表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役に生まれたのなら、徹底的に悪の道を貫いてやる!  作者: 鈴木ハルカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/102

ニューイヤーフェスティバル 4

 

「フリーデリケ様。やっといらっしゃったのですね」


 エマだ。

 ドーマ伯爵家の息女で噂好きで、情報の収集能力は舌を巻く。

 貴族や商会、噂の新商品についての調査、収集、そして、その真贋の判断に助けられていた。

 

 「エマ。今夜も素敵なドレス姿だ」


 オフショルダーのワンピースのドレスだが、鮮やかな光沢のあるチェレステの地に、さりげなく散りばめられた銀糸の刺繍は、穏やかに波がうねる地中海を思わせる。

 凄まじい技量を持った職人の仕事だろう。


 それを、卒なく着こなせてしまうエマのスタイルに、立ち居、所作の全てが更に際立たせている。


 デカいだけで目立っている私とは大違いだ。

 

 「また、そうやって」


 そうは言っているが、まんざらでもなさそうだ。

 

 「エマ。素敵なドレスね」


 「あら、結奏?見違えるわね」


 二人ともパーティの会場で会うのは初めてで、互いに学院の制服姿ではないのも初めてだろう。


 「あら?このドレス!もしかして、フリーデリケ様と同じ人のではないかしら?」


 「ハンネさんが作ってくれたんだけと……。」


 あっと、思ったときには遅かった。

 ハンネは、目立ってしまうことを極端に嫌う。

 私の着る服のほとんどがハンネ作であるが、それを言わないで欲しいと言われているのだ。


 「ハンネさんって……。」


 エマの唇に指を当てる。


 「その先は言わないでおいてくれると、助かるんだがね」


 「あれ?言っちゃダメだった?」


 結城結奏に伝え忘れていた私たちのミスだ。

 言ってしまったことを咎めることはできない。

 

 「彼女は目立つことを嫌うのだよ」


 「そうだったんだ」


 「エマも頼むよ」


 唇に指を当てられたまま、コクコクと頷く。 


 「さぁ、最後の夜を楽しもうじゃないか」


 パーティはつつがなく、ゆったりと心地よい楽団の演奏をバックに貴族どうしの談笑に、食事や酒、たまに会場に降りてくるハイデル王。


 「フリーデリケ。久しいな」


 「ニコラウス伯父様」


 なんとも気安くお声掛けなさるのは、現ハイデル王であるニコラウス・ハイデル、その人だ。


 「あら、ステ……。ハイ…むぐ」


 再び、エマの口を塞ぐこととなる。

 今回は手にしていたパイを突っ込んだ。


 「そこまでせんでもよかろうに」


 私のエマへの処遇に、苦笑いを浮かべるハイデル王。


 「お父様と同席していたのでは?」


 「アダルガーか……そろそろ降りてくるだろうな」


 「あぁ…ダンスの時間」


 「それよりも、そちらのお嬢様方を紹介してくれんのか?」


 「私にパイを突っ込まれているのは、ドーマ伯爵家のエマだ」


 「ちょっと、リケ!その紹介はないでしょ!!」


 口元に残るパイをナプキンで拭うと、美しい所作でカーテシーをしてみせる。

 流石、エマだ。


 「紹介にあずかりました。ドーマ伯爵家のエマと申します」


 「フリーデリケの友達は大変だな。それで、そちらは」


 「アスカニア家預かりとしている。召喚の聖女、結城結奏だ」


 結城結奏を前に押し出す。


 「結城結奏と申します」


 そして、お辞儀をした。

 緊張しているのだろうか、ハンネの教えたことがすっかり抜けてしまったようだ。


 「結城結奏……あなたには多大な迷惑をかけている。国の代表として謝意を」


 ニコラウス伯父様が頭を下げた。

 年端もいかない小娘に対して、あってはならないことであるであるが、結城結奏には受ける権利がある。


 何気ない所作で、その姿を隠す。

 こういう時にデカい身体と、ショールの組み合わせは都合がいい。 


 「そんな。頭を上げてください」


 「これだけでは足りんことをした。フリーデリケからも聞いて、帰還の魔法を宮廷でも探させている」


 「そこまでしてくださってるなんて……。」


 「必ず帰すからな」


 ニコラウス伯父様は、結城結奏の両肩に手を乗せた。


 バックの音楽が変わる。

 ダンスの時間だ。


 「あら?公爵様よ」

 「本当に奥様と仲のおよろしいことで」

 「いつ見ても、ご新婚のようね……うらやましい」


 ホール階段をお母様の手を取って降りてくるお父様の姿に、ホールがさざ波のように静かに沸き立った。


 「アダルがーだけに注目が集まるのもな……」


 そう仰ると、私に向かって右手を差し出される。


 「このお誘いですと、アスカニア家で注目を独占してしまいそうですな」


 その手に左手を乗せ、エスコートを受ける。

 

 「そうなってしまうか……だが、アダルがーが悔しがる顔が見れるというものよ」


 「全く」


 先に踊る両親のそばから、ニコラウス伯父様のエスコートで踊り始める。

 流石、陛下。

 水が流れるようにステップされ、自然で無理なくターンが決まる。

 私はそれに身を任せるだけでいい。


 一曲終わり、陛下のエスコートでダンスフロアから出ると、眉根を寄せたお父様がいた。


 「ニコラウス?フリーデリケと、ずいぶんと仲が良さそうだな」


 「アダルガー。何、姪っ子と一曲共にしただけよ」


 ニヤリと笑みを浮かべるハイデル王。

 これが見たかったのだろうな。


 親友であり、同志であり、ライバルである。

 歳を経ても変わらない関係か、私にも築けるのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ