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復讐なんていたしません!死に戻り令嬢は長生きだけが目標です〜愛だの恋だのに興味はないと言っているじゃありませんか!〜  作者: 初瀬 叶
第2章

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第15話

「踊ろう」


差し出された手を凝視する。夢……ではないようだ。夢なら良かったのに。


「わ、私ですか?」


「他に誰がいる」


ゼイン殿下は相変わらずの無表情で私をダンスに誘っている。

アークロイド卿の腕に添えていた手はとっくに引き剥がされ、私は今、注目の的だった。


「私は伯爵家の者ですが── 」


「知っている」


デビュタントで王族とダンスを踊る順番は上位からと決まっている。

私の上には確かにモーブレイ侯爵家のご令嬢しかいないが、彼女を差し置いて私? それに伯爵家のご令嬢は他にも居る。


「モーブレイ侯爵── 」


「あれはアッシャーが相手をする」


──取り付く島もない。


「順番が──」


まだまだ言い訳し足りない私の手をゼイン殿下は強引に引いた。私はバランスを崩して彼の腕の中に抱き込まれる。


「も、申し訳── !」


私が急いで体を離そうと試みるも、ゼイン殿下の腕がぎっちりと私を抱えて離さない。


「慌てるな」


「慌てていないので離してください」


私は力を込めてゼイン殿下の胸を押し返した。


「確かに。抱き合っていてはダンスは踊れない。では行くぞ」


「な、ちょ……! 待って!」


今度は私の手をガシッと掴んだ殿下はその手を引っ張って会場の中央へと向かう。


そこには目を丸くして私と殿下を見つめるアッシャー殿下とモーブレイ侯爵令嬢。


周りのギャラリーも呆気に取られたままだ。



中央まで来たゼイン殿下は私と向かい合わせになるとダンスのポジションを取る。


「あ、あの……」


私はまだこの状況が飲み込めず殿下に声をかけるが、彼は少し挑発するように私に言った。


「踊れないのか?」


その言い方に少しカチンとくる。


「いいえ。ダンスは得意です」


「なら問題ない」


まるでそれを合図にしたように、楽団が音楽を奏で始めた。

『売り言葉に買い言葉』そんな慣用句が頭を過るが、体に染み付いた癖というのは恐ろしい。私はゼイン殿下のリードに合わせ、足を踏み出していた。




「得意だというだけはある」


「……お褒めにあずかり光栄です」


ゼイン殿下のリードは驚くほどに体に馴染む。まるで何回も一緒に踊ったことのある相手のようだった。


この状況に未だ混乱していると、殿下の口角が少し上がる。


「ドレス良く似合っている」


「……お礼が遅れて申し訳ありません。素敵なドレスを贈っていただき── ありがとうございます」


「俺は自分がやりたいようにやっただけだ。気にするな」


ゼイン殿下の口角は上がったまま。── 今日は機嫌が良いようだ。


「ただ── 。この夜会が終わったらドレスもアクセサリーもお返ししたいと思います」


私の言葉に殿下の眉が微かに動く。


「気に入らなかったか?」


「いえ、そうではなく。いただく理由がありませんから」


よく考えたら王太子殿下にドレスを贈られるという状況が既に異常事態だ。その上殿下のファーストダンスの相手をしているなんて── 心を無にしなければ、目眩で倒れそうだ。


それに……うちには『欲しがり』が居る。私はダンスを踊りながらも凄い形相で私を睨みつけているジェーンの姿を目の端に捉えていた。


「理由など必要ない」


「それに不相応です。私には豪華すぎます」


「── それだけが理由か?」


殿下と視線が合う。全てを見透かされそうで居心地が悪い。私はフッと視線を逸らした。


「それ以上に理由などありません」


ゼイン殿下が私の手を強く握る。


「── そうか。ならば一旦預かろう」


預かる? 私は返すと言ったんだけど。


「お返しすると──」


「いずれまたお前の手に戻る。いずれな」


「何の話──」


そこで丁度音楽が終わった。


殿下は強く握っていた私の手を離すと、また少し口角を上げた。


私はモヤモヤとしながらも腰を落とし挨拶をする。


「続けて踊るのは些か面倒なことになりそうだ。アークロイド!」


頭上から殿下がアークロイド卿を呼ぶ声が聞こえた。


駆け寄る足音に私は頭を上げる。


「お疲れ様でした。さぁ、どうぞ」


私ににこやかに腕を差し出すアークロイド卿。私は既に背を向けていた殿下へと視線を投げる。

殿下は振り返ることなく、そのまま陛下の元へと向かう。私は何が何だが分からぬまま、アークロイド卿の腕を無意識に取っていた。




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