壊滅 2
学院からの帰り。
貴族街を歩く。
コアパーとアルツナイの関係が悪化した影響は出ていないようだ。
いや、そもそも市井の影響なんか、伝わってこない。
王都と領地とでは、ここまで違うものなのだなと、実感が湧いてきた。
「フィッツ。どうした?」
背後から近づいてくる気配があったが、フィッツだと確信があったので、顔を向けずに声をかけた。
「やっぱ、バレるかお嬢には……それより、ミアんところに勝手に……。」
フィッツは隣に並ぶと、少し悔しそうに髪を掻きむしる。
「悪かったな。ただ、そうするしかなかったんだよ。それより、ジーンところの少女は?」
「カニアの街で、面倒見てもらえることになってる」
「そうか。手配、ご苦労だった」
「そう言われちゃうとな……。」
「なんだ?もう少しくらいなら、毒づいてもいいんだぞ」
「ミアにはよくしてもらった手前、そうも言えないよ」
「あの魔女は、そんなにいい女なんだな」
「ま、見た目はガキの頃から変わってねぇけど……やっぱ……。」
続く言葉を濁す。
「やっぱ?」
「いやいや。何でもねぇ…あの子のことは任せといてくれ」
顔の前で手を振り、話題を変えてきた。
淡い何かがありそうなことが、丸わかりだよフィッツくん。
「他には」
「アルツナイの動きが無くてね。どうも、気持ち悪い」
「引き続き、頼む」
「それと、エギーユの坊主も、使い物になりそうだぜ」
「分かった」
「それじゃ、また」
そう言って踵を返し、貴族街から出ていく方へと歩き出すフィッツ。
フィッツはすっかり間者のように動くようになった。
屋敷にはほとんど寄り付かず、独自のネグラを確保して、そこを拠点に街のあちこちを嗅ぎ回っているようだ。
私は屋敷に向かい続ける。
さて、コアパーに手を出してくれたら話しも早くなるのだが、ここまで静かだと、こちらから仕掛けるしかなくなるな。
そんな事を考えながらの帰り道。
◆
「ねぇ、リケ。ここなんだけど?」
結城結奏が魔法書のあるページを指さして、こちらに向けた。
定期的にやっている結城結奏を、元の世界に戻す魔法の調査と研究をする勉強会だ。
「どれ……ポータル!転移魔法か!!」
存在することは知っていたが、実際そのことに触れている文献は、今まで見つかっていなかった。
ここに、その謎を解き明かすことが書かれているかもしれない。
「転移魔法!?」
結城結奏も同じ事を感じたのかもしれない。
どこか驚いている様子が覗える。
「しかし、属性も何も書いてはいないな……推論なのか」
本の方を読み進めると、こうすればできるのではないかとしか書かれていない。
具体的な呪文や、属性、発現条件の記載はなく、原理とその推論のみであった。
「一歩、前進だな……そうか、魔女に聞いてみるのも良いかもしれない」
「魔女?」
「伝説上の魔女を名乗る人間がいてね。今度、会わせよう」
「どんな人なの?」
「普段は薬を作っては、それを売ってるようだぞ」
「ラトーラさんみたいね」
「大雑把に言うとな。だが、厳密には植物の知識と成分、その効能で調合しているところは同じだが、片方は魔法の力で品質を上げられる」
「新鮮さとか関係なく、同じ効果のものを作れるってこと?」
「そうだ。どうやるのかまでは知らないがな」
「魔法って、便利よね」
「そうできとるからな」
結城結奏と更に文献を漁ったが、ポータルの魔法に関して書かれているものは、それ以上は見つからなかった。




