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夢幻のアルデモース  作者: KANAR1024
第一章-クレープス・エクリクシ-
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第十九話-決着-

光が———見えた———


——————

◻︎いつかの記憶


「「おはようございます!スペクルムさん!」」

「あぁ、皆さんおはようござます。」


明るくなった空の下、王都に佇む孤児院で朝が始まる


親が死んでしまったり、親が行方不明になってしまった子供達が大勢いる孤児院

その孤児院の院長、スペクルム・ラシュートには、二人の実子がいた

ムニェカ・ラシュートとシカトリス・ラシュート

可愛いくて幼い、娘と息子である


妻はいない、クレープス・エクリクシで死んでしまった


だからこそ、彼は孤児院を開いた

子供達の悲しみを、少しでも無くせるように


みんなで畑仕事をし、洗濯をし、勉強をする

これは、未来に向けた準備である


皆んなが明るい未来に歩めるようにする、準備である


スペクルムの実の子供たちは、孤児たちと、すっかり馴染んでいるらしい


スペクルムの1日は、子供達への挨拶から始まり、事務仕事や子供達と触れ合い、最後には寝る

という実に平和な1日である




———だが、人とは醜い生き物である










———暑い

とある日の深夜、どうにも部屋が蒸し暑く、スペクルムは目を覚ました


耳を澄ませる


———パチパチと音がする


悪寒、それはある最悪を想像したからだ


煙の、匂いがする


恐る恐る扉を開けると、そこには煌々と燃える炎が在った———



———皆さん!!!大丈夫ですか!!!

炎に包まれた孤児院の中、スペクルムの悲しく必死の声が響く

だが返事は返ってこない


なんで、いきなり火が、どうして


そう思いつつ、スペクルムは子供達を探し回る


炎が立ち込める中、泣く声が聞こえてくる



そうして扉にたどり着く


開く


———おぇぇ

嘔吐する



そこには複数の子供の死体と、瀕死のムニェカを抱き抱えるシカトリスがいた


一体、何が、どうして、いきなり


シカトリスに何があったのかを問い詰める



シカトリスは、泣きながらも一生懸命に言葉を紡ぐ

その節々からわかったこと


不審な男たちが急に入ってきて子供達を襲った





は?


どうして、なぜ


疑問が渦めく


しかしこのままでは全員死んでしまう


そうして、炎が立ち込める孤児院から脱出を終える

だが、連れてこれたのは実子二人

他の子供達は、すでに死んでいた


崩落しつつある孤児院を茫然と眺める


そして近くに二人の浮浪者がいた


その者たちは不気味な笑みを浮かべている


まさかと思い、スペクルムが近づく


———おいあんたら、何して…


手には、火がついた松明


「あ?なんだ生き残りがいたのか」


突然浮浪者が襲ってくる


咄嗟に避けるも、消耗し切ったスペクルムの体が壁に押し付けられる


———いったい、なぜこんな事をしたのですか!!


怒りが渦巻き、溢れ出る


浮浪者から答えが返ってくる


「あ?ガキどもが五月蝿(うるさ)かったんだよ。」

人間の闇、悪意、狂気に触れる



は?

なぜ、そんな理由で?

どうして、私たちが傷つかなければいけないのか






———あぁ、そうだ、人間とは、利己的で、悪意にまみれているのだ

そうだ、そうに違いない


じゃあどうする



殺すしかないか





元々緑色であった髪が灰色に変色する


絶望の色


瞳の色は変わらず翠緑だが、生気はない



「ま、あんたにも死んでもらおうかな。」

浮浪者がナイフを取り出す



浮浪者が死んだ


影に包まれた鏡に両断されて





「ひっ、ばけも——」


もう一人も死んだ


あぁ、そうだあの時だ


影鏡の使用に制限をかけたのは


だって、思い出してしまうから


あの夜、クレープスになった私は、復讐を誓った


当事者は、あの時殺した

だが収まらない


狂気と憎悪が

王都を滅ぼせば、収まるのだろうか


そうして、計画を立てた


あの時ともにクレープスとなったムニェカとシカトリス…

いや、ドールとスカーと共に、人間へと復讐する計画を


だが、この様はなんだ


青年に胴を真っ二つにされた







失敗した
















否否










否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否!!!!!!!!!!!!!!



ここで終わってたまるか


ここで死んだら、果たせない


子供達の仇撃ち、復讐を———




脳の十割を狂気に侵食され、もう正常な判断はできていない

これがもう、()()()()なのかすらわからない



だが、最後に残った命令、意思


それを遂行する———





◼︎

ミラーはリヒトに斬られ、胴から真っ二つになっている


(もう、立ちあがる力も、少ししか残っていない…)

技巧を酷使し、ボロボロとなったリヒトにはもう力はほとんど残されていない




だが、


———ピキピキ


ミラーが分断された胴体を無理矢理影鏡で()()


すでにミラーはただ狂気を遂行せんとする暴走した意識


それまで七割の狂気と、三割の善意で成り立っていた実力差が、覆ろうとしていた



突如現れた無数の影鏡から大量のクレープスが流れ出る


消耗をしているリヒトたちにそれらに構っている余裕も、対抗する余力もない


そしてミラーの意識は王都にいる民へと———





———総員!突撃!

誰かの号令がかかる

だがそれはミラーのものではない


合図に合わせて、王都にいる全勢力が一斉にクレープスたちへと攻撃を仕掛ける




「間に…合ったか…」

重傷を負い、戦場から離脱していたフォートが息を切らしながら立っていた


「王都中の、戦力を集めてきた…最後の戦いを始めるぞ…!」



総力戦が始まった



———


「gyuuiiiiiiiiaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」


すでに狂気の化け物へと堕ちたミラーが襲ってくる

だが、


「愚かな…まだ理性があった時の方が上手く戦えていただろうに。」

ライルの爆弾がミラーを捉える


———ボォン!


爆発し、肉片が飛び散る


も、それすらミラーは影鏡によって接続させる


「いやはや、これは厄介ではないか。」

ライルがミラーの攻撃を避ける


「フン!!!」

すっかり自己回復を終えたフォートの最高の一撃がミラーの骨を砕く、

だが立ち上がる



「gyuiaaa!!!」


影鏡から超巨大な岩が出現する


「総員退避!!!」

全員、ギリギリで避ける


「gyi!」


ミラーが王都に入ろうと———「行かせねぇよ。」


凍結


ミラーの体が凍らされる


動けない

影鏡で無理矢理動こうとする


だがそこにリヒトが近づいてくる



「もう、貴方の負けですよ。」


刀が構えられる


その言葉も、もうミラーには聞こえない


これも、リヒトの正真正銘最後の一撃、いや、一秒








「さようなら、ミラー」



技巧による百の斬撃が、ミラーの体を再生不可能なほどに粉々にする







最期の時、ミラーが何を思ったか、そもそも思うことができたのかはわからない



だが、









この戦いは終わった。

狂気って怖いね

人って怖いね

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