第十八話-風は疾る、雷よりも迅く-
「ぐっあぁ…!」
一閃により断ち切られたミラーの腕が空を舞う
(なんだ!?今の速さ、まるで…)
「おい、ミラー。」
一閃を放ち、レオンを抱き上げた青年が言う
「お前は殺す。」
明確な、殺意
それは、リヒトにとって、クレープス・エクリクシ以来の大激昂であった———
———ミラーとリヒトの、二度目の会合、それは必然的に起こるものである
「師匠、休んでいてください。」
「チッ———休ませるわけ、ないじゃないですか!」
ミラーが襲いかか——「俺も、いるぞ。」
ミラーの背後からイスタールが近づき、凍結させようとする
「チィッ!!」
ミラーが避け、苦悶の表情を見せる
そこには、リヒト、イスタール、ライル、アティスが立っていた
「これからは…僕たちが相手です。」
第二試合が始まる———
——————
「あぁ……本当にあなた達は鬱陶しいですね…!!」
ミラーが叫ぶ
大量の影鏡を出現させ、その中からは大量の剣の破片が降り注がれる
だが、ライルの爆破により破片は影鏡諸共吹き飛ばされる
「どうやら、あなたが一番厄介なようですね!」
ミラーはそう言ってライルの方を向く
「はてさて、本当にそうかな?」
ライルの煽りをミラーは気にも止めない
そこにアティスが後ろから忍び寄る
「勿論、気づいていますよ」
ミラーが影鏡で攻撃を加えようと…
———パリィン!
横から超高速で現れたリヒトに影鏡を叩き切られる
「チッ!」
「随分と連携が取れているじゃありませんか。」
ミラーは少しの危機感と怒りを感じていた
——————
(左足の骨が折れたか…)
リヒトが左足に痛みを感じる
数度の技巧の使用
それによって、痛みは忘れているものの、肉体へのダメージはそこそこ重いものであった
(だけど…まだ、まだやれる)
再び気合いを込める
もっと、更にもっと速く
リヒトは速さを求める
更に速く動く姿を、リヒトは想像する
リヒトの潜在技巧———その効果は…
自らが事前に想像した動きを一秒間で強制する
と言うものである
それは、諸刃の剣
速く、複雑な動きを想像すれば、それに応じて肉体への負担が高まる
一歩間違えれば直ぐに死んでしまうような能力
故にレオンはこれを使うことを禁じていた
しかし、怒りとこれまでの経験によって、それは拙くも制御されつつあった
———ヒュンッ!
リヒトの超速の斬撃がミラーの脇腹を抉る
血が、滴る
そこに仲間たちが攻撃を叩き込む
ミラーに隙を与えず、ミラーを殺さんとす
次々と出現する影鏡も、片っ端から爆破されていく
消耗し続けたミラーの反応が少しずつ鈍る
その時、ミラーの顔が狂気に染まった———
———油断は、しない
イスタールはそう決めていた
だが、攻撃をくらってしまった
ミラーの体内から突き出てきた剣に反応が間に合わず、刺されてしまった
「痛ッ」
すぐに刺された傷を凍結し、止血する
———ミラーは狂気に包まれた
影鏡がすぐ壊されるのならバレないところから出せばいい
狂気である
そしてミラーは
イスタールの負傷により連携に生じた僅かな綻びを掴み取り、反撃を開始する
ライルが投げた小石を影鏡ですぐさま回収し、彼らへとばら撒く———
が、爆発しない
ライルによって爆発を中断された小石が地面に転がる
影鏡が大量に展開される
その中から大量の剣が突き出し、襲う
ライルやイスタール、リヒト、アティスを斬りつけるも、再び立ち向かってくる
実に、実に不快
さっさと殺したい
そのような感情が溢れ出る中、リヒトの強い殺気を感じた
——————
師匠と僕の技巧は似ている
だけど、決定的に違うところがある
師匠の技巧は、短縮しているだけだから、攻撃の強さは変わらない
でも、僕の技巧は、実際に速度が上がるから、威力も上がる
だから、僕の技巧の方が、攻撃力は高い。
もっと、もっともっと、もっともっともっと速く、僕が死ぬ限界まで
もっともっともっともっともっともっともっともっと速度を———
想像をする
技巧 発動
地面に落ちていたレオンの刀を拾う
それは師から弟子への贈り物
それにはレオンの、最大限の応力が込められている
———戦場に風が疾る それは、雷よりも迅く———
斬った———
つよいね




