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復讐なんていたしません!死に戻り令嬢は長生きだけが目標です〜愛だの恋だのに興味はないと言っているじゃありませんか!〜  作者: 初瀬 叶


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第7話

「おめでとう、ロバート」


「アンジェリカ、ありがとう」



ロバートのお誕生日パーティーは、同じくらいの年頃の貴族の子どもたちが多く招待されていた。

さすが歴史の長いゴールド伯爵家といったところだ。


「ロバート様! おめでとうございます!」


私の背後からジェーンがビョコンと顔を出す。ちなみにジェームズは風邪をひいて欠席。ここまでは一度目の人生と全く同じだ。


「あぁ、君がアンジェリカの妹になったっていう── 」


「ジェーンです! よろしくお願いします!」


ペコリと頭を下げたジェーンにロバートは少し面食らったような表情だ。私とは正反対な振る舞いのジェーンに驚いているのかもしれない。


「これ──」


私がプレゼントを差し出すと、ジェーンはその上に被せるように自分のプレゼントをズイッと差し出した。


「プレゼントです! ロバート様のことを想って選びました! ねぇ、開けてみて?」


可愛く首を傾げるジェーンに私は思わず釘付けになった。


一度目の人生ではジェーンの容姿の良さは認めていたものの、がさつな態度にいつも呆れたものだった。── しかし、今思うと男性はこのような素直な女性を好むのかもしれないと、彼女の言動に感心してしまう。

『貴方を想って選んだ』なんて、私は今までの人生で照れくさくて使ったことがない言葉だ。


そこまで考えてアッシャー殿下とのことを思い出し胸が痛んだ。


『初恋』

無惨な結果に終わったが、あれが私の初恋だった。決してロバートを嫌っていたわけじゃないが、恋をしていたことはない。── きっとそれが一度目の人生でロバートにも伝わっていたのだと思う。だからジェーンに奪われた。そしてそれを仕方ないと思う自分もいた。


私はこれからこの人生で恋なんてしない。でも長生きする為にはこうした『あざとさ』も必要なのかもしれないと思い知る。

現にロバートはそんなジェーンを見て、少し頬を赤らめていた。


二つのプレゼントを同時に差し出されたロバートは少し困惑しながらも、まず先にジェーンの贈り物のリボンに手をかけた。


「これは── 」


ロバートはそのタイを手に取り、少し眉をひそめた。


もちろんジェーンが贈ったのはあの例の私から横取りした赤いネクタイ。


ジェーンは私をチラリと見てフフフンと鼻で笑う。かなり高価な品だ。ロバートが喜んでくれると確信しているのだろう。── しかし。


「これは……隣国産のシルクか」


「はい! 最高級のシルクだそうです。隣国は養蚕業が盛んだと── 」


満面の笑みで説明するジェーンにロバートはため息をついた。その様子にジェーンは言葉を切る。思っていた反応と違うことに戸惑っているようだ。


「知らなかったのかな。ゴールド伯爵領では養蚕業を主としていてね。確かに隣国が養蚕業が盛んなことは知っているし、君がそれを使うのは勝手だけど、わざわざ誕生日プレゼントにこれを贈る意味が── 」


「ご、ごめんなさい! わ、私知らなくて── 」


ジェーンは慌ててそのネクタイを箱ごとロバートから奪うようにして、自分の手に戻した。


「まぁ……君が僕に興味がないことはよく分かったよ」


そして続けてロバートは私のプレゼントの包みを剥がした。

ジェーンは私の横で俯き、顔を真っ赤にして黙り込んでいる。


「わぁ! これはいいな。よく僕の好みのものが分かったね」


ロバートはネクタイを自分の胸元に当てて見せた。


「よくお似合いです」


私が微笑めば、ロバートはそっと産地を確認する。


「うちのシルクだ」


「もちろん。ゴールド伯爵領産の絹は最高級品ですもの」


隣でジェーンがプルプルと震え出した。


「私を騙したのね! ロバート様聞いてください! このネクタイはこの人が勧めたんです! 私は騙されたんです!」



真っ赤な顔で拳を震わせながら、私を指さすジェーン。

大声を出すものだから、周りも物珍しそうにこちらをチラチラと見始めた。


ロバートが私をチラリと見る。私は大袈裟なほどに眉を下げた。


「確かに最初、華やかなそれに無意識に惹かれて手に取りましたが……直ぐに国内産の物ではないと気付いて、止めようとしたんです。そしたらジェーンがそれを横から奪って。私、言おうとしたわ。それは隣国産のシルクだって。商人だって言っていたし、貴女もそれを聞いていたじゃない」


だからこそ、さっきも隣国は養蚕業が盛んだと自分でも言っていたではないか。


「そ、それは聞いたわ! でもゴールド伯爵領のことを教えてくれれば── 」


「それも教えようとしたわ。その言葉を遮ったのは貴女よ?」


ジェーンは唇を噛み締めた。きっと自分のあの時の行いを思い出しているのだろう。私を悔しがらせたいという一心で、あのネクタイを選んだことを。


「自分の勉強不足を他人のせいにしてはいけないよ」


ロバートもジェーンを窘める。


私の持ち物をとにかく欲しがるジェーン。そこにあまり深い考えはない。私にもそれが何故なのかハッキリとした理由はわからない。

だが、一度目の人生でジェーンに奪われたものが数え切れないことは確かだ。


── ならばそれを私が利用しても問題ないだろう。


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