第二十九話-夜の墓場-
◼︎応接室にて
「これで、全員集まったわね。」
応接室に、依頼のメンバーが揃う
「それじゃあ、事前に決めたチームを作って、グルーゼリヒスに向かいましょう。」
リヒトは伝えられた人物を探す
「えっと、君が、今回のチームメンバー…かな?」
「はい。そうです。私のことは、ナリアと呼んでください。」
白髪の少女が、そっけなく返事を返す
「そうか…僕のことは、リヒトって呼んでくれたらいいよ。」
「わかりました。今日はよろしくお願いします、リヒトさん。」
そっけないなぁ…と思いつつ、挨拶を終わらせたリヒトは、グルーゼリヒスへの道を進み始める
「ナリアは、どうして、傭兵団に入ったの?」
「私ですか?私は、お金が欲しかったんです。」
「…」
話が続かない
あまり話しかけ続けても迷惑だろうと思い、リヒトは静かにグルーゼリヒスへの道を進むことにした
そして、着いた
「どうもどうも、あなたたちが傭兵団の方々ですね?本日は宜しく頼みます。」
「えぇ、こちらこそ、宜しくお願いします。」
墓守と、セリーナが互いに挨拶を交わす
「それでは、その時の情報を詳しく教えていただけますでしょうか。」
「わかりました…初めてあの現象が起こったのは、丁度クレープスどもが王都を襲ってから、1週間後のことでした。
あの時、私はいつもの様に墓の周りを巡回していました。
しかしその時、薄暗い霧が段々と周りに満ちてきて、ふと耳を傾けると、何か歌う様な声が聞こえてきたんです。そして、それが何だか心地よくて、歌が聞こえる方に向かってしまったのです。
そして、霧の先に人影が見えた時、霧が晴れ、その人影も、歌も消えてしまったのです。
それから、毎週金曜日の夜、謎の歌と、人影が現れるようになったのです。」
「成程…それでは、本日の夜に合同で調査をする…ということで宜しいでしょうか?」
「えぇ、傭兵団の皆さん、ご協力感謝申し上げます。」
そうして、墓場の調査が始まる
本番は夜だが、まだ明るい今のうちに、何か痕跡がないかを探すという流れだ
各々チームに分かれ、痕跡を探す、が、
「うーん…ナリア、そっちは何か見つけた?」
「いいえ、何も。」
「やっぱり…夜が本番か…」
結局、どのチームも何も見つけられずに、夜が近づいてきた
「あぁ、そうだ、ナリア。」
「どうしました?リヒトさん。」
「君は、どのくらい戦えるの?」
「少なくとも、リヒトさんよりは、強いと思っています。」
「えっ」
(結構、厳しいなぁ…)
そうして、夜が来る
「———っ!」
辺りが霧で包まれ、視界が悪くなる
『——————♪—♪———♪——!」
微かに歌声が聞こえる
そのメロディーは一見、明るく、楽しそうに聞こえるが、逆に寂しさも感じさせる
とにかく、それが調査対象には間違いない
そして、この広大の墓地の中で、一番それに近いのはリヒトたちであった
「行こう、ナリア。」
「はい。」
人影の、すぐ近くまで近づく
気づかれないように、ゆっくりと
だが、歌が、止まる
『———イェイル…?イェイルなの…?』
(———っ!気づかれた…!?)
『…そう…違うのね…』
女の声から落胆と絶望を感じる
『イェイル…何処にいるの…?私…ずっと…』
『どうして、私を置いていったの?』
周りの霧が少し晴れる
そこには、ドレスを着た可憐な少女がいた
その瞳には、涙が浮かんでいる
それと同時に…灰色の髪と、黒くひび割れた瞳が、こちらを覗いていた
(クレープス…!?)
リヒトが状況を認識する、と同時に、歌声が響く
『————♪———♪—————♩』
先程とは違い、その歌は、哀しみに溢れていた
地面が、揺れ、割れる
そして、その下からは…埋葬された者の一部が、クレープスとなって現世に蘇る
それが、死者への冒涜であるかは、死者本人に、聞くべきであろう
(死者がクレープスに…?どうしたらそんな事が…)
「リヒトさん、こっちに向かって来ますよ。」
ナリアの言葉の通り、複数のクレープスたちが二人を襲う
「この様子だと、他の場所もこんな感じだろうね…」
「はい。私もそう思います、ですが、恐らく原因はあのクレープスでしょう。
と言うことは、殺せば止まります。」
ナリアが弓と矢を取り出す
「私は、後方から援護をしますので、リヒトさんは、前衛を頼みます。」
「あぁ、わかったよ。」
リヒトが、ナイフを取り出す
———第一楽章、開幕
『———♩—————♪—♪———』
少女は歌う、ただ一人のために
『私が…いつかあなたを見つけ出して見せます———』
恋する少女の歌声は、何よりも透き通っていた




