表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役に生まれたのなら、徹底的に悪の道を貫いてやる!  作者: 鈴木ハルカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/104

開かれる戦端 2

 帰り際、治療院に寄り、ヴーヘラーも傘下に抑えたことで、暇を持て余しているフィッツに、出征のことを伝え、ミアに会いに行けと言い伝えた。


 街の方はトーマスにエギーユが、ブラブラとしつつ、顔つなぎと情報収集を続けている。

 ヨンムはヴーヘラーの拠点をそのまま使い続けている。

 人員もそのまま抱え込んでいるものだから、治療院には入り切らないのだ。

 しかし、ヨンムは金を増やす達人とでも言うのだろうか、金貸し用の資金を少し用立てたのだが、一月後には全額返金となった。


 「返さなくてもよかったのだぞ」


 「借りを作りっぱなしってのは、性に合わないんでね」


 そう言って、笑う。

 単純に増やすのが好きなのだろう。

  

 さて、用事も済んだので、治療院を後にする。

 今夜は久々に、結城結奏と魔法の勉強会だな。


 コンコンコン。


 邸に帰り着くと、結城結奏の部屋を訪れた。


 「どうぞ」


 いつも通りの声が、部屋から聞こえてくる。


 「やっと、手に入れたぞ」


 本を掲げて部屋に入るが、結城結奏は首をかしげて見せた。


 「ポータルの魔法書だ」


 「あぁ〜っ!見つかったのね!!」


 「そうた。これを再現できれば、帰れるぞ!」


 「ほんとに……ほんとに、帰れるのね」


 結城結奏の目から、涙が溢れ出す。

 そうだ。結城結奏は帰るべきだ。

 帰れる場所があるのだからな。

 

 その夜は、二人で魔法書の解読と、理解のための意見交換と、遅くまでのめり込んだ。


 ◆


 夏休み前でソワソワしている学生たち。

 しかし、ロアだけは硬い表情をしていた。


 「ロア。おはよう。なんだ?寝てなさそうな顔してるな」


 いつもは、ロアから挨拶があるのだが、今日は心ここにあらずといった感じだ。

 戦端が開かれる話しを聞いているのだろう。

 何せ、ロアの家は、開戦時に最前線となるのだ。

 国境砦の補強等で、その情報は早くから伝わっているはずで、それが伝えられてきたのだろう。


 「あ、あぁ。おはよう……。」


 「九月だな」


 「やっは、聞いてたか」


 「公爵家だからな」


 「オレはここでお別れだ」


 「スペロア家として戦うのだな」


 「どかーんと、一発で終わらねぇもんかね」


 「そんな、古代の大魔道士レベルじゃないか」


 「なんだよ。ないのか」


 「そんな魔法があったら、ちまちま戦争なぞせんだろ」


 「それもそうか……はぁ〜ぁ」


 ロアが盛大に溜息をつく。

 実力者ではあるが、それだけで生き延びられるほど、戦場は甘くはない。

 いつもの奇襲とは……いつもの奇襲にする魔法はあったなと、ふとポータルの魔法を思い出した。

 

 ◆


 今夜も結城結奏と二人で、魔法書の解読を進める。

 ずいぶんと読み進めているのだが、魔法というよりも古典の課題をやっている気分になる。


 「はぁ〜……古典の授業みたい」


 「古典?」


 私と同じ事を考えていたようだ。

 大きく息を吐きながら、伸びをして、凝り固まった身体をほぐす結城結奏。


 「私の国のね。古い歌や話しを、現代の言い回しに直したりするの」


 「確かに、その古典とやらに似てるな」


 「尊大な表現ばっかりで、読み難いし、解り難いよね」


 「よほど、作れたことに昂ぶったのだろう」


 「あぁ〜……そういうことね。でも、気持ちと文章は分けてほしかったわ」


 「そうだな」


 「今夜はここまでにしましょ」


 「流石に、字の書きすぎで、手が痛くなってきた」


 「目がシパシパする」


 「よし。今夜はここまでだ。また、明日」


 「えぇ、また、明日。お休みなさい」


 「おやすみ」


 結城結奏の部屋を後にして、自分の寝室に戻ると、たまらずベッドに倒れ込んだ。


 結城結奏の言う通り、古典の授業をずっとやってる感覚だ。

 理系人間だった三十路サラリーマン人生では、こんなに古典に触れるとは思ってもいなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ