第三十四話-エクスロ湿原、再び-
「———成程、それで武術国家に行くのか。」
リヒトの目の前には、義手を付けた女性…レオン・ヘルツがいた
「それで、師匠にも一緒に来て欲しいんですよ。」
「ほう、何故だ?」
「実は、師匠に武術を教えて頂きたい人がいまして…」
リヒトが呼ぶと、物陰から、ナリアが出てくる
「成程な…わかった、あたしが修行をしてやろう。」
「本当ですか?ありがとうございま——」
「但し、だ。」
「修行終わりには、スイーツを奢ってもらうぞ。」
………
「ちょっと師匠、それは流石に酷いんじゃ…」
「何を言っている?リヒトが奢るんだぞ?」
「……え゛?」
そんな事もありながら、リヒト達は二度目のエクスロ湿原への道を辿っていた
「リヒト先輩、ローレルさんは、一緒に来ないんですね?」
現在、リヒト、レオン、ナリアが共に武術国家アルディエストへの道を進んでいる
「うん、なんだか、別のルートで来るらしいよ。」
ローレルは、用事があるらしく、別ルートから来るそうだ
二人の会話の外で、レオンがじっとリヒトを見つめる
「…師匠?なんですか?」
「いや…リヒトが先輩と呼ばれる日が来るとはな…成長したな。」
「いえいえ、まだまだですよ。まだ目的も全然果たせてませんですし…」
「…リヒト先輩の…目的?」
ナリアがふと疑問に思う
「あぁ、言ってなかったね…」
「僕の…出自を知りたいんだよ。」
「僕は、昔、両親達と暮らしている所に、クレープス・エクリクシが起こって、孤独になったんだけど、実は、僕は両親の本当の子供じゃないみたいなんだよ。」
「そう…だったんですか?」
「うん、それを知ってから、僕はクレープスを狩ることと、出自を知ることを目標にして、修行を続けてたんだ。」
「なる…ほど…」
沈黙が、少々
「おい、そろそろ湿原に入るぞ。」
———
「静かですね…」
二度目のエクスロ湿原は、とても静かであった
「武闘大会はまだ先の事だ…一度、あの村の様子でも見に行くか?」
あの時、ミラーによって全滅させられた、あの村だ
「そうですね…迷惑をかけるけど…ナリアは、大丈夫?」
「はい、大丈夫です!」
そうして一行は、あの村に行く事にした
——————
「やはり…荒れ果てているな…」
家は崩れ、畑には雑草が生い茂っている
「誰も、整備をする人が居ないですし、しょうがないでしょう…」
因みに、ミラーによって連れ去られた者達は、未だに見つかっていない
「祈りましょう、村の人々の無事を、」
祈る
———ブブブブブブブブブブ
湿地帯の奥から、奇妙な羽音が聞こえる
「「「!」」」
異音に気づいた三人がすぐさま臨戦態勢を取る
「何か、来るぞ。」
「———は?」
森の奥から出てきたのは…黒い塊———
否、恐ろしい程に集まっただけの、蟲の大群である
「何…あれ…」
それらを率いるのは、蠅の王
『ビィィィィッ!!!!』
モスカールが奇音を上げる
蠅達が塊った
「一体、何を…」
奇妙、奇怪、蠅どもが人型となる
それは、異獣
それも、実に不気味な…
『キリキリキリ』
モスカールが殻を鳴らす
『ビィィィャャャャャ!!!!!!!』
とてつもない、咆哮と共に、こちらを睨みつけてくる
「戦うしか、ないか。」
モスカールが鋭い爪をこさえ、こちらに迫る
蠅の王は、何のために戦うのであろうか
絶対キモい




