表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役に生まれたのなら、徹底的に悪の道を貫いてやる!  作者: 鈴木ハルカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
89/102

魔族領 2


 「警戒!左右は弓兵と思われる。そちらは私とマリアンヌで対処する」


 「全体。停止」


 ダレンが私の声で警戒パターンに移行するよう、声を上げた。


 既に馬車左側の小麦畑に馬を走らせたマリアンヌ。

 ならば、私は右か。

 

 グリュックに踵を当て、一気に速度を上げる。


 畑に潜伏していた弓兵との距離を詰める。

 馬の突進にビビった相手が立ち上がり、狙いも定めず弓を引いた。

 正面からだが、何の指示もなしにグリュックは矢を避けてみせる。

 私も背中のハルバードを外し、両手でそれを持つと、タイミングよく振り抜いた。


 ハルバードは相手の弓と腹を切り裂き、相手は馬の突進力も加わった一撃を受け、血しぶきを上げながら飛ばされていく。

 だが、最後までは見ていられない。


 グリュックの手綱を操作して、馬車正面の賊に迫る。


 人影が視界に入ると、チャージ体制をとった。

 弓が二人に、剣が三人。


 馬の突進に気がついたようで、慌てたように獲物を構えるが、遅い。

 グリュックの突進で、二人がハルバードの血祭りに上がった。


 手綱を操作し、馬首を巡らせる。

 残っているのは弓が一人に、剣が二人。


 「お前らは何者だっ!」


 大声を張り上げ、馬上から誰何してみる。


 「お、俺たちは、雇われただけなんだ」


 一人の男が剣を捨て、両手を上げた。

 それを皮切りに、弓から矢を外し同じように手を挙げ、もう一人も剣を捨てた。


 「誰に雇われた」


 「そ、それは……。」


 「言えないのか?」


 「……はい」


 男の受け答えに、賊であるのか疑問に思えてきた。


 「もう一度聞く、お前達は何者だ?」


 「俺たちは、この先のオリンズの街の冒険者です」


 「冒険者?それが、馬車の隊列を襲うのか?」


 「魔族を乗せた馬車が通るから、それをやらないと街が危ないって言われて」


 「私たちはカメリアの国に代わって、この任に着いている。警察に聞いていないのか?」


 「……。」


 生き残った男たちは、互いに顔を見合わせていた。


 「話しにならんな」


 「ま、待ってください」


 「何か?」


 「お、俺たちはどうなっても構いません。ただ、街の人間にはどうか……。」


 「何を言っているんだ?」


 「あ、あんたら、街を焼いて回ってるって……。」


 「国の指示でか?バカも休み休み言ってくれ」


 「だって、アルベドの偉いさんが……むぅっ!?」


 男の一人が、余計なことを喋りそうになった男の口を、手で塞いだが、私の耳には聞こえてしまった。

 そう、アルベドと。


 「アルベドか……面倒だな。お前達は街に戻れ」


 それだけ言って馬車の方へと戻る。

 やはり、アルベドは相当な大きさの組織で、ロバートはその一端だったのだ。

 しかも、街の民意を操ることもする。

 厄介この上ない。

 ここから先、宿泊はおろか、補給もままならなくなりそうだ。


 馬車の列に戻ると、男たちと話したことを伝えた。

 マリアンヌも頭を抱えそうになる。


 「ここは開け過ぎている。少し、隠れられそうな場所まで移動しよう」


 街道を逸れて、左手の畑の奥に見える森を目指した。


 「どうするの、リケちゃん」


 「街道をそれるしかないが……恐らく、そちらも待ち伏せありだろうな」


 「そう見るのが普通ね」


 ポータルの魔法で移動できなくもないが、カメリアの入出国記録がつかなくなってしまう。

 特に、今回は十四人の子供は、出国させたら戻らないのだから。


 「厄介すぎる」


 「……ねぇ」


 少女が控えめな感じで、私に声をかけてきた。


 「どうした?心配するな、必ず送り届けるから」


 そう言って、美しい金色の髪を撫でてやる。

 

 あれ?

 この少女、耳が長いな。もしかして、エルフなのか!?


 助けはしたが、大使業務に忙殺されて、子供たちとの時間が取れていなかった私は、一人ひとりの名前も種族も全員は把握していなかった。

 

 「あのね。違うの。この森の奥にね。妖精の小道があるの」


 「妖精の小道ってなぉに?」


 マリアンヌが興味津々といった感じで、エルフの少女に聞いた。


 妖精の小道。

 ファンタジー作品にたまに出てくる、現世に開く妖精界の入口で、その道の先は現世の別の場所につながっているそうだが、妖精の道案内無しに通り抜けるには、魔女だったりと特殊な条件が必要だったはずだ。


 「案内できるか?」


 「うん。妖精が手伝ってくれるよ」


 少女は満面の笑みで答えてくれた。

 腹を括るか。


 「よし。全員降車」


 私の掛け声で、馬車から子供たちが降りてくる。


 「どうしますか。大使」


 「今日は、ここでの野営となる」


 全員の表情が堅くなるのが分かった。


 「この先、恐らくだが、敵の妨害工作を受けることが予想される。そこで、私たちは別の方法で目的地まで移動することになる」


 「それは、さっきの子が言ってた」


 マリアンヌが、そう聞き返してくる。


 「賭けだが、妖精の小道を使う」


 「それしかないわよね……街道を外れると言っても、待ち伏せはあるだろうし」


 「だが、馬車移動の想定だったから、荷物がな」


 最後まで馬車の予定であったため、徒歩移動の装備がほとんど無い。

 

 「馬車の幌とかマントを使うしかないわね……歩くなら、リケは装備も考えないと」


 そうなのだ。ハイデル王国の正式任務に当たるので、フルプレート装備なのだ。

 ブーツと小手だけ着けて、後は鎧下で行くしかない。


 「食料と水は最小限でいい。この先は、私、ダレン、マリアンヌ、ヴェーダの四人が付き添いになる」


 「馬はどうしますか?」


 「馬車と馬は帰す。荷物を降ろしたら出発してくれ。私たちが諦めたと見えるようにな」


 馬車から必要な物資を降ろすと、他の武官に馬を預け帰らせた。

 私の装備もブーツと小手とマントだけだ。

 愛用のハルバードも馬車に乗せたので、武装はロングソードとダガー二本。

 武官のダレンも私と同じ。

 

 マリアンヌは自前の黒革装備なので、変更はない。


 「さて、どうやって荷物を運ぶかだな」


 「荷物を確認しましょう」


 ダレンが、降ろした荷物を確認している。


 「水袋は十分にありますね。食料も乾物だけになりますがいけるでしょう……バックパックがないのが痛いですね」


 「馬からサイドバッグは降ろしたから、コレに詰め込むしかないな」


 「寝具とテントはあきらめましょう」


 「それが良いな」


 干し肉とパン、乾燥させた果物をより分け、バッグに詰める。

 後は必要なポーション類に、包帯などの医療品。

 それに水。

 寝袋も人数分あるが、流石に持ち運べない。

 しかし、雨天用のコートがある。

 これなら、着て歩けるので荷物にならないし、フードを被れば……なんとかなるだろう。


 荷物は私、ダレン、マリアンヌの三人で受け持った。

 妖精の小道がどこにあるかは、エルフの少女次第だが、無くとも三日で関門だ。

 なんとか、しのぎきらなくてはな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ