な破裂音が森を震わせる
否、実際に、地面すらも震えている
それは、強大な、衝撃波である
そして、ナリアが毒を散布していた所全てが荒れ果てていた
「っはぁ…っっ」
(危なかった…)
どう考えても自分を狙った攻撃を、すんでのところで逃れれる事ができ、安堵をする
だがすぐに思考を切り替え、警戒しながらも思案する
(一体誰が……?…っ、あの男の人ですね…)
荒れ果てた森の中、仮面を付けた男が立っている
そしてふと、こちらを見た
「何だ、生き残っていたのか。」
そう、言った気がした
そして、またもや本能が危機を感じさせる
(ッ!)
此方へと向かってきた仮面の男に弓を、放つ
だが、
男が手を翳し、触れた瞬間、矢が破裂する
ナリアが放った矢は全て破裂させられ、その間に、仮面の男がゆっくりと近づいてくる
あと、少し———
咄嗟にナリアが距離を取る
そして、男の動きが止まった
「なぁ、あんた、ここに、罠を仕掛けたな?」
仮面の奥から発せられた声は、暗く、憎しみに囚われていた
そして、男の指は地面を指していた
(気づかれた…!)
ナリアは、できる限り相手に悟られぬよう、毒の罠を作っていた筈であった
しかし、見破られてしまった
そして罠を軽々と避けられ、此方へと歩んでくる
「全くお互い、難儀なものだよな、」
そう言って、仮面の男が意味もわからないようなことをナリアへ押し付ける
(本気で、戦うしかない…みたいですね…)
ナリアが本気で戦う準備をする
戦場は、更に過激となるであろう———
———ヒュンッ!
リヒトの剣筋が男の腕を狙う
だが男は流極拳で負傷を抑えんとする
だが、少しづつ、男の腕には切り傷が浮かんで来ていた
(———まだ、もう少し…もう少し加速できる!!!)
繰り返される攻防の中、リヒトは潜在技巧をインターバルを開けながらも、発動し続けていた
斬る、出力を調整する、斬る
これの繰り返しである
そしてその剣撃は、リヒトが自壊をするであろう速度寸前まで加速していた
それは、男の限界値でもあった
「ぐっ」
初めて、男の腕が流しきれず、まともにナイフを受ける
当然、リヒトはその隙を見逃さない
右腕、次に左腕、流極拳の主要となる部位を切り裂いてゆく
「なるほど、な、俺の、負けか。」
脱落寸前、男が呟く
「遅くなったが、俺の名は、ガルトだ。お前は?」
「モンテリヒト、です。」
「そうか、また、会おう。」
胸に受けた一閃で、ガルトが倒れる
誇りあるその敗北に、リヒトは敬意を示していた———
——————
ッパァン!
またしても森に響く破裂音
それはナリアの毒が全て相手に届く前に相殺されている事の証明でもあった
(駄目ですね…全て破裂させられてしまいます。)
現在ナリアはヒットアンドアウェイの方式を取ってはいるものの、攻撃は一度も当たらず、逃げるだけとなってしまっている
「全く…習わしってもんは、厄介だよな。あんたに同情するぜ。」
仮面の奥から声が響く
「一体、あなたが何を言っているのか、私には理解できません。」
「あぁ?そうか…知らねぇのか…それは尚更同情するぜ。」
男が近づき、ナリアに触れようとする
先程から、男が触れたものは全て破裂している
触れられてしまったら、どうなるのかは、直ぐに予想がつく
(やはり…私を殺す気のようですね…でも一体なぜ…?)
ナリアには殺されるような身に覚えはない
(先程から仮面の男が言っている、”習わし”が関係しているのでしょうか…)
「おい、考えてばっかりだが、良いのか?」
仮面の男が何かを投げる
それは、何かの粉が大量に入った、袋
それに男が手をかざす
「さぁ、残念だが…消えてくれ。」
一筋の閃光が森を貫き
———爆ぜる
「さぁ…死んだか…?」
仮面の男が確認をしようと、煙が晴れるのを待つ
「———なかなかにしぶといじゃねぇか。」
全身ボロボロのようではあったが、辛うじて生きているらしい
(だがまぁ、殺さなきゃな)
そうして仮面の男が再び手を———
———ビィィィィィィッ!!!
笛の、音
それは、予選終了と同時に、この場に残っている全員が本戦に出場する権利を有したことを表してた
「チッ、終わっちまったか…」
流石に予選が終わった状態で殺すのは、厳しいだろう
確実に殺す前に捕まってしまう
「———けほっけほっ」
ナリアが咳き込み、男の方を見る
「本戦で、続きをやってやるよ。また会おうな、ナリア。」
男が知るはずのない名前を口にする
「何で、私の名前を…」
「じゃあな、」
男が予選会場から去る
そしてナリアの心には、疑念と危機感が残されていた———
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本戦進出者
[偽竜王] ヴァロッツ・アルディエント
[會狗者] ヴァルロッテ
[統合者] ヴァイツテイラー
[戦闘狂] フォート・アグリンド
霽月のヴェルツ
壊艶のリラテリア
冷白のアイレース
炎嬰のパイロ
廃国のエルディース
[疾風] ニフタ・モンテリヒト
[猛虎] レオン・ヘルツ
[怪獣] アイリス・ローレル
[蠱毒] ナリア・ヴィントレース
[粘性] スリル・スライル
[辻斬] ガイルド・エルトス
[水鬼] ウェルサー・ウェイシステ
二つ名説明
[〇〇〇]…最上級の称号
〇〇の〇〇〇〇…中位の称号
[〇〇]…初の本戦参加者に付けられる称号




