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悪役に生まれたのなら、徹底的に悪の道を貫いてやる!  作者: 鈴木ハルカ


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壊滅 3

 ソルの大剣から繰り出された一撃は、木製のドアなど意にも介さず砕いていく。

 砕けるドア板。

 ひしゃげる金属製の蝶番。


 そして、大きく開いた入り口に、ソルの左右からロアとエギーユが飛び込む。


 「そのまま走れ!」


 二人に号令を出す。


 それは、カウンターから花火の音で、顔を出したのであろう男を私がやるからだ。


 男の顔の前にキラキラと淡く光を放つ、千枚通しのようなものが出現したと思えば、高速で男の頭部を貫き、壁に突き刺さった。


 魔力で作った針だ。


 呪文いらずで、展開も早い。

 コツをつかめば、魔力消費も抑えられるというものだ。


 「ソル。あいつらを追って、部屋のドアを開けてやれ」


 「分かった」


 使えるものは使う。

 屋内の対人戦には向かない大剣だが、建物のマスターキーとしては有能だ。

 とにかく、部屋を開けさせる。


 「なんだぁ?」


 背後から声。


 刹那に反応し、背後に振り返り、男の胸ぐらを掴むと、その体を持ち上げた。


 「本日は貸切でね。他の店に行かれては?」


 男は浮かされたまま何度も頷いたので、地に下ろしてやり、向きを変えさせて背中を軽く押してやった。 


 さて、再び店内に意識を向ける。

 幾つめの部屋かは分からないが、エギーユが部屋から出てきた。

 その姿は、返り血を浴び赤く染まっている。


 エギーユの援護に行こう。


 「エギーユ!」


 「大丈夫!返り血だ」


 何とも頼もしい答えだが、息の上がり方と表情の硬さが気になった。


 「ロア!」


 「ほいよ表からは、ここが最後だ」


 やはり慣れているロアは、緊張を切らせてはいないが、余裕が見える。


 「裏からトーマスとフィッツがやってるんだな」


 「そういうこと」


 「ソルは都合よく、マスターキーとして使われていると」


 「しょうがねぇよ。大剣じゃな」


 「こっちも終わった」


 トーマスの声と共にトーマス、フィッツ、ソルの三人が顔を出した。


 「次にいきたいところだがな……。」


 「坊主か……初めてだからな」


 フィッツが少し浴びた返り血を拭いながら、私の隣にやって来た。


 「一人で帰せるわけもなく」


 「だなぁ……。」


 私の言葉に同意するフィッツ。


 「よし。次の場所は喜びの園って店だ。そこならミアの店が近い」


 「だいぶ東寄りなんだな」


 「なかなかにお高い店だからな」


 「分かった。エギーユを頼む」


 「突入には間に合わせる」


 フィッツは一つの部屋に入ると、シーツを持って出てきた。

 それで、返り血でどす黒く染まったエギーユを包む。


 手に持った剣すら離せない程の緊張。

 そんな状態では、次に連れて行くことはできない。


 ◆


 

 二軒目の喜びの園への強襲も上手くいった。

 部屋数もあったので、後半は応戦されたが、裸に武器だけ持っている相手だ。

 どこに当てても、それなりに効果はある。

 そのようなヤツらにトーマスもフィッツも、それにロアだって後れを取るようなことはなかった。


 ソル?

 ソルも私の背中をしっかりと守ってくれていたよ。

 

 「ここが最後か」


 アルツナイの息のかかった娼館の一つ、溢れる泉。


 流石に連戦ということもあり、メンバーに疲労の色が見える。


 「待ち伏せ……されてんだろうな」


 疲労回復のポーションを煽って、ロアが言った。


 「あり得るな」


 フィッツが同意する。

 

 「ドアノックと同時に、クロスボウの斉射」


 トーマスとフィッツの予想。


 「ひぇ~」


 それを聞いたソルが肩をすくめる。


 「今回はドアノッカーは私がやろう」


 「お嬢!」


 フィッツが声を上げる。

 流石に令嬢を、罠待つところへ行かせたくはないか。


 「大丈夫だフィッツ。考えがある。トーマスとロアは屋根から二階の踊り場を狙えるか?」


 外から見た建物の感じと、気配察知で掴んだ内部構造から、階段を上がったところからも入り口を狙っていそうなのが分かっている。


 「ダーツは得意だよ?」


 トーマスが投げナイフを弄ぶ。


 「風魔法でいけるな」


 奇襲ということもあり、魔法を使う機会のなかったロアだが、ここではしっかりと使ってもらう。


 「ハイリガー・シュッツ(聖なる加護)」


 全員の身体を薄い膜が包み込む。

 防御に特化した魔法で、金属鎧並みの防御力となり、矢やボルトのような飛び道具からのダメージも軽減してくれる。


 「配置に。私のドアノックと共に、二階も頼む」


 「「おうっ!」」


 何とも頼もしい返事だ。


 私は店の正面扉まで進む。

 フィッツとソルは私の後ろに控えて、突入に備えている。


 今回の店は、ロビーも吹き抜けとなっており、何より広い。

 ソルの大剣も活躍できるというものだ。


 私とフィッツの二人で一階の部屋を制圧していき、その背中をソルが守るような陣形となる。


 「ハイリゲ・シルデ(聖なる盾たち)」


 淡く光るをタワーシールドが三枚。私の前に展開した。


 「アンプラレン(衝突)」


 三枚のタワーシールドが正面扉向かって勢いよくぶつかり、その扉を破壊する。

 そして、予想通りに奥からと二階の踊り場からの矢と、クロスボウのボルトが襲ってくるが、タワーシールドに弾かれ、無惨にも床に落ちる。


 タワーシールドはそのまま通路を進み、邪魔するものを弾き飛ばして消えた。


 間髪入れずにフィッツとソルが店に駆け込み、フィッツはタワーシールドに弾かれて転がっている男たちにトドメを、ソルはカウンターを破壊し、その内側で立ち竦む男たちに大剣を見舞った。


 私もフィッツの援護に魔力の針を飛ばす。


 通路奥から、フィッツを狙って襲いかかろうとしていた男の頭を、魔力の針が貫いた。


 私は次に、ドアの閉じている部屋を開けて回ることにする。

 以前も言ったと思うが、この程度のドアの施錠ならば、ないに等しい。


 「うぉぉっ!」


 内開きのドアを押し開くと同時に、男の掛け声。

 引かずに詰める。


 大上段に剣を振りかざした男の懐へと滑り込み、その胸にダガーを埋める。

 ダガーの間合いまで詰めてしまえば、振り下ろされたとしても、男の腕か、柄が当たるだけだ。

 当たろうが、どうというダメージではない。


 膝から崩れ落ちる男を足蹴に、ダガーを引き抜き、次の部屋へ向かう。

 屋内での隊列や、コンビネーションなど望めない場所での戦闘だが、野戦がメインの傭兵とは言え、迎え撃つ準備が整ってしまえば、厄介な相手であることに違いはない。


 兎に角、動いて、撹乱と意表を突き続けるしかないのだ。


 「白狼っ!」


 ロビーからソルの声。

 間違えずに呼べたな。


 そちらへ視線を向ければ、三人の攻撃を凌ぐソルの姿。


 魔力の針をソルの剣の動きとは逆の相手に撃ち込む。


 ◆


 やっばいよ!

 今日、初めてのまともな戦闘が、三対一だなんて、凌ぐだけで精一杯だ。

 

 左から打ち込んできた相手を、大剣の一振りで剣ごとはじき飛ばすが、広さもあるロビー。その隙を突いて右側の男が剣を突いてくる。

 避けたとしても、正面の男の剣が狙っているのが分かるので、大剣を力任せに薙ぎ払い、二人の牽制とした。


 すると、部屋から出てくるフリーデリケの姿が、視界に入る。


 「白狼っ!」


 仮面を着けているときは、こう呼ぶように言われてた。


 フリーデリケが、腕をこちらに振ったと思えば、視界の外にいた左側の男が崩れ落ちる。

 右の男を無視して、正面の男に薙ぎ払いから、大上段に持ち直した大剣を叩きつけた。


 肩口から胸までを切り裂かれ、男は崩れ落ちる。


 残るは一人。


 ぐっと、右側の男目掛けて踏み込み、逆袈裟で男の右脇から大剣を叩きつけた。

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