表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧・夢幻のアルデモース  作者: KANAR1024
第二章-狂気は夢に沈みゆく虚星なり-
PR
32/47

第三十一話-愛の小鳥-

遠い昔、とある街に、貴族の娘がいた

その娘は、とある青年を愛していた


しかし、その青年の身分はただの平民、到底釣り合う者ではない

さらに運の悪いことに、娘の家は、身分差別が激しかった


だが、二人は互いを狂気の程に愛し合っていた


そして、青年は二人ともに予定がない毎週金曜日の夜に、貴族の娘に会いに来ていたのであった———





窓をトントントンと、三回、独特なリズムで叩く

それが来訪の合図だ


『会いに来たよ、◼︎◼︎◼︎◼︎。』


『イェイル!今日も来てくれて、ありがとう!』


◼︎◼︎◼︎◼︎が勢いよく開け放った窓から身を乗り出す


『今週は、どうだった?』


『最近は、ずっと貴族のマナーやルールのことばっかり、もう…嫌になっちゃうよ……イェイルは?』


『僕も、あんまり良いことはないかな。一昨日は、嵐が来て大変だったんだよ。』


『そうなんだ…嵐って、とても危険でしょ?作物は大丈夫だったの?』


『うん、本当にギリギリだったけどね、お父さんが近くの人を集めてくれて、何とか守れたんだ。』


『それは良かったね…』


二人は、談笑を続ける

だが、楽しいひとときはそう長くない


『あ、もうすぐ時間だ…()()をお願いできる?』

『もちろん良いよ!』


◼︎◼︎◼︎◼︎が小さな声で歌い始める

それは、切ない恋の歌

だが青年は、その歌が大好きであった


そうして◼︎◼︎◼︎◼︎が歌い終える


『それじゃあ、またね…!』

『うん、また来週。』


そうして、月日が過ぎてゆく


辛くとも楽しい日常を歩んでゆく


そして、◼︎◼︎◼︎◼︎が今日、成人を迎え、独り立ちが出来るようになるころ、

パーティーの後に、自室に戻る

今日は、金曜日である


だが青年は来なかった


どうしたのだろうか、



———ガチャ、

滅多に◼︎◼︎◼︎◼︎の部屋に入って来ないはずの母が、入ってくる


『———言い忘れていましたが、あの薄汚い平民は、始末してあげました。

付き纏われていて辛かったでしょう?

今日はお眠りなさい。』


嘘、だ

そんな筈はない、だって、今までに一度も見つからなかった

今日に限って、そんな



『お母様…?一体何を…』


母が振り向きこちらを睨みつける


あぁ、そうか、気づいていたんだ

気づいてたうえで、泳がせてたんだ

今日、殺すことで

私にもう二度とこういうことをするな、と釘を刺すために




怒り、悲しみ、そして絶望


『お母様、一つだけ宜しいでしょうか。』

『はい、なんでしょう?』



『この事は、お父様も知っていたのですか?』


『勿論、当たり前でしょう。それに、使用人どもも全員知っていましたよ。』





ああ、やっぱり。

この世界は理不尽だなあ



母が部屋を出ようと、扉に手を掛ける


開かない


『えっ?きゃあっ!』


ポタポタと、腕の先から何かが流れ落ちる


無論、血である






『————————♪』

歌が聞こえる







『◼︎◼︎◼︎◼︎!いったい私に何をしたのですか!!さっさと治しなさい!!!』

状況が、理解できてないみたいだね


歌う、歌う


『ひぃっ、誰か!誰か来て、私を守りなさ——』


———ピッ

血飛沫が飛ぶ


扉を、開ける


周りが私を見て騒いでいる


君たちも、同罪だよ?


歌う、斬る、殺す、歌う、歌う


いっぱい殺した


扉を開ける


『どうした?もう寝る時間だぞ、◼︎◼︎◼︎◼︎———』


父が私を見て動きを止める

次第に顔が青ざめていき、汗が吹き出ている


『———♪——————さようなら。』





◻︎翌日


「えっと、ここか。」

一人の男が、大きな屋敷に辿り着く


「すみません、私は騎士団の者なのですが、近辺で死体が見つかりまして、それの調査にまいりました。

どなたか、いらっしゃいませんか?」


屋敷の前で叫ぶも、誰も来ない


「…留守って事はないと思うんだがな」

門が空いていたので、中に入る


「入りますよ?」

扉に手を掛け、開ける


「は?」


血、血、血。地面には血と死体しかない


それと歌声


廊下の奥の方から聞こえる


「いったい、何があったって言うんだ…」


歌声が聞こえる、部屋の扉を開ける


そこには血で染まったナイフを持つ少女が華麗に歌っていた


そのドレスは赤色に血塗れ、元の色は想像もつかない


騎士団に、連行される




——————


「判決を言い渡す。今事件の犯人、◼︎◼︎◼︎◼︎を、服毒刑に処す。」


少女は、死刑となった


『————♪——♪——————♪』

まだ、歌う


それは、死刑の直前まで



毒が体に回る

そして、最期に


『———いつか絶対、見つけるからね———』



そうして◼︎◼︎◼︎◼︎は哀しき愛の物語を終えた








◼︎そして現在———


鋭い毒の苦痛で、昔を思い出す

一度同じ毒をくらっているので、抗体ができてはいる

だが、もうじき体に毒が回り、今度こそ死に至るであろう


だが、それまでは


死ぬまで、絶対に彼を諦めない



最期の歌が、墓を震わせる———

悲しい過去

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ