第三十八話-修行期間-
「リヒト、遠慮なくかかってこい。」
「っはい!!」
———ギィィン!!!
刀とナイフが激しくぶつかり合う
二人は手合わせの真っ最中であった
——————
◻︎
「それじゃあお前ら、修行を始める。」
「「はいっ!!」」
宿に着いた次の日、リヒト達は修行を始めていた
武闘大会までは、残り2ヶ月、時間はまだまだある
しかも、ここは武術国家、修練場は至る所にある
「それじゃあまずは、ナリアから行くか。ナリアの得意分野は弓だな?」
「はい…ですが、最近伸び悩んでいて…」
「そうか…それで、今の自分の悪いと思うことを教えてくれるか?」
「えっと、弓で射る方は問題が無いんですけれど、技巧の方に問題があって…
あの時に話した通り、私の技巧は、自分の応力を毒に変質させる…というものなんですが、強い毒を作った後だと暫くの間動けなくなってしまって…」
「そうだな…それに関しては、単純に体力不足だろう。だが、工夫する余地はある。どの毒が、どんな敵に、そして状況に効果的なのかを、日頃から調べる事が大切だろう。今回はそれを体力作りに合わせて行うと良いだろう。」
「成程…ありがとうございます!!」
早速、ナリアは自分の修行を始めるために、走り出す
「それじゃあリヒトは…手合わせをやるぞ。」
「え?なんかこう、アドバイスみたいなのは無いんですか?」
ナリアとは違う対応の仕方に驚く
「あぁ、無い。やるぞ。」
「あ、はい。」
———そうして、今に至る
「そういえば、手合わせをするのは随分と久しぶりだな。」
「確かにそうですね…ミラーとの戦いが終わってからは、僕は傭兵団にいましたか——————っら!!」
話の合間に刀が飛んでくる
「ちょっと師匠!!そんな事するなら話しかけないでくださいよ!」
「何を言う、相手の会話に惑わされないのも勝負にとっては重要だろう。」
「それはそうですけど…!」
追加で、二撃、三撃、刀が迫る
それを、リヒトがすんでのところで弾く
リヒトの反撃、武器の技巧によって補正がかかったナイフがレオンの右腕に滑り込む
が、防がれる
これはただの手合わせである。
なのでどっちも手加減はしているのだが、リヒトとレオンの差はまだ広い
もっとも、リヒトが自分の体を鑑みずに突撃すれば負ける事はないだろうが、そんなことをしてしまえば、余裕で死んでしまう
そうして幾らかの攻防が続いた頃———
レオンの技巧が発動する。
// // 短縮。
瞬時に距離を縮められたリヒトは、その攻撃に反応する事は出来ない
レオンは、刀を持っていなかった
それは、拳技である
それの発祥地は、ここ、アルディエストであり、エスコルタ騎士団の副団長アティスが使う受け流しの元となったものでもある
この拳技は、受け流しと、反発を主とする
応力同士が反発するという性質を使った、技法
その名は———
「———流極拳」
「ッッ!」
鈍い、痛み
拳によって殴られた腹が痛み、耐えきれない
「痛うぅ…」
リヒトが倒れる
「ふう…やはり、まだ練習が必要だな。」
レオンが痛めたらしい左手をプラプラとさせる
「何なんですか?今の…」
「あぁ、流極拳だ。お前が傭兵団に行ってる時に、習得したんだ。」
「そんなに…簡単に習得できるものなんですか?」
いつの間にか戻ってきていたナリアも会話に加わる
「学ぶのは、あたしの得意分野だからな。だがまだ未熟だ、だから痛む。」
そう言って左手を見せる
「まぁ、リヒトがこれを学ぶには、まだ早いがな。ナリアは、敵が接近してきた時は使う事があるかもしれない、一度学んでみるのも良いだろうな。」
「なるほど…」
何処から持ってきたのか、ナリアが紙に色々と書き込んでいる
「それで…どうでした?」
「あぁ、手合わせか。まぁ、まだ技巧を使ってないにしては、強くなっていたな。だが、まだ足りない。
お前の技巧を使うには、今のに耐えれるぐらいの頑丈さが必要だな。」
「それで…どうしたら頑丈になれるんですか?」
「そうだな…」
少し考えた後、ほんの少しだけ悪意が込められた顔で微笑む
「取り敢えず沢山攻撃を受ければ良いんじゃ無いか?」
何処かの先輩と同じ事を師匠が口にしたからには、実際効果がある事なのだろう。
嫌ではある。本当に嫌ではあるが、やるしかなかろう。
「あぁ、それと…傭兵団でも色々大変だったらしいな。」
そうなのだ。リヒトは最近、トラブルに巻き込まれてばかりである
純白のウルスオルセットや、グルーゼリヒスでの歌うクレープス、そして蠅の王など、強者と常に戦っているようなものだ。
「武闘大会が始まる前に、一度何処かで休息を取るのも大事だな。
例えば…この国には温泉が湧き出ているらしい。来週の何処かで、行くのも良いだろう。」
「本当ですか?それは楽しみですね…!」
「勿論、払うのはリヒトだがな。」
「え」
そうして修行が終わる…とリヒトは思っていた
「まだ終わっていないぞ、作戦会議だ。」
「少し、気が早くないですか?」
「そうですよ師匠…武闘大会までは後2ヶ月もありますし…出場選手も決まっていませんよね?」
「いや、それがな、武闘大会には毎回、優勝候補者とやらが、先に出場が発表されるんだ。今回は六人だな。
これがリストだ。」
レオンがリストをリヒト達に見せる
「えっと…偽竜王ヴァロッツ!?この人って、この国の王様じゃないですか?」
「あぁ、ここは武術国家だぞ?王が武闘大会に出てもおかしくはないだろ。」
「まぁそうですが…ん?」
リストの内の、一つ。何故だが見覚えのある顔と名前…がある
「師匠、この人って…」
「あぁ、あいつは戦闘狂だぞ?そりゃあ、くるだろう。」
それは勿論、エスコルタ騎士団の団長、フォート・アグリンドであった
———本当に、優勝出来るのだろうか。
次は温泉回です
…リヒト君は一人で入ってもらいます…ドンマイ




