壊滅 1
秋も深まって来て、肌寒く感じる日も多くなってきた。
アルツナイの拠点でもあった娼館強襲から二週間。
娼館街は少しギスギスとしているようだ。
娼館街で一番の勢力を誇っているアルツナイと、王都内の人足手配最大手のコアパー。その関係が悪化しているのだ。
「なんか街の雰囲気悪いよな。お前、何かしただろ?」
学院の食堂でのランチタイム中に、ロアがそんな事を言った。
「そうだな。そろそろ準備しておいてくれ」
「なになに?」
ソルも興味津々だ。
「だがな、ソル。また、室内戦になると思うぞ」
「あぁ~」
私の指摘に頭お抱えるソル。
大剣使いのソルは、屋内戦となると使える手が少なくなってしまい、活躍の場が減ってしまう。
「大剣使いと相性のいい武器か……。」
代替案がないものかと、思案する私。
「両手の小型武器なんてなぁ」
頭の後ろで手を組んで、天井を仰ぎ見るロア。
そんな私たちに期待の目を向けるソル。
「考えてはみるものの……。」
「どれも勝手が違いすぎるんだよな」
私の言葉を受け取って、ロアが続きを答えてくれた。
両手で扱う大剣は、そのリーチの長さと一撃の重さ、それに盾のように攻撃を受けられる強靭さを持っている。
そんな武器の代替をと考えてみてみたのたが、どれも大剣の使い勝手とは違いがあり、とても勧められない。
「せめて、予備武器にダガーでも使っててくれればな」
考えるのをやめ、自分のランチセットを突つくロア。
「後は後衛に徹するかだな」
私もハンネの持たせてくれるバゲットから、サンドを取り出して頬張った。
「後衛かぁ……やったことないなぁ」
テーブルに突っ伏すソル。
「属性も火となると、屋内戦向けではないものな」
「リーチを考えなきゃ、バトルアクスなんかもいいんだが……。」
「間合いが違いすぎて、取り返しがつかない事になりかねん」
私とロアの談義を聞いて、頭を抱えるソル。
「あっ!」
「どうしたリケ?」
私のひらめきの声に、ロアは怪訝な顔をして声をかける。
「属性のない魔法。そう、純粋な魔力だけを放出させる魔法があるな」
結城結奏との魔法調査も、芳しくはないものの、副産物的な収穫もあった。
それが、属性に関係なく使える、魔力の放出を具現化して対象に影響を及ぼすものだ。
「ボクにもできる?」
ソルも食らいついてきた。
「結城結奏が練習しているはずだ、少し手解きを受けてみてはどうか?」
「分かった!行ってくるよ」
飛んでいくフリスビー目掛けて、走り出す大型犬。
「目指すものの場所も分からんのに、よく走り出せるもんだよな」
「結城結奏なら、魔法課程の教室にでもいるんじゃないか?」
ロアのボヤきに適当に答えてみる。
「リケ。私がどうかした?」
そこに、ランチセットの載ったトレーを持った結城結奏と、エマがいた。
「結城結奏」
「リケ。いい加減、フルネームはやめたらどうかしら?」
結城結奏を呼ぶ私を、そう嗜めるエマ。
「いいの。エマ。リケって呼べるだけでも、だいぶ前進したわよ」
そういいながら、同じテーブルに着く結城結奏。
エマもその隣に座った。
「なんだか、野良猫とお近づきになるみたいよね」
結城結奏もエマも好きに言ってくれる。
「それで、私に何かあったんじゃないの?」
「属性のない魔法についてな。ソルにも教えてやってほしかったのだよ」
「あれね。私の練習にもなるし、丁度いいわね」
「そんな魔法があるの?」
エマが驚いた声を上げた。
「みたいだぜ」
「魔力の消費が激しいので、ずいぶんと昔に廃れたものだがな」
「それなら納得だわ」
属性魔法のように深く研究するものや、使用効率を追求するものがいなかったために、魔力放出の具現化については、あまり発展することはなかった。
ただ、必要は発明の母と言われるように、魔力を体内に巡らせるような身体強化については、魔法学と言うよりも、戦士たちの間で実戦を通して磨かれることになる。
「私とリケみたいに、聖属性持ちは攻撃手段が少ないのよ」
「結奏はともかく、リケは持ってなくても大丈夫そうだけど?」
エマの挑戦的なもの言い。
「攻撃の手段だけじゃないんだ。シールドの代わりに展開することもできるし、展開速度も早いんだ」
「そのわりには、ケガしてたって聞いたけど?」
「耳が早いことで」
本当にエマの耳の速さには舌を巻く。
「なんだ。探しに行っちゃったよ」
大型犬が帰ってきた。
「話しはしておいたぞ」
「結奏ちゃん。よろしくお願いします!」




