頭痛の種 3
「日暮れに待ち合わせとはな、なかなか色のある夜になりそうじゃ」
バズ爺さんを領事館にお招きした。
「今夜はカメリアでの初仕事ですので、新たな装束をお見せしようと思いましてね」
「装束?」
王都でも使っていた濃紺のマントを跳ね上げる。
「おおっ……まさか」
「そのまさかでございめす」
マントの下は、白を基調とし、赤のラインで縁取られた革鎧に、深紅の鎧下。
ボトムは白で、革鎧同様に赤いラインが入っているが、腿まである白のハイブーツで、あまり良くは見れない。
そして、手には新たな仮面。
それを着ける。
「狐か!?」
「はい。オオカミは譲り渡しましたので、カメリアでは妖狐と名乗ろうかと思っております」
「リケ。お前さんの活躍が、目にできるなんてな。なんと、幸運なんじゃ」
「今回は、バズの手勢という体を、取らせていただきますので、現場もしっかりとご覧ください」
「護衛は、自前ので大丈夫よね」
黒革のフル装備に、黒のマスカレードを着けたマリアンヌ。
トーマスは普段と変わらない。
「三人。少なくないか?」
「ご冗談を。二人で砦を落としたのですよ」
「そうだったな……はははっ!過ぎた真似だったな」
「良し。バズ。号令を」
私が出撃の合図を促すと、バズ爺さんは右手でサムズアップをして、こう続けた。
「行ってこい!」
◆
私たちは、トーマスが張り続けていた場所へと、とびこんでいく。
見た目は、倉庫。
恐らく、内部もそのままであろう。
ただ、地下施設があるように感じているので、入口を探すのが面倒だ。
倉庫に取り付くと、大扉にある人が通れるほどのドアのドアノブを捩じ切り、解錠する。
ドアを押し込むと、するするとマリアンヌ、トーマスと内部に入って行った。
倉庫の中は明かりがつけられており、視界の心配は不要。
思い切り暴れられる。
マリアンヌとトーマスは、入り口近くにいた連中をすでに無力化していたので、私は内部を観察。
獣の匂いに混じり、汗の吸えた匂いもする。
中は木箱や布の掛けられた檻のようなものが、いくつかあり、その内からは生き物の息遣いが感じられる。
魔族領から運び出した魔獣の類いであろう。
私は外で待つバズに合図する。
二人の護衛に守られて、バズも倉庫へと足を踏み入れた。
「こりゃ、獣か?」
「えぇ、確認はしていませんが、魔獣の類いだと思います。危険ですので、布はあげないように」
「分かった。それで、ヤツらは?」
「地下があると踏んでます。漆黒姫とトーマスが探索中です」
バズ爺さんへの説明と解説を終え、再び、倉庫の内部を見回すと、トーマスがくるくると拳を回していた。
あそこか。
トーマスの方に集まると、地面に鉄製の扉があるが、何らかの仕掛けを使い、下から持ち上がるもののようだ。
近くに装置を動かすスイッチがあるはずだ。
そう思い、更に観察しようとしたが、バズ爺さんの護衛の一人が、それを指差していた。
私は頷き返すと、護衛がスイッチを操作する。
重い音を立てて、それが持ち上がっていくと、地下への階段が現れた。
普段は入口の番人に、何らかの印なりを見せ、スイッチを操作してもらうのだろう。
扉が開ききる前に、再び、マリアンヌとトーマスか先行して地下へと降りていく。
「バズは、しばらく待っててくれ。お二人、アイツらを拘束してもらえると助かる」
「任せておけ」
それを聞いて、私も地下へと降りる。
地下は、上とは違う匂いが充満していた。
そう、血の匂いだ。
「野郎っ!」
下から声が聞こえた。
私も階下へ駆け下りる。
通路はトーマスとマリアンヌが、狭いながらも器用に入れ替わりながら、賊どもを戦闘不能にしていっているようだ。
カチャリ。
地下は通路の両脇に部屋があるようで、トーマスたちの位置よりも手前に四つのドアがあった。
そして、その一つが開けられ、中から通路の様子を見るためか、頭を出したヤツがいた。
トーマスたちに気を取られ、奥側を覗いているが、手には投げナイフ。
一気に距離を詰め、頭に衝撃波の魔法をぶち込んだ。
他にもいるかもしれない。
他の部屋のドアを開け、中を確認する。
二つ目を開けたところで、待ち伏せを受けた。
壁際に身を潜ませ、ドアを内側に押し開くと同時に振り下ろされた剣。
ダメージを最小限に……。
気配の方にタックルをぶちかますが、振り下ろされた剣のツバが肩に当たる。
骨が砕けた感じはないが、左腕に痺れが生まれた。
私のタックルで体を崩し、部屋の壁によろけて背に当たる。
胸に衝撃波の魔法を打ち込み、男を沈めた。
心臓に強烈な衝撃を受けると、心室細動などの重篤な症状が起こり、立っていられなくなる。
運が良ければ、心拍は回復するのだが……。




