壊滅 2
「リケ。動きがありそうだ」
週末の治療院の食堂で、遅めの昼食を皆と囲んでいると、珍しくトーマスが顔を出した。
「フィッツからは動きがなくて気持ち悪いと、報告を受けていたが?」
「そりゃ、三日前までよ。急にアルツナイの息のかかった娼館に、傭兵みたいなやつらが集まり始めた」
どっかと、私の向かいの席に腰を下ろしたトーマスだったが、そこはガラハウの席でキッチンカウンターから鋭い視線が向けられていた。
「分かった。エギーユとフィッツは、監視に置いてきているんだな」
「その通り。動きがあったら、打ち上げ花火で知らせてくれる」
「開幕が派手だな……とは言え、悠長なことは言ってられないな」
わずかに思案する。
動き出すなら、日が暮れてからになるのだろう。
コアパーは堅気に近い立場だから、昼日中の方が人でもある。
それに、シノギを奪うとなれば、顧客となる者たちの出入りがなくなってからだろう。
「トーマス。何軒に分かれてて、どこが一番小さい?」
「三軒の店だ。それと、小さいところは、エギーユに任せてる。白鳥のロンドって店だな」
「分かった。トーマスはジーンに知らせてから、エギーユと合流してくれ」
「リケは?」
「二人連れていく。昼間の強襲で連戦になるかもしれんぞ」
私の言葉でラトーラが立ち上がる。
「だったら、ポーションもお持ちください」
「ありがたい。ガラハウ。午後の診療は任せたぞ」
私の言葉を背に、ラトーラは食堂を出ていった。
「あいあいさー」
ラトーラとは対象的に、げんなりとした顔をするガラハウ。
「なんなら、結城結奏を呼んでもよいぞ」
「その手もあるねぇ……まぁ、なんとかなるでしょ」
◆
学院の寮に寄り、ロアとソルを連れ出し件の店に向かう。
昼間と言えど、飲食店や荷馬車の人足向けの安宿の多い地域でもあるので、それなりに人出はあった。
学院組の私も含めた三人は、既に顔を隠して行動している。
さすがに貴族の子女が、大っぴらに歩いてよい街ではないからな。
「エギーユ。動きは?」
「り…じゃなかった。白狼。今んとこないな」
オオカミの仮面を着けているのを見て、即座に呼び名を変えたあたり、トーマスとフィッツの教育が行き届いているようだ。
「トーマスとフィッツは?」
「裏を見てるよ」
「そうか。よし、陣形の確認だ。ドアノッカーはソル」
「任せてよ」
「ソルのドアノックで、ロアとエギーユが突入する。互いに初めてだ、序盤は互いの動きをよく見ろ」
「任せろって」
エギーユの満面の笑み。
後ろで私がサポートするから、心配はないと思うが、私自身が疎かにならないよう気をつけないと。
「俺は双剣だ。合わせるなら、ワンテンポ遅らせると良い…お前はショートソードだな、分かった」
そつないロア。
流石、集団戦に慣れている。
「後衛は私だ。多少、身体がなくなっても大丈夫だ」
「なくなってる時点で、大丈夫じゃねぇだろ!」
ロアは、私が奇跡と呼ばれる魔法を使えることを、知らないのだったな。
「エギーユ。打ち上げろ」
「うっし」
私の号令で、打ち上げ花火が上げられる。
それと同時に、ドアノッカー役のソルが娼館正面に走り出し、ドアに強烈な一撃を放った。




