第四十話-予選開始-
修行の日々が続き、時が流れ、武闘大会予選の日となる
予選では、広いフィールドの中で、武闘大会参加希望者全員でバトルロワイヤルを行い、最終的に残った十六名が本戦の参加者となる事が出来る
恐らく予選を突破するであろう優勝候補者を除くと、枠は十名、それに入る事が出来なければ、終わりである
「まぁ…頑張るしかないか…!」
予選会場の前で、リヒトが気合を入れる
今回の予選会場は、アルディエストの西部にあるプラティス森林の一部である
ルールの詳細は、
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その一、原則として選手の殺害は禁止である
故意の殺害を行なった場合、法律に準拠し、公正の元に裁かれる
そのニ、選手以外の外部からの支援を受ける行為や、徒党を組む行為は禁止である
もしそれらを行い、その行動が確認できた場合、即刻失格とする
その三、戦闘不能、リタイア、もしくは意識が確認できない場合、失格となり退場である
その四、既に失格となった者に危害を加える事は禁止である
その五、戦闘は誇りを持って行い、互いの闘争心を全力をもって体現する事を流儀とする
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———これぐらいであろう
他にも細かいルールは決められているらしいが、知っておかなければいけないのは、これくらいだろう
ちなみに、人数に関しては、技巧が刻み込まれた板を選手に身に付ける事によって判定されているらしい
そして、もうすぐ開始の合図が鳴るはずだ
———ピィーッ!!
笛の音が高らかに森を駆ける
その合図と同時に、選手達が一斉に森へと掛け始める
もう一度笛が鳴った時刻から、勝負開始となる
(もう少し…人が少ないところに行きたいな…)
リヒトは森を駆け、奥へ奥へと進んでゆく
範囲が決められているとはいえ、プラティス森林はとても広い、開始直後から敵とでくわし、消耗させられる事はないだろう
そして———ピッピィーッ!!!
二度目の笛が鳴り、予選開始となる———
リヒトは、この予選に参加する人数を甘く見ていた
その実、総数は一万人である
———ガサッ!
背後の木の上から男が降ってくる
「もらったぁ!!!」
突然の襲来、
リヒトは男の攻撃を受けてしまう………なんて事は勿論無かった
「ごはっ!!!」
ナイフを使うまでもなく、リヒトは男の腹を拳で殴る
クリーンヒットである
———どさっ
男の意識は一撃で消え去り、地面へと倒れ込む
戦闘不能となった選手は、武闘大会運営所属の隠密部隊により回収され、治療が施される
ルール違反なども、彼らが確認しているらしい
選手の回収を見届けた後、リヒトは思案する
(全体的に弱いってより、強い奴も弱い奴もいる…って事なんだろうな…」
リヒトはそう結論付け、次の襲撃を待つ
他の皆は上手くやっているのだろうか…
あ、木が飛んでいる
十中八九、ローレルさんだな…
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◆ローレル
「や〜!!!」
ローレルが地面から引き抜いた木で、選手達を殴打していく
森からすると、たまったものではないだろう
だが、勿論ローレルは止まらない
そうして選手を次々と脱落させていく
———正直、隠密部隊も隠れる所が少なくなるため、迷惑を被っていた
「さてさて〜!皆も頑張ってるかな〜?」
そう思われているとも知らずに、ローレルは無邪気に笑った
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◆レオン
「まぁ、分かってはいたが…多いな。」
開始して十分、既にレオンは十五人ほどと戦闘を繰り広げていた…
…が、その全ては、一瞬のうちに死なない程度に切り捨てられた
武術国家であるが故に負傷も多いこの国の医療は、性質上、宗教国家イリューシステラには劣るものの、世界的に見ても高い水準を誇っている
余程のことがない限り、死なないだろう
「リヒトは大丈夫だろうが、ナリアが心配だな…」
だが、探す訳にもいかないので、諦めて選手達を狩る
ナリアは正直言ってしまうと、修行前までは実戦レベルとして、下位の方であっただろう
そう、修行前までは
ナリアは、レオンの想像とは裏腹に、壮絶な程にこの予選を蹂躙していた
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「何か…人と出会さねぇなぁ。」
一人の選手が森を歩く
現在、予選が開始されてから十五分ほど経っているが、未だに選手の誰とも出会っていない
「何か森も静かだし…不気味だな…」
大量の選手達がいる筈の森は奇妙な事に静寂に包まれている
「ん?なんだ?この匂い。」
風に乗って匂いが漂ってくる
それは、クラクラするほどに甘い匂いで、嗅いでいると気分がいい…………?
「———あれ?」
ばたん
男が倒れ、すぐさま隠密部隊に回収される
それは、風に乗ってしまうほど軽い、毒である
故に微弱ではあるが、長時間吸収し続けると、体が麻痺する
無論、この毒はナリアの技巧である
ナリアは修行により、以前よりも毒への理解度が高くなっている
さらに、幸運な事に、この森には微弱な風が常に吹いている
そして…ナリアは天性の才を持っていた———
現在、既に六千人の脱落者が出ている
そのうちの二千人は、ナリアの毒によるものであった
だが、ここまでで篩い落とされた選手は、選手の中でも名誉のためだけに大会に参加希望した弱者が殆どである
つまり、本当の予選はここからであった———
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◆リヒト
「ふぅ…」
リヒトが戦いを終え、ナイフをしまう
(段々と、強い人が増えてきたな…)
初めは余裕だったものの、段々と、苦戦することが増えてきた
今はまだ負傷はしていないが、先ほどの戦闘では危ない所もあった
(あと…何人ぐらい残ってるんだろうか…)
開始からは、二時間半が経過していた
「———ん?なんだ?お前?」
背後から突然の問いかけ
リヒトは即座に敵襲と判断し、応戦をする———
「なかなかに、強そう、だな?」
刹那、男の拳が飛んでくる
「ぐっ!」
ナイフで防ごうとするも、受け流され、そのまま拳がやってくる
「良い戦いを、よろしく、頼む。」
こいつ———強いっ———!
———波乱の予選が始まる
予選開始




